四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスに、MLB通算555本塁打の超大物打者、マニー・ラミレスが来て、…
四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスに、MLB通算555本塁打の超大物打者、マニー・ラミレスが来て、1か月半。入団時の騒ぎは沈静化しているが、マニーの加入によって高知はどんな影響を受けたのか。マニーは今どうしているのか。直接入団交渉に携わり、現在も日本での生活をサポートする高知ファイティングドッグスの北古味潤副社長に聞いた。
■高知・北古味副社長インタビュー、555発強打者の素顔「評判と実際のマニーは大違い」
四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスに、MLB通算555本塁打の超大物打者、マニー・ラミレスが来て、1か月半。入団時の騒ぎは沈静化しているが、マニーの加入によって高知はどんな影響を受けたのか。マニーは今どうしているのか。直接入団交渉に携わり、現在も日本での生活をサポートする高知ファイティングドッグスの北古味潤副社長に聞いた。
「マニー・ラミレスが日本に来たがっているけど、どう?」
昨年オフ、北古味副社長にこの話を持ちかけてきたのは、高知の所属選手でもある日系アメリカ人のザック・コルビー内野手(28歳・愛媛-高知)だった。
「どうやらザックが、マニーのインスタグラムに書き込みをしたらしいんです。そうしたらマニーの奥さんが反応をして、話がつながったようです」
とは言え、具体的な契約の段階まで、なかなか話が進まない。そこで、北古味副社長は、球団オーナーでもある兄の北古味鈴太郎氏と共にアメリカに飛び、直接交渉をしたのだ。
「マニーはドミニカ(共和国)生まれだけど、13歳の時にアメリカに渡っているから、英語で大丈夫だと思ったんですが、なかなか話が進まない。そこで高知出身で、アメリカで働くスペイン語が堪能な女性に通訳をお願いしたところ、話がパッと進んで入団することになったんです。この段階で、韓国や台湾からもオファーがあった。でも、マニーは我々を気に入ってくれたんですね」
マニーと言えば、メジャーでは大物打者であると同時に、“お騒がせ者”のイメージがあるが、実際に膝を突き合わせて交渉を始めると、その印象は払拭されたという。
「MLB時代はメディアにちゃんと対応しないとか、チームメイトとも仲が良くないとか言われてしましたが、私たちにはすごくフレンドリーでした。彼は英語でのコミュニケーションに苦労をしていたのではないでしょうか。評判と実際のマニーは大違いでした」
■野球に対する真摯な姿勢に感銘「日本の野球を学びたい―」
北古味氏は、特に野球に対する真摯な態度に感銘を受けたという。
「私はMLB時代にイチローから打撃について教えを受けた。日本に行けば、野球を教えてくれる人がたくさんいると聞く。日本の野球を学びたい――。彼はまじめな顔で、こう言いました」
そんなマニーに、高知ファイティングドッグスは金銭面でもできる限りの誠意を示したそうだ。
1月9日に入団が正式に決定、3月7日にマニーは高知にやってきた。
「気ままな態度は全く見せませんでした。すごくまじめで、特に野球については自分の息子みたいな若い選手の言うことにも耳を傾ける。そしてやってみる。駒田徳広監督が2000本安打を打った大打者だということも知っていて、教えを請いました」
44歳という年齢、2年以上実戦から離れているブランクを考えても、現役復帰は大変かと思われたが、マニーは喜々として練習に取り組んだ。そして4月1日、開幕戦に「1番・DH」で日本デビューを果たし、1安打を放ったのだ。
その翌日、早くも試合を休んだことで話題となったが、これはコミュニケーションミスが絡んでいたという。
「マニーは年だから、ナイターの翌日にあるデーゲームの遠征には参加しなくていいと決めていたんです。でも、マニーはナイターの翌日のデーゲームは全部出なくていいと勘違いしていたようです。体調が悪いとも言っていましたが、説明したら分かってくれました」
開幕以来、マニーは6試合で21打数8安打4打点、打率.381と実力の片りんを見せ始めたが、4月15日に肉離れを起こし、選手登録を外れた。
■高知市内を自転車で散策、気さくなマニーに住民も喜ぶ
それでは、マニーは高知でどんな暮らしをしているのだろうか。
「高知市内のホテルに滞在しています。すごくフランクで、試合がないと、自転車で市内をあちこち回っています。夫人は10日ほどで帰国したので、気軽な身分です。
知人から『街中で自転車に乗っているマニーに声をかけたら、手を挙げて応えてくれた』みたいな話をいくつか聞きました。友人を呼び寄せて、2人で自転車であちこち回ったりもしていたようです。
高知を離れたのは2日だけ、高知ファイティングドッグスは、高知市郊外の越知町に本拠地があるのですが、山に囲まれた環境も気に入ったようですね。
そして食べ物。『高知のクロワッサンは最高だ!』と言っています。『アメリカのクロワッサンは甘すぎるし、ドミニカ共和国のはもっと甘くて体に毒だ』とのことです。
昨日、私の携帯にマニーから電話が入ったのですが、何か『ファイアステーション』とか言っている。よく聞いてみたら、ホテルのスタッフから『消防署の宴会がある』と聞いて、飛び入り参加することにしたようです。私も慌てて飛んでいきましたが、マニーは消防署員と一緒に高知名物のカツオを食べて、大満足のようでした。
肉離れのリハビリで整骨院に行っても、おばあさんに笑いかける。おばあさん、びっくりして立ち上がってましたけどね(笑)」
患部の経過も良好で、すでに打撃練習を始めているが、まだフル出場は厳しそうだ。
マニーとの契約は7月末までだが、四国アイランドリーグplusの前期シーズンは5月末に終了する。あと1か月足らずで、マニーの高知生活は終わりを告げる。
「彼はNPBに行きたいと願っています。そのために頑張っています。もともと我々はNPBに人材を送り込むことを目的にしていますから、その点は他の選手と同じです。でも、若い選手のように、何が何でも、というわけでもないようです。
今の彼には神様にお祈りする時間、趣味の車に凝る時間、打撃練習に打ち込む時間、そして日本文化を学ぶ時間があります。それぞれに一生懸命取り組んでいます。お金には不自由はしていないようですから、そのすべてを楽しんでいるようですね。
もちろん、NPBに行ってほしいですが、そうならなくても有意義な時間になっているのではなないでしょうか。マニーが来たことで、メディアの数が増え、選手たちも張り合いができたようです。
私たちにとっても、真摯に野球に取り組むマニーの姿は、本当に勉強になります。マニーが高知に来た、そのこと自体が本当にかけがえのないことだったと思っています」
マニーの加入は、いろいろな形で高知に刺激を与えているようだ。
広尾晃●文 text by Koh Hiroo