女子野球・川端友紀インタビュー前編「妹が語るヤクルト川端慎吾」昨年、日本一に輝いた東京ヤクルトスワローズ。その立役者のひ…
女子野球・川端友紀インタビュー前編
「妹が語るヤクルト川端慎吾」
昨年、日本一に輝いた東京ヤクルトスワローズ。その立役者のひとりが日本シリーズで決勝タイムリーヒットを放った川端慎吾だ。妹であり、女子野球界のレジェンドである川端友紀は兄・慎悟の活躍をどう見たのか。インタビューした。

日本シリーズ第6戦で決勝打を放つ代打の川端慎吾
ーー友紀さんはもともとヤクルトファンなんですよね。
川端友紀(以下、川端) 兄がヤクルトに入団してから注目して応援するようになりました。その頃は、アメリカへ行く前の青木宣親選手のバッティングにすごく憧れがありましたね。それで、自分が女子プロ入りした時にも、当時の青木選手と同じ背番号「23」にしました。
ーー川端選手の女子プロ入りと同時に、青木選手は背番号「1」に変更し、2012年からはメジャーリーガーとなりました。この間もヤクルト戦は見ていたんですか?
川端 兄も試合に出ていましたから、ときどき神宮球場に観戦にも行っていたし、テレビでヤクルトの応援はしていました。
ーー兄である慎吾選手は2015年に首位打者を獲得するなど、順調な成長曲線を描いていましたが、椎間板ヘルニアを発症してからは手術、リハビリと困難な時期を過ごしました。この間のお兄さんの様子はいかがでしたか?
川端 年末年始の自主トレなど一緒に練習する機会も多かったんですけど、腰の手術をする前後や、入院中や手術後のリハビリの話を聞くと、私の想像以上にケガの辛さは大きいんだなって思いました。チームのために活躍したいのに思うように身体が動かない。それは本当にもどかしく、つらくて悔しいことなんだなって感じていました。
ーー当初は手術を回避して復帰を目指していましたが、最終的には手術を決断しました。この間の慎吾選手はどんな様子でしたか?
川端 本人の意思や球団との話し合いのなかで、「なるべく手術をしないように」と決めていたようですけど、兄もかなり迷っていたと思います。印象に残っているのは、手術後に痛みが引いた時に「これでやっと自分の感覚で練習できるな」とか、「ようやく打席に立てるぞ」ってうれしそうに話していた姿です。それを聞いて、それまでまったく自分の感覚で野球ができていなかったんだなって感じました。
【左手の使い方と打席での姿勢がポイント】
ーー女子プロ野球界で首位打者を獲得した友紀さんから見て、慎吾選手のすごさはどんな点にありますか?
川端 みなさんが言うようにバットコントロールの上手さというのはもちろんなんですけど、私のなかでは選球眼のよさがすごいと思いますね。NPBのすごいピッチャーたちの振らせにくるボールをきちんと見極めて、厳しいボールをカットして甘い球をきちんととらえる。その点は本当にすごいし、私自身も参考にしています。どうしたらあんなバッティングができるのか兄に教えてもらっているけど、とても難しいです(笑)。
ーーキャッチャーが捕球する寸前まで、見逃すのかカットするのかわからないほど、ギリギリまでボールを見極める能力。そして、巧みなバットコントロールを称して、しばしば「天才」と言われます。この点について友紀さんはどう考えていますか?
川端 主に"代打の切り札"として出場した昨年は、まさにバットコントロールや選球眼のよさが、今までよりも優れていた気がしました。でも、それらのことは感覚やセンスだけでできるわけじゃなくて、練習と研究を繰り返したからこそ、今のバッティングになったと思いますね。
ーーしばしば第三者は無責任に「彼は天才だから」という言葉で片づけようとするけれど、そこには並外れた努力がある、ということですか?
川端 兄がどんな意識で、どんな研究をしているのかは私には詳しくわからなかったけど、たとえばテレビ中継を見ていて、打席に入る前にすごく左手を意識しているのは感じていました。昨年、ヤクルトが日本一になったあとに兄に聞いたら、「左手の使い方を研究した」と言っていましたね。
ーー確かに打席に入る時に、左手一本でバットを持って、バットの軌道を確認するような仕草を繰り返すシーンも目立ちました。
川端 そうなんです。以前はそんな仕草は見られなかったような気がするんですけど、本人に聞いたらすごく研究して意識したそうです。それが打席での粘りやミート力につながっているのかなと思います。
ーー他に何かお兄さんの技術的な特徴はありますか?
川端 今言った左手の使い方のほかに、すごく姿勢を意識しているのも感じました。私自身も、「打つぞ、打つぞ」とか、「打ちたい、打ちたい」という意識が強すぎると上体がホームベース寄りに倒れてしまうことがあるんですけど、兄の姿勢を見ていて、その点は注意しようと思いました。
ーー打席に入った時に背中を反らせて、上半身を起こすような仕草も目立ちましたね。
川端 年末に一緒に練習した時にも姿勢の話はしていました。左手の使い方、そして猫背にならないように姿勢を正すこと。いろいろ参考になることは多いです。
【「理想のヒットはポテンヒット」】
ーー昨年の日本シリーズ第6戦では延長12回に慎悟選手が見事な決勝タイムリーヒットを放ち、ヤクルトに日本一をもたらしました。あの場面はどんな心境で見ていたのですか?
川端 応援しているヤクルトが日本一になって、しかも兄が活躍して優勝を決めるとは思っていなかったので、驚きとうれしさが入り混じった気持ちで見ていました。
ーー先ほど話していた左手で押し込むような芸術的なポテンヒットでしたね。
川端 以前、兄が「ポテンヒットが最高のヒットだ」と言っていたことを思い出しました。
ーーそれはどういう理由からですか?
川端 一番いい当たり、会心の一撃というのはほんの少しポイントがズレてしまうと引っかけてゴロアウトになってしまう紙一重のものなんです。でも、詰まってもいいという思いでいると、多少引っかけても逆に会心のヒットになるんです。できるだけ引きつけて「詰まってもいいや」という思いがあれば、ポテンヒットになるし、ファールで逃げることもできる。兄はいつも「一番やりたくないのは引っかけてゴロアウトになること」って言っています。そういう意味では、日本シリーズのあのタイムリーは、兄にとっては理想のヒットだったと思いますね。
ーー一見すると、「詰まったけど、たまたまいいところに落ちた」と見えるけど、慎吾選手としては理想的なヒットだったんですね。まだまだ伺いたいことはたくさんあります。ぜひ、この続きは後編でお願いします。
川端 これまでに聞いた兄の話や、練習風景を見ていると、あれは最高のヒットだったんだと思いますね。ぜひ、次回もよろしくお願いします。
(後編につづく)
【profile】
川端友紀 かわばた・ゆき
1989年、大阪府生まれ。2009年の女子プロ野球リーグ第1回合同トライアウトに合格し、ソフトボールから野球に転向。兄で東京ヤクルトスワローズの川端慎吾選手とともに、日本初の「兄妹プロ野球選手」となった。京都アストドリームスや埼玉アストライヤでプレーし、女子プロ野球界で首位打者3回、通算打率3割7分3厘などの活躍を見せた。その後、エイジェック女子硬式野球部の選手兼任コーチを経て、2022年に女子野球チーム「九州ハニーズ」を立ち上げた。