1月2、3日に行なわれる箱根駅伝の区間エントリーが12月29日発表された。優勝を争う2強の駒澤大と青学大は、主力選手を複数名補欠に残しながらも、2区にはともにエースを置く正攻法で勝負をしようとしている。2022年も熱い戦いになるであろう箱…
1月2、3日に行なわれる箱根駅伝の区間エントリーが12月29日発表された。優勝を争う2強の駒澤大と青学大は、主力選手を複数名補欠に残しながらも、2区にはともにエースを置く正攻法で勝負をしようとしている。
2022年も熱い戦いになるであろう箱根駅伝
駒澤大が1区に1万mチーム3位の28分02秒52を持つ唐澤拓海(2年)を配置したのは、先手を取る意識が強いからだろう。東京国際大は序盤の首位独走を狙って、1区は予想通りに28分11秒94を持つ山谷昌也(3年)を起用、2区には前回1時間05分49秒の区間新を出したイェゴン・ヴィンセント(3年)が入っている。
駒澤大はその東京国際大よりも先に2区の田澤廉(3年)につなぐことができれば、追い上げてくるであろうヴィンセントのスピードを利用して一緒に走り、2020年に相澤晃(東洋大)が出した日本人最高の1時間5分57秒をターゲットにして走ることもできるだろう。また、青学大などに1分以上の差をつけることも可能になる。
3区にエントリーの佐藤条二(1年)は全日本大学駅伝の1区で区間新区間賞を獲得し、5000mも今季は13分40秒99の自己新を出しているだけに、そのスピードと気持ちの強さで起用されたのだろう。4区は激坂最速王決定戦で4位になっていた大坪幸太(3年)がエントリーされたが、5区にならなかったのは調子が上がらないせいかもしれず、ここは全日本で優勝のゴールテープを切った安定感のある花尾恭輔(2年)か、27分41秒68を持つ準エースの鈴木芽吹(2年)に当日変更しそうだ。
5区は金子伊吹(2年)、6区は篠原倖太朗(1年)と、初挑戦のふたりがエントリーされ、ここはしのぐ区間になりそうなだけに4区までに余裕を作ってつなぎたいところ。ただ5区には前回区間4位で走っている鈴木を再度起用というケースも考えられ、往路優勝を強く意識した布陣になるはずだ。
もし4区が花尾で5区に鈴木を起用しても、復路の勝負区間となる7区と8区には、出雲駅伝で2区の区間3位、全日本は6区で区間2位の安原太陽(2年)や、全日本で2区を走っている青柿響(2年)、前回8区で区間4位の佃康平(4年)もいて戦力は十分。往路優勝はなくても狙いどおりにトップとの差を1分程度に抑えれば、7区以降で勝負を決められる可能性もある。
【青学大は山、創価大は往路から主力】
それに対して青学大は、5区に1万mチーム3位の28分27秒72を持つ若林宏樹(1年)をエントリー。ここに1年生を持ってこられるのは原晋監督の自信の表れかもしれない。6区は前回区間3位の髙橋勇輝(4年)がいるだけに、山の5区と6区で勝負をかけようと考えているのか。
1区は今季1万mで28分42秒17の自己新を出しながらも、出雲と全日本はエントリーされなかった湯原慶吾(4年)をエントリーしているが、当日変更で驚くような起用もあり得る。2区の近藤幸太郎(3年)も全日本の7区で駒澤大の田澤と8秒差の区間2位になった走りを再現できれば、区間エントリーでは控えに回っているものの4区には前回区間4位の佐藤一世(2年)もいる。
復路も7区以降はハーフマラソン1時間2分台を持つ選手をエントリーでは並べたが、補欠には復調してきた岸本大紀(3年)や、前回9区で区間2位の飯田貴之(4年)や、出雲の6区で区間3位だった横田俊吾(3年)に加え、1年生ながら11月の世田谷ハーフマラソンを1時間2分38秒で制した田中悠登もいる贅沢な布陣。飯田は当日変更での5区の可能性もあるが、6区と合わせて優位に立てば、総合優勝の可能性も高くなる。
前回は総合2位という結果を残した創価大は、2区に前回区間6位のフィリップ・ムルワ(3年)をエントリーし、4区は前回区間2位の嶋津雄大(4年)、5区も区間2位の三上雄太(4年)と経験者を並べてきた。当日変更で入ってきそうなのはケガから復帰してきた葛西潤(3年)の1区と、10区のハーフマラソン1時間3分01秒を持つ緒方貴典(3年)あたりだろう。
往路は「つなぎのイメージ」という3区以外は主力を並べてきたが、ムルワは1万mのベストを27分35秒29に伸ばしていて、嶋津も創価大日本人記録の28分14秒23と昨年よりパワーアップしている。
また、三上も自己記録を29分03秒20に上げて走力アップには自信を持っているだけに、前回以上の走りも期待でき、1区の滑り出し次第では往路優勝も狙える状況。駒澤大や青学大のように復路で逆転するまでの戦力はないが、往路がうまく流れれば復路でも粘りを見せられるはずだ。
【東洋大は往路優勝も視野に】
前回は復路の6区と7区で躓(つまず)いた東洋大は今回、往路勝負にかけている。1区に前回区間9位の児玉悠輔(3年)、2区には前回区間4位の松山和希(2年)をエントリーしている。松山の2区起用は、故障で苦しんでいた状態から回復してきた証拠だろう。3区には当日変更で前回区間8位の前田義弘(3年)。4区は同じく、出雲、全日本と区間賞を獲得しているスーパールーキーの石田洸介(1年)を入れるだろう。5区は前々回1時間10分25秒の区間記録を樹立した宮下隼人(4年)がエントリーできていて万全の状態。往路優勝を視野に入れた布陣を組めそうだ。
復路も7区には、全日本の5区で区間4位の梅崎蓮(1年)、9区には出雲の6区で区間7位の柏優吾(3年)をエントリーできているが、清野太雅(3年)や佐藤真優(2年)、村上太一(2年)も残っている状況。往路で優勝争いができれば、目標の総合3位以内も実現的になってくる。
前回は2区と5区の失速で往路11位と苦しみながらも、底力で6位まで上げている早稲田大は、今回1万m27分台が3人いる。そのなかでエントリーされているのは、3区の太田直希(4年)だけだが、2区にはチームトップの27分54秒06を持つ中谷雄飛(4年)が当日変更で入ってきそうな気配。4区エントリーの石塚陽士(1年)は出雲4区区間賞と全日本の5区で区間4位の実績があり、そのままの起用となるはず。
注目は流れを作る1区に誰を起用するかだ。出雲では菖蒲敦司(2年)が区間2位になっているが、前回1区で区間5位を走り、今年4月には27分59秒74を出している好調の井川龍人(3年)が控えに残っている。復路要員も鈴木創士(3年)や、山口賢助も残っているだけに、井川を1区にして27分台を3人並べるのか、それとも復路勝負の起点である7区に起用するかが注目だ。
順天堂大も東京五輪3000m障害7位の三浦龍司(2年)は、前回10位だった1区での雪辱を熱望していたが、エントリーされたのは全日本で1区区間11位だった平駿介(3年)。三浦は前回2区で区間10位のエース・野村優作(3年)とともに控えに回っている。
往路の3区と4区には28分06秒26を持つ伊豫田達弥(3年)とハーフマラソン1時間2分09秒の石井一希(2年)がエントリーされていて動きそうもないだけに、三浦の2区起用もあり得る。ただ、三浦と野村を除いた控え選手で5区の起用が濃厚な四釜峻佑(3年)や、他の3人も28分台と充実している。優勝争いをするには往路の出遅れ回避したいだけに、前回はともに区間10位だった三浦と野村が、雪辱を果たすというパターンもありそうだ。
2強の駒澤大と青学大は戦力も十分で、優勝の可能性が高いものの何が起きるかわからないのが箱根駅伝。今回も各大学の10人がつなぐ襷から新しい物語が生まれるだろう。