公開練習後、仲間から寄せ書きを受け取った河辺愛菜(前列中央)【少しずつ湧いてきた実感】 1月11日に北京五輪へ向けた練習を公開した河辺愛菜(17歳、木下アカデミー)。昨年末の全日本フィギュアスケート選手権で3位となり、五輪代表に内定。発表翌…



公開練習後、仲間から寄せ書きを受け取った河辺愛菜(前列中央)

【少しずつ湧いてきた実感】

 1月11日に北京五輪へ向けた練習を公開した河辺愛菜(17歳、木下アカデミー)。昨年末の全日本フィギュアスケート選手権で3位となり、五輪代表に内定。発表翌日の取材で河辺は「ビックリしているというのが一番大きい。五輪に本当に出られるとは思っていなかったし、全日本でも五輪出場より自分のベストを目指したいということだけを考えていたので。発表を聞いた時は、あの大きな舞台で滑れるんだというワクワク感が大きかったです」と話していた。

 それから2週間が過ぎた公開練習。河辺は「これまでは五輪へ行く実感はなかったのですが、学校でみんなが応援してくれたし、メッセージもたくさんもらったので、あらためて実感が湧いてきました」と笑顔で話す。練習後には木下アカデミーのチームメイトから寄せ書きのプレゼントもあり、「みんなが書いているというのも知らなくて......。前の邦和スポーツランドにいた時は、(2014年)ソチ五輪に出る鈴木明子さんに寄せ書きを書く側だったけれど、もらえる側になるとは思っていなかったのですごくうれしかったです」と、感動を口にした。

 今シーズン序盤には、まったく意識していなかった五輪出場。「(11月の)NHK杯でロシア選手はいないなかでしたが2位になれたので、(五輪へ)行きたいという気持ちも出てきました」と話すが、全日本選手権ではあまり考えないようにしていた。

 指導する濱田美栄コーチも「あの舞台で五輪を狙うとなれば、よほどしっかりした選手ではないと足がすくむと思います。愛菜は本当に普通の高校生だから、気楽に出させてあげたほうがいいと思って、自分のやるべきことをやるというのを重点に、(目標)設定も四大陸選手権出場にしました。だから試合が終わったあとも『これで四大陸選手権に行けるね』と話しただけで、五輪についてはひと言も言いませんでした」と話す。

【浅田真央のようなジャンプを】

 思いがけず手にした五輪代表だが、北京でやるべきことは決まっている。河辺はこう語っている。

「五輪で一番覚えているのは、ソチ五輪フリーで、(浅田)真央ちゃんがトリプルアクセルを決めた演技。それを見て、五輪でトリプルアクセルを決めるのはすごいなと思ってトリプルアクセルに挑んだので。自分も北京ではショート(プログラム)とフリーの両方で決めたいと思います」

 そのトリプルアクセルはこの日の公開練習では苦戦していた。全日本選手権では思いきって挑んでSPとフリーでともに成功させたものの、河辺は「(成功は)たまたまで、練習では飛び方がバラバラになってしまって跳べていなかった」とも話していた。「トリプルアクセルに入る時のカーブがまだ決まっていなくて、いい時のカーブと悪い時のカーブが全然違うので修正中です」と説明している。

 濱田コーチは河辺のトリプルアクセルについて「緊張したり、タイミングが取れなかったりすることもあるが、愛菜の場合は前に行く力はしっかり持っています。まだ入り方のコースが確立していないけれど、彼女に合ったものを見つけ出せれば、もっと質のいいジャンプを確率よく跳べるようになる。怖がるとスピードを控えがちになるものですが、彼女の場合はわりと思いきりいけるので度胸がいいと思います」と語った。

 河辺は五輪出場が決まってから過去の五輪の映像を見始めたという。

「何もかかっていない試合なら演技直前に笑顔も出ますが、出場している人たちみんなの顔がけっこう引きつっているので、他の大会よりすごい緊張感が画面から伝わってきて。自分がそれに耐えられるかどうかわからないけれど、なんとか自分の演技ができるようにしたいと思っています」

 濱田コーチも認める度胸のよさを、五輪の大舞台で発揮する可能性は十分ある。

 そんな河辺がジャンプの修正とともに取り組んでいるのが、表現面の向上だ。特にステップ時の肩や手の使い方には公開練習の終盤でもアドバイスをもらいながらじっくり取り組んでいた。

「前までは『手旗信号みたい』と言われていた肩の使い方も、最近は少しだけ柔らかく動かせるようになった」と河辺は笑う。濱田コーチが言う「ジャンプはその時の調子次第で変わってしまうが、五輪ではスピンやステップのレベル4は当たり前なので取りこぼさないようにしなければいけない」との考えをわかっているからこその意識だ。

「五輪で国を代表していることを意識して、今後のスケートや日常生活に生かしてほしいですし、自分がどれだけの人たちに支えられているのかも考えられる人になってもらいたいと思います。ただ試合では彼女の場合、失うものはないのであきらめないで最後までスピード感のある演技を続けられればいいと考えています」

 濱田コーチにこう期待されている河辺本人の目標は、「自分のできる精いっぱいの演技をしてショート、フリーとも自己ベストを出し、できたら215点を獲得したい」というもの。実現できるかどうか、これからの短い期間での準備にかかっている。