区間エントリーで補欠登録の主力が続出、前回大会から6人全員が当日変更可能に 1月2日、3日に開催される第98回箱根駅伝の区間エントリーが12月29日にあり、各大学の1区から10区までの走者が発表された。 注目は、各チーム6人の補欠登録の選手…

区間エントリーで補欠登録の主力が続出、前回大会から6人全員が当日変更可能に

 1月2日、3日に開催される第98回箱根駅伝の区間エントリーが12月29日にあり、各大学の1区から10区までの走者が発表された。

 注目は、各チーム6人の補欠登録の選手たち。29日の時点で正選手として各区に登録されていなくても、当日朝のメンバー変更で出場する可能性がある。

 実は、当日のメンバー変更は、箱根駅伝ではおなじみだが、全国高校駅伝やニューイヤー駅伝など他の駅伝では、最終オーダー提出後のメンバー変更は“原則として”認められていないことが多い(例外もあるが、医師の診断書などが必要となる)。

 他の大学駅伝は、全日本大学駅伝が2014年から当日変更のルールが緩和され、出雲駅伝も2021年からレース当日2名まで変更可能となっている。

 当日変更は病気や怪我など突発的なアクシデントへの措置であり、このルールのおかげで、不安を抱えた選手に関してギリギリまで状態を見極めることができる。一方、明らかに“当て馬”として登録された選手には非情だが、レース前から始まる各大学の指導者同士の駆け引きは、箱根駅伝のゲーム性であり、醍醐味にもなっている。これまでには当日変更が引き起こすドラマが多々あった。

 前々回までは往路、復路合わせて最大4人までしか交代できなかったのが、前回からは6人をフルで交代可能となった(ただし、1日に変更できるのは最大4人まで)。そのため、いっそう戦略的な意味合いが濃くなったように思う。

 実際に、区間エントリーを終えて補欠メンバーの顔ぶれを見ると、主力を補欠に登録し、手の内が読まれないようにしているチームは多い。それほど、補欠の顔ぶれが豪華なのだ。

 12月29日の区間エントリーを終えて、各校の補欠に登録されている主力選手(抜粋)は以下の通り。

駒澤大…鈴木芽吹、花尾恭輔、安原太陽(以上2年)
創価大…葛西潤(3年)
東洋大…前田義弘(3年)、石田洸介(1年)
青山学院大…飯田貴之(4年)、岸本大紀(3年)、佐藤一世(2年)
東海大…市村朋樹(4年)、梶谷優斗(1年)
早稲田大…中谷雄飛、山口賢助(以上4年)、井川龍人、鈴木創士(以上3年)、菖蒲敦司(2年)
順天堂大…四釜峻佑、野村優作(以上3年)、三浦龍司(2年)
帝京大…寺嶌渓一(4年)
國學院大…木付琳、島崎慎愛、藤木宏太(以上4年)、平林清澄、山本歩夢(以上1年)
東京国際大…野澤巧理(4年)、丹所健(3年)
明治大…鈴木聖人(4年)、加藤大誠、富田峻平(以上3年)、児玉真輝(2年)
中央大…三浦拓朗(4年)
日本体育大…大畑怜士(4年)
山梨学院大…松倉唯斗(4年)
神奈川大…川口慧(4年)
法政大…清家陸(4年)、河田太一平(3年)
中央学院大…吉田光汰(4年)
駿河台大…ジェームズ・ブヌカ(4年)、清野太成、町田康誠(以上3年)
専修大…木村暁仁(2年)
国士舘大…清水拓斗(4年)

上位校ほど主力を補欠登録、他校の出方を探っているか

 東京オリンピック(五輪)3000m障害7位入賞の三浦龍司(順天堂大2年)、全日本大学駅伝で優勝の立役者となった花尾恭輔(駒澤大2年)、早稲田大自慢の10000m27分台トリオの中谷雄飛(4年)、井川龍人(3年)といった今大会の注目選手の名前も補欠にある。

 エース区間の2区や、特殊区間(山上り)の5区は、例年であれば当日変更は少ないのだが、早稲田大や順天堂大、明治大、初出場の駿河台大などは今回2区に当日変更がありそうだ。

 駿河台大は、留学生のジェームズ・ブヌカ(4年)を補欠登録したが、仮に1区起用となれば、序盤からレースをかき回す存在になるかもしれない。

 もちろん、すでに2区などに登録しているエースに何かアクシデントがあった場合のバックアップとして補欠に主力を置いているケースもあるし、万全な状態で本番を迎えられないため、補欠に回った主力もいるだろう。だが、上位校ほど主力を補欠登録し他校の出方を探っているようにも思える。勝負どころになると踏んだ区間に、おそらくは当日変更で主力を起用するチームは多いのではないだろうか。また、往路の結果次第で復路の戦略が変わってくるケースもあるだろう。

 現在補欠登録されている選手から、優勝争いやシード権争いのキーマンとなる選手が出てきそうだ。1月2日の号砲の前から、戦いは始まっている。駅伝ファンにとっても、12月29日から1月2日、3日までの間、あれやこれやと想像を巡らすことも、箱根駅伝の楽しみ方と言える。(和田 悟志 / Satoshi Wada)