コロナ禍においてでも、東京五輪・パラリンピックなどで盛り上がった2021年のスポーツ界。そのなかでも、スポルティーバは…

 コロナ禍においてでも、東京五輪・パラリンピックなどで盛り上がった2021年のスポーツ界。そのなかでも、スポルティーバはさまざまな記事を掲載。今年、反響の大きかった人気記事を再公開します(2021年8月30日配信)。

※記事は配信日時当時の内容になります。

 2021年のMLBレギュラーシーズンも残り約1カ月。ロサンゼルス・エンゼルスでプレーする大谷翔平の常識の枠を超えた活躍は続いている。

 現地時間8月26日、ボルチモアでのオリオールズ戦で今季41号を放ち、本塁打王争いでトップを独走中。投手としては、25日の試合では5イニングで3本塁打、4失点を許したことで「サイ・ヤング賞候補」という声は鎮静化するかもしれないが、オールスター以降の6試合で4勝0敗、防御率2.13とすばらしい投球を続けている。

 投打両方の貢献度を考えればMVP獲得も濃厚。「同じ日本人」という贔屓目を抜きにしても、大谷が歴史に残るシーズンを過ごしていることは間違いない。
 



MVP最有力と目され、今後の契約が注目される大谷

 そんななかで、次の契約が地元メディア間でも話題になり始めている。今年2月にエンゼルスと2年850万ドル(約9億4000万円)の契約を結んだ大谷は、2022年オフに年俸調停権、2023年オフにはFAの権利を得る。その過程でどんな契約をゲットするかが、メジャー全体でも大きな注目を集めそうだ。

「二刀流をこのレベルで続けた場合、2年後には少なくとも4億ドル(約439億円)、あるいは5億ドル(約549億円)くらいの契約を得るだろう。年齢的に契約年数は7~8年くらいで、メジャー史上最高給選手になる。今季の働きは年俸にして6000万ドル(約65億9000万円)くらいの価値はある。投手として2000万ドル、打者としても2500〜3000万ドルで、その両方をこなし、人気面での付加価値もつくから6000万ドルだ(笑)」

 7月中旬、デンバーで行なわれたオールスターゲームの際、『USA TODAY』のベテランライター、ボブ・ナイチンゲール記者はそう述べていた。

 現在27歳の"怪物"は年齢的にもこれから全盛期を迎えるだけに、次の契約はスケールの大きなものになる可能性が高い。金銭には無頓着な印象もある大谷だが、将来的にどこのチームに属することになろうと、マイク・トラウトの12年総額4億2650万ドル(約472億円)を超えるような超巨額契約を結んでも不思議はない。

 ただ、大谷との契約延長はそれほどシンプルな話でもないかもしれない。某ナ・リーグチームのスカウトは、少し気になるこんなことも述べていた。

「エンゼルスは是が非でも大谷を残留させなければいけないが、GMは大変な仕事を抱えたとも言える。大谷が流失するようなことがあればファンから大ブーイングをくらうが、契約延長のタイミングは非常に難しい。最善の時期と条件を見誤った場合、新契約のリスクは極めて大きくなる」

 大谷への投資の複雑さとは具体的にどこにあるのか。『ロサンゼルス・タイムズ』のエンゼルス番記者、ジャック・ハリス氏に尋ねると、「判断は実に興味深い」と何度か繰り返しながら、今後を展望してくれた。
  
「あと2年、二刀流で活躍を続けたら、大谷は史上最高給の選手になるかもしれない。ただ、大谷の価値はMLBの他のスターと比べてより大きく変動する可能性が高いだけに、チーム側も考えどころだろう。カギになるのは、エンゼルスとリーグ全体が、今季に大谷がやっていることが維持可能と考えるか。それとも毎年この成績が続くと期待するのは非現実的だと見るかだ」

 投打両面で今季同様の働きを今後も続けたならば、ナイチンゲール記者の指摘どおり、大谷は5000〜6000万ドルの年俸での長期契約を提示されてしかるべきだろう。人気面も考慮すれば、もっと高額でもいいのかもしれない。

 ただ、投打のどちらかが不振に陥ることはもちろん考えられる。二刀流選手の故障の危険は、ざっくり言って通常選手の2倍かそれ以上なだけに、離脱のリスクも常にある。

 大谷と7~10年程度の大型契約を結び、何らかの理由で契約期間内にどちらかに専念することになった場合、その契約の捉えられ方は変わってくる。打者に専念した際の大谷は毎年本塁打王を争う可能性を感じさせるが、それでも「年俸5000万ドルはもらいすぎ」という声は出てくるに違いない。この部分に、大谷との新契約の難しさが存在する。

「本来であれば、あと2年の契約を残した今オフにも延長契約という話が出てくるべきだろう。まだ契約切れまで時間があり、チーム側から見ても交渉時に有利な材料が残っている時期だ。トラウトが新契約を得たのもFAまで2年を残したオフだった。ただ、繰り返すが、大谷のケースはより難解。私が見ている限り、両サイドとも契約延長を焦っているとは思えない」

 そんなハリス記者の見立てどおりなら、エンゼルスが大谷との契約延長交渉に本腰を入れるのは早くて来年以降か。チーム側がもうしばらく様子を見たいと考えているのだとすれば、十分に理解できる。

 ここまで読んでいただければおわかりのとおり、今回話を聞いた関係者はいずれもエンゼルスへの残留を前提に話していた。エンゼルスは過去にトラウト、アルバート・プホルス、アンソニー・レンドンらと大型契約を結ぶなど、必要とあらば投資を惜しまないことを示してきた。

 プホルスが今季で、ジャスティン・アップトンが来季で契約切れを迎え、ペイロールには多少のフレキシビリティも生まれる。もちろんトラウト、レンドン、大谷の3人だけで年俸1億ドル以上が必要になりそうなのは負担だが、それでもオーナーのアート・モレノが大谷ほどの素材を流失させるとは思えない。大谷自身が移籍を希望するような予想外の事態がない限り、まずは残留が基本線ではないか。

 ただ、だからといって、フロントの仕事が簡単になるわけではない。

「資金に多少の余裕があっても、後々まで負担になる金額を払いたいチームは存在しない。大谷は球界の宝だが、史上稀に見るほど未来の予想が難しい選手でもある。仮定の話だが、来シーズンに多少成績が落ちた場合、そこで少し割安の金額で再契約してしまうのもいいのかもしれない」

 前述のスカウトのそんなコメントは、誰もが口を揃えるとおり、大谷の未来予想図を描くのが容易ではないことを指し示す。

 大谷の市場価値は今後、さらに上がるのか、それとも停滞するのか。契約年数は10年前後の長期になるのか、あるいは二刀流が可能な期間を睨んで4~5年か。1年ごとの年俸はどの程度になるのか。大谷本人はこれから先も金銭にはこだわりを見せないかもしれないが、所属チーム、関係者を巻き込んだマネーゲームが今後、一気に白熱することになっても驚くべきではなさそうだ。