「自分たちに勢いがある中でいかに加速していくか」

23日の新潟アルビレックスBB戦。川村卓也はチーム最多の23点を挙げ、横浜ビー・コルセアーズは連敗を「10」で止めた。ただ、そんな試合の後も、川村は険しい表情を全く崩さなかった。彼は試合の反省を率直に述べる。

「ゲームを振り返れば20点リードで折り返したのを同点にされた。前半が終わった時のイメージ通りの勝ち方ではない。非常に反省の多い、次につながりにくいゲームで終わってしまった印象がある」

自身のプレーについてもこう悔いる。「先週から3ポイントの感覚は良いかなと思っていたんですけれど、昨日と今日で合わせて12分の1の確率。それだけ外すなら打つなと言われるくらいのパフォーマンスで、そこは反省している」

とはいっても彼の見せた数字、存在感は間違いなくチームを背負うに足るものだった。川村は前半から9得点3アシスト4リバウンドという数字を残し、チームも46-27と19点差で試合を折り返した。ハーフタイムが明けると、彼はさらに果敢なアタックを見せた。残り9分48秒、残り9分6秒と立て続けにレイアップを沈め、アドバンテージは「23点」まで広がる。

ただし、この時間帯に至っても彼に余裕はなく、むしろ切迫感を持ってプレーしていた。川村は固い表情で振り返る。「今日のゲームを見ても分かるように僕らに20点を守る余裕、力はない。自分たちに勢いがある中でいかに加速していくかということで、チームに刺激を与えたかった」

川村は第3クォーター残り7分25秒にもレイアップを決めて早くも後半6点目。残り6分56秒にはジェイソン・ウォッシュバーンへのパスで、相手のファウルを誘った。

相手のファウルでプレーは止まったが、川村はそのまま足を止めずに惰性で走り続ける。そしてそのままフロアの外まで出て行ってしまった。ただこれも『ふざけていた』とか『緩んでいた』ということではない。

川村はウォームアップや試合中にこのようなお茶目なアクションを時折見せるが、これにも考えがある。記者が「10連敗中だったチームを活気づける、場内の空気を温める狙いもあったのか?」と問うと、こんな答えが返ってきた。

「僕がそういうところも意識しながらプレーしているのを見てもらえたらうれしい。選手が意識してエンターテイメントを演出するというのも、プロとしてやるべきことだと思っている。ああいうので会場の雰囲気が温まったり、見ていて楽しいと思ってもらえたりしたらOKです」

ビーコルのブースターを軽くどよめかせた川村は、拍手を受けながらコートに戻ってきた。

悪い流れに飲まれるも、勝負どころで『鬼気迫る迫力』

第3クォーターの半ばには、20点以上の点差がついていた。川村は個人ファウル3つになっていたこともあり、一旦ベンチに下がる。尺野将太ヘッドコーチは「第4クォーターの勝負どころに、少しでもエネルギーを残せるようにという思いがあった」と交代策の狙いを振り返る。ただ川村やウォッシュバーンが不在の間に流れが変わりすぎた。横浜は62-50と点差を詰められて第4クォーターを迎えることになる。

第4クォーターに入ると、川村もチームの悪い流れに飲まれてしまった。残り9分19秒に放ったシュートはクリント・チャップマンのブロックに弾かれる。8分45秒には畠山俊樹のスティールを受け、このプレーがジェフリー・パーマーのアンスポーツマンライクファウルにつながってしまった。

新潟も当然ながら川村を警戒し、佐藤公威を中心にかなりタイトな対応をしていた。そんな中で彼がオフェンスを背負いすぎているようにも見えた。尺野ヘッドコーチは「今日のゲームの中で僕が感じたのは、川村選手を見てしまう、パスを渡そうとしてしまう選手がいたこと」と述べつつ、このように説明する。

「川村選手は得点やクリエイトの面で上手くいっていた。そこを生かせるようにこちらから指示をした。いきなり川村選手に持たせる、いきなりピック&ロールに行くのでなく、オフボールでスクリーンをかけてから川村選手に行くようにだったり……。結局は(川村が)起点になってくれた。うまくボールをシェアしながら、その中で川村を生かせればいいなと思っていたんですけれど、結構ボールを持ってしまった。何本かターンオーバーは出ているんですけれど、そこはチームとしてもっと生かせる方法を探っていきたい」

川村自身もこう口にする。「僕のところをどう利用して(他の選手が)ノーマークになって行けるか。そういうところはもっと詰めていける。各選手が川村を利用した上で自分がノーマークになることを学んでくれれば、もっともっとチャンスが出てくる」

横浜は川村がボールを独占するのでなく、彼の負担を減らしつつ『ここ』という場面で彼の強みを生かすオフェンスを模索している。今日の段階ではまだそこがスムーズだったとは言い難い。ただし23日の新潟戦では、川村は勝負どころで多くの責任を負い、完璧とはいかなくとも最低限の責任は果たした。特に終盤の勝負どころでは鬼気迫る迫力を見せていた。

「同じ方向を向いた上で行動していくことが大切」

第4クォーター残り3分55秒、川村はまずフリースローを2本とも成功させ、点差を69-62と7点差に拡げる。新潟の3ポイントシュートで追い上げられた残り3分20秒にはフェイドアウェイを決めて、71-65と6点差。残り2分38秒には彼のハードなディフェンスで新潟のアウトオブバウンズを誘う。

新潟にじりじりと詰められる展開だったが、横浜も残り1分36秒には竹田謙がファウルを受けて、フリースロー2本を成功。73-70と辛うじてリードを保つ。尺野ヘッドコーチはこのプレーにおける川村の『隠れアシスト』をこう説明する。

「竹田がドライブしてフリースローを取った場面も、川村に打たせるプレーを細谷(将司)がコールしたんですけど、川村にディフェンスが集中したことで、竹田選手の前が空いてレイアップにつながった。結局は川村が起点になってくれた」

同点にされた残り48秒にも川村がファウルを稼いでフリースローを2本とも成功。75-73とリードを蘇らせた。川村は残り16秒にもトドメのフリースローを決め、最終クォーターで8ポイントを挙げている。彼は試合を通した被ファウル数も「8」を記録し、新潟が終盤に2人のファウルアウトを出す遠因も作った。川村が数字以上の価値を見せた試合だった。

試合翌日の4月24日は川村にとって31歳の誕生日。試合後のヒーローインタビューでは「年を重ねるにつれて疲労が抜けなくて」と苦笑していた彼だが、様々な経験と引き換えに得た人間力、プレーの幅が間違いなくある。

横浜は連敗を10で止めたものの、16勝39敗で15位。このままの順位で残り5試合を終えれば、残留プレーオフに回ることになる。川村に残留争いについて尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「残留プレーオフに出るつもりはいまだにない。その気持ちをみんなも持って、同じ方向を向いた上で行動していくことが大切だと思う。なかなか勝ちを思い出せない中で残留プレーオフに行った場合に、どういう厳しい戦いになるかということをみんなが理解して、今後のゲームに臨まないといけない。まずは一つひとつのゲームで勝つことを目的にやっていくことが次につながって、残留プレーオフの雰囲気にもつながっていくと思う」

横浜は順位を一つ上げれば、プレーオフ圏内から脱出できる。仮に残留プレーオフに回った場合にも、勝利の味は思い出しておいた方がいい。引き締まった表情で口にした、引き締まった言葉だった。

険しい表情のまま会見を終えた川村だったが、すべての質疑応答を終えると、席を立ちながら「勝つっていいな……」とつぶやいた。勝利に飢えていた男が漏らした『魂の声』だった。