2021年のJ1リーグでは、頭抜けた強さを披露した川崎フロンターレが連覇を果たした。巷では、Jリーグ史上最強ではないか…
2021年のJ1リーグでは、頭抜けた強さを披露した川崎フロンターレが連覇を果たした。巷では、Jリーグ史上最強ではないかとの見方も強い。
これまでも歴史に名を残すチームは存在したが、現在のチームと実際に対戦することはできない。そこで、ここでは残された数値から、その強さを検証してみる。
■1試合平均の勝点を比較
2021年の川崎は、実に92ポイントもの勝点を獲得した。2位の横浜F・マリノスには勝点13もの差をつけて、頂点に立っている。ただし、2021年シーズンはコロナ禍におけるレギュレーションの変更により、史上初めて20チームによりリーグ戦が行われたのだから、過去よりも獲得勝点が増えるのも、他チームとの差が広がるのも、当然ではある。
そこで、ここでは1試合あたりの平均値を出してみる。
まず、対象とするのは自分たち自身だ。川崎の2021シーズンの1試合あたりの勝点は、2.42ポイントとなる。前年の2020年には、落とした試合は3ゲームのみだったが、2021年には試合数が増えたにもかかわらず、2敗しかしなかった。
しかし、ここに落とし穴がある。実は、2020年は34試合で勝点83を獲得、1試合平均では2.44ポイントと、2021年の成績を上回っているのだ。
2021年の川崎は、試合数が増加しても負け試合は増えなかったものの引き分けの数が増えていた。勝率を見ると、2020年は76.5%、2021年は73.7%と、わずかながら2020年の方が高かったのだ。
そう考えると、2020年の川崎が、歴代最強だったのか...。
■伝説的強さの20年前の磐田と比較
他にも比べてみたいチームがある。やはり歴代最強に推す声が強い2001年のジュビロ磐田だ。
当時の磐田は、「世界仕様」のチームだった。夏に控えるFIFAクラブ世界選手権への出場が決まっており、ジネディーヌ・ジダンやルイス・フィーゴ、ラウルらがそろうレアル・マドリードを倒すことを、本気で狙っていたのだ。
そのために練り出されたシステムは、N-BOXと呼ばれた。3-5-2のフォーメーションで、GKヴァン・ズワムの前には鈴木秀人、田中誠、大岩剛が3バックを形成する。特徴的なのが、5人の中盤だ。ボランチの服部年宏、福西崇史とサイドハーフの藤田俊哉、奥大介が四角形を形成し、その中心に据えられた名波浩の頭文字を取って、N-BOXとされたのだ。2トップは中山雅史と高原直泰という破壊力抜群のストライカー。ベンチにも西紀寛やまだプロ入り2年目の若き前田遼一らタレントが控えていた。
2001年は2ステージ制で、ファーストステージは制したものの、チャンピオンシップでライバルの鹿島アントラーズに敗れてはいる。チームの頭脳である名波浩の負傷離脱も響いただろうが、実は世界選手権は運営上の問題で中止されており、そのショックが多少なりとも影響したのかもしれない。
■数字だけで測り切れない強さ
それでも、2001年の磐田が恐ろしく強かったことには変わりない。
当時のJリーグは、2ステージ制であるだけではなく、90分間を戦い終えて同点の場合は延長戦に突入するというレギュレーションだった。2001年の磐田は16チーム総当たりの1stステージの15試合で13勝を挙げているが、そのうち90分間での勝利は9試合だった。残る4勝は延長戦での勝利だが、これはすべて引き分けとして計算してみる(延長戦を終えての引き分けも1試合あった)。2ndステージも同様にカウントすると、2001年の磐田の年間勝点は67。これを年間試合数の30で割ると、1試合あたりの獲得ポイントは2.23となる。
つまり、20年の時を経て両チームを比べると、1試合平均の勝点では川崎が上回っているのだ。
ただし、気になる点もある。2001年の磐田は、90分間を終えて突入した10回の延長戦で、8度も勝利をもぎ取っているのだ。そのタフさ、勝負強さには恐れ入る。
このように、強さは単純に数字だけで測れるものではない。通常より長く、途中で主力数名がヨーロッパへ移籍しながらも耐え抜いた2021年の川崎の強さもまた、称えられるべきである。
2022年の川崎は、2021年の自分たちを越えていくことを目指すだろう。他のチームも、「最強」を目指して前進を続ける。少しのオフを経て、また楽しみなシーズンがやって来る。