ここまで差が開くことは、今季開幕の段階では考えられなかった。 リーガエスパニョーラで、首位を快走しているのはレアル・マ…

 ここまで差が開くことは、今季開幕の段階では考えられなかった。
 リーガエスパニョーラで、首位を快走しているのはレアル・マドリードだ。カルロ・アンチェロッティ監督の就任で安定感を取り戻したレアル・マドリードは、第18節終了時点で勝ち点43を積み上げて順位表のトップに立っている。
 一方、苦しんでいるのがバルセロナである。今季途中にロナルド・クーマン前監督が成績不振で解任され、シャビ・エルナンデス監督が就任した。だが調子は簡単には上向かず、現在8位に位置している。
 なぜ、シーズン折り返しを前にして、勝ち点16ポイントという差ができてしまったのかーー。リーガにおいて、長く「2強」と称されてきたスペインの名門2クラブの光と影を検証する。

■アンチェロッティに向けられていた懐疑の視線

 レアル・マドリードでは、昨季限りでジネディーヌ・ジダン前監督が退任した。

 このフランス人指揮官の存在感は絶大だった。銀河系軍団の中心にいた「ジズー」は、現役時代の輝かしいキャリアをもとに選手たちからの敬意を勝ち取っていた。スター軍団をまとめ上げるにはうってつけの人材で、何よりフロレンティーノ・ペレス会長が彼を気に入っていた。チャンピオンズリーグ3連覇という偉業を成し遂げた監督でもあるから、当然といえば当然だ。

 そのジズーが去り、クラブは後任探しに奔走した。アントニオ・コンテ、マッシミリアーノ・アッレグリ、マウリシオ・ポチェッティーノと複数候補が挙げられていたが、ペレスが選んだのはアンチェロッティだった。

 アンチェロッティとレアル・マドリードは“旧知の仲”である。アンチェロッティは2013年から2015年にかけてレアル・マドリードで指揮を執っていた。デシマ(クラブ史上10回目のチャンピオンズリーグ制覇)を達成した監督で、マドリディスタに愛された人でもあった。

 その英雄の後を受けたアンチェロッティは、エヴァートンでビッグタイトルを獲得したわけではない。満を持しての再登板、とは言い難かった。かつてのモウリーニョやジュレン・ロペテギなど監督招へいでも派手さが目立つペレス会長としては、保守的な人事だったとさえ言える。実際、現地メディアではアンチェロッティの2度目の挑戦に懐疑的な意見もあった。

■選手を輝かせるマネジメント力

 結論から言えば、ペレス会長の戦略人事は成功した。

 アンチェロッティは見事にチームを立て直した。とはいえ、昨季のチャンピオンズリーグでベスト4に進出したレアル・マドリードだ。立て直した、という表現は適切ではないかもしれない。それでもアンチェロッティの就任で安定したチームになってきているのは間違いない。ゆえにリーガで取りこぼしが少なく、首位を走っているのである。

 同じイタリア人であるコンテならば完璧に機能するシステムの構築、トッテナム時代に多くの若手選手を発掘したポチェッティーノならば育成力と、他の候補にもそれぞれの持ち味がある。一方でアンチェロッティが打ち出しているのが、個々をさらに輝かせる戦術眼、指導力、選手マネジメントだ。

 例えば今シーズン、序盤戦でマルコ・アセンシオがインサイドハーフにコンバートされた。本来なら、彼はウィングでプレーする選手だ。しかしながらウィングにはガレス・ベイルやエデン・アザールなど高額な移籍金で加入したスター選手がいる。それでもアセンシオのポテンシャルを信じているアンチェロッティはアセンシオを中盤で起用して新境地を開拓しようとした。以前、アンヘル・ディ・マリアにしたように、である。

■恩恵を受けたヴィニシウス

 そしてアンチェロッティの就任で最も恩恵を受けたのが、ヴィニシウス ・ジュニオールだ。「ヴィニシウス の1対1の強さは素晴らしい。しかしながら彼はゴールを奪うために4タッチも5タッチもする必要はない。1タッチか2タッチでいいのだ」とアンチェロッティが語っていたように、その指導が徐々に結果につながっていった。

 ビニシウスは今季公式戦で24試合12得点を記録している。これまでの彼は、サイドに張って仕掛ける典型的なウィンガーであった。ただ、今は、そこから内側に入ってきてフィニッシュに絡む動きが増えてきている。もとより、トニ・クロースルカ・モドリッチといった優秀なパサーがそろっているチームだ。「1タッチか2タッチで」シュートを打つことができれば、得点数が増加する可能性は十分にあった。
 ジダンのような圧倒的なカリスマ性はないが、アンチェロッティには卓越した戦術眼や指導力、マネジメント力がある。現在のレアル・マドリードが持つタレント性との親和性は高かった。

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