新日本プロレスとプロレスリング・ノアが、1月8日に横浜アリーナで開催される全面対抗戦で激突する。ノア「金剛」、新日本「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の両ユニットによる10人タッグマッチ、鈴木みのるや桜庭和志らが出場する6人タッグマ…

 新日本プロレスとプロレスリング・ノアが、1月8日に横浜アリーナで開催される全面対抗戦で激突する。ノア「金剛」、新日本「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の両ユニットによる10人タッグマッチ、鈴木みのるや桜庭和志らが出場する6人タッグマッチなど注目カードが目白押しで、昨年中にチケットは完売となった。



元日の日本武道館大会に出場したノアの丸藤正道。新日本の対抗戦にも気合が入っている

 対抗戦に向け、両団体は2022年の年明けから激しく動いた。

 ノアがプロレス史上初めて元日に開催した「日本武道館大会」のメインイベントで、GHCヘビー級王者・中嶋勝彦が潮崎豪を破り3度目の防衛を達成。すると、中嶋が属するユニット「金剛」のメンバーがリングイン。ユニットのリーダーでGHCナショナル王者の拳王がマイクを持つと、新日本のトップレスラーであるオカダ・カズチカ、内藤哲也、鷹木信悟に向けてこうぶち上げた。

「何年も何十年も日本プロレス界のトップにいるから、テメェらの考えがおかしくなってるんじゃねぇのか。オイ! いつまでも天狗になっているんじゃねぇーぞ。俺たちがこの序列を覆す。俺たちプロレスリング・ノアがやるぞ。2022年1月1日、日本のプロレス界の序列を変えるスタートだ。令和プロレス革命のスタートだ」

 中嶋も試合後のインタビューで「1・8、楽しみにしとけ、新日本プロレス。そして新日本プロレスファン......ぶっ壊してやる!」と宣戦布告。さらに1月5日には、新日本の東京ドーム大会でノアの全選手がリングを占拠し、10人タッグマッチで激突する拳王と鷹木が挑発合戦を繰り広げるなど一気にボルテージが上がった。

 ノアからの挑発が目立つが、現時点の選手層、団体の規模などを考えると新日本の優位が予想される。果たしてノアの逆転はあるのか。2000年の団体旗揚げからの生え抜きメンバーで、現在は団体を運営する「サイバーファイト」の副社長でもある丸藤正道に、対抗戦のポイントを聞いた。

【25歳の若きスターへの期待】

 まずは、対抗戦が決まった時の感想をこう明かした。

「『しばらく交わることはないかな』と思っていたので、正直、驚いてはいます。だけど、俺が誰かとやりたいというより、ウチの選手と新日本の選手が関わってほしいんです」

 過去のノアと新日本との交流は約20年前。2001年10月8日の新日本の東京ドーム大会で、ノアの秋山準が新日本のリングに初登場して永田裕志とタッグを結成し、武藤敬司、馳浩と対戦した。以来、2002年5月2日の東京ドームで三沢光晴と蝶野正洋の一騎打ちが実現するなど、2016年まではさまざまな対決が実現してきたが、それ以降は交流が途絶えていた。

丸藤自身は2010年1月4日の新日本の東京ドームに参戦し、IWGPジュニアのベルトを奪取。2年後には真夏の最強決定戦「G1クライマックス」に参戦するなど、新日本勢と数多くの対決をしてきた。

そんな丸藤は、武道館での拳王と中嶋の発言をどう受け止めているのか。

「『金剛』のメンバーだけじゃなく、選手個々の発言に俺が"上乗せ"する必要はないと思っています。ただ、ひとつだけ言えるのは、彼らが言っていることは間違いじゃない。

俺は今までも新日本のリングに何度も上がっているんで、個人的にはそこまで大きな新鮮味、サプライズ的なものは感じていません。だから、新日本、他団体との試合をあまりやったことない選手が、どういうふうにやるのかが楽しみですね。特に潮崎(豪)、(中嶋)勝彦、清宮(海斗)には、今回の試合を経てプロレス界の最前線にいってほしいです」

 丸藤が名前を出した3人のなかで注目は、25歳の清宮がどんな戦いを見せるか。清宮は武藤敬司とタッグを組み、オカダ・カズチカ、棚橋弘至と対戦する。

 ただ、清宮は元日にナショナル王者の拳王に挑戦し、激闘の末に敗れている。1月4日の後楽園ホール大会で復帰戦を飾ったが、拳王戦の敗北は対抗戦へのマイナスにならないのか。

「そこは関係ないですね。清宮が拳王に負けたからといって、すべてがマイナスになるわけじゃない。彼はキャリアが浅く、まだ25歳。むしろ武道館であれだけの試合をしたことが、新日本との戦いに向けても自信になったはずです」

【「副社長」目線の対抗戦のプラス面と"賭け"】

 その清宮は、丸藤からの期待を十分に理解した上で、対抗戦への意欲を露わにする。

「プロレス業界のナンバーワン、『日本のプロレスといえば新日本』っていう空気は確かにあります。でも、僕はずっと疑問があったんです。『リング上の闘いはノアが一番だ』という自信があったから。今回の戦いで、その部分をひっくり返したいと思います」

 丸藤は、清宮の自信が確信に変わることを期待する。

「俺がIWGP挑戦とかGIとかで新日本に乗り込んだ時も、勝ったり負けたりはありましたけど、『自分たちがやってきたプロレスは間違っていなかった』という確信を得ることができた。彼らも、今大会でそれができると思います」

 丸藤自身は小川良成とのタッグで、かつてノアに所属、あるいは参戦していた金丸義信、ザック・セイバーJr.と対戦する。

「新日本は、多少なりとも小川さんとの技術の差を埋められる選手をぶつけてきた。あのふたりなら、ずっと新日本に所属している選手よりも対応はできるかもしれません。でも、まだまだ小川さんの引き出しはたくさんある。俺自身も心強くてしょうがないですし、小川さんは100ある技術のうちの10を披露すれば勝てると思っているかもしれませんね」

 ここまではノアを牽引してきたレスラーとして対抗戦を語ってきたが、団体を経営する「副社長」としては、今回の戦いをどう考えているのか。

「確実にプラスになるものと、"賭け"になるものがあると思います。

新日本は日本のプロレス界のなかで突っ走っていて、お客さんの数、(動画配信の)視聴者数なども、ノアとはたぶん『0』がひと桁違うでしょう。その部分で、ノアを知らない人たちにウチの選手を知ってもらう、見てもらうきっかけになる。見てもらえさえすれば好きになる選手も出てくるでしょうから、そこは確実にプラスですよね」

 一方で"賭け"になる部分は......対抗戦や他団体との戦いは、常に賛否両論があります。『賛』の意見はそこまで目につかないものですが、どうしても『否』のほうは我々もファンも気にしちゃいますよね。『楽しかった』『やってくれて、ありがとう』という言葉はすごくうれしいけど、話題が広がらずに『よかったな』だけで終わることも多いです。かといって『何でこんなことやったんだ』といった広がり方もよくないから、そこは選手、フロントもしっかり考えて次につなげないといけない」

 事実、過去の対抗戦で新日本と絡んだUWFインターナショナル、WARといった規模が小さかった団体は、ほとんどが消滅している。そういった危険は、今回の横浜アリーナには潜んでいないのだろうか。

「昔は選手のレベルもあったと思う。大きい団体にいい選手が揃っていて、小さい団体はちょっと劣っている選手が多かったように感じます。ただ、そこに関して俺らは一切負けているつもりはない。食われるつもりもない。今の俺たちにとっては、そういう危険な部分が"すごく美味しいエサ"にも見えるんじゃないかな。ノアは(新日本を)美味しいエサとして捉えられるような団体だと自負しています」

 この先も対抗戦を続けていくかどうかについては、「難しい。やりすぎても面白くなくなっちゃうし、1回で終わってしまうのも味気ないかもしれない。やってみないとわからないですね」と悩める胸中を明かした。

 ただ、最後は確信を持ってこう言いきった。

「今までノアを見たことがない人たちもいるでしょう。でも、今回の対抗戦でわかるはず。みなさんが思っているよりも、ノアの選手はタフで強いよ」