2021年には、日本で新たな試みがスタートした。初の女子プロリーグ「WEリーグ」が開幕したのだ。 模索しながらのスター…

 2021年には、日本で新たな試みがスタートした。初の女子プロリーグ「WEリーグ」が開幕したのだ。
 模索しながらのスタートで、改善すべき点は多いにある。その一端が、皇后杯で見て取れた。年末に届いた驚きのニュースから、サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。

■均衡打開を託された右サイドバック

 どちらもゲームをコントロールすることができず、どちらも決定機を作ることができな……。そんな浦和レッズレディース(WEリーグ3位)と伊賀FCくノ一三重による一進一退の攻防は後半に入っても続いた。

 そんな中で、浦和が打開の道を託したのは右サイドバックとして先発した清家貴子の個人能力だった。

 清家はもともとはFWの選手だったが、浦和を強豪チームに育て上げた森栄次監督が就任した2019年に右サイドバックにコンバートされた。今シーズンは、故障明けで90分フル出場できない試合も多かったが、それでも激しい上下動をするサイドバックとして浦和の中心選手となっている。

 後半開始から、浦和はゲームに絡めなかった菅澤を退け、右サイドバックの水谷有希を投入。清家を1列前の右サイドハーフに置いて、サイドハーフだった塩越柚歩をトップに置き、清家の攻撃力を生かそうとしたのだ。それでも、攻撃力が上がらないと見るや、60分頃には塩越を右サイドハーフに戻して、清家をトップに置いたのだ。

■なでしこリーグが屈したWEリーグの「個の力」

 後方からロングボールを蹴り込んで清家のスピードを生かそうというのだ。最終ラインからの1本のパスで一挙にゴール前に迫る、いわばパワープレーを仕掛けたのだ。

 58分にはGKの池田咲紀子からのフィードを清家が追ってシュートしたが、伊賀のDFも対応してシュートはGKの正面。80分には、やはりGKからのパンとキックを追った清家が前に出ようとしたGKの頭上を狙ったループシュートを放ったが、惜しくも右にはずれた。そして、87分、DFの南が蹴ったロングボールを追った清家がフリーで抜け出して、とうとう最後に清家が狙い通りに決勝ゴールを叩き出した。

 いつものプレーとはまったく違ったパワープレーを選択した浦和が、清家のスピードという武器を存分に使って「個の力」で勝負を決めたのだ。

 こうして、なでしこリーグのトップツーは、いずれもWEリーグ勢に対して大接戦を挑んだものの、最後は相手の「個の力」に屈してしまった。

■「究極の育成クラブ」が挙げた金星

 さて、メニーナの大金星のほかにも、この4回戦では「なでしこリーグ」のチームがWEリーグ勢を破った試合があった。セレッソ大阪堺レディース(なでしこリーグ3位)がノジマステラ神奈川相模原(WEリーグ10位)を破った試合だ。

 WEリーグの発足によってベレーザや浦和レッドダイヤモンズ・レディース、I神戸といった上位陣がWEリーグに参加したことで、「なでしこリーグ」(日本女子サッカーリーグ)は実質的に2部リーグ的な存在となってしまった。しかし、上位チームがそろって抜けてしまったにも関わらず、今シーズンのなでしこリーグは予想以上にレベルの高い試合をしていた。

 C大阪堺は、昨年のなでしこリーグで4位に入ったチームだが、WEリーグには参入しなかった(昨年のなでしこリーグの1位から8位までのチームのうち、WEリーグに移らなかったのはC大阪堺だけだ)。

 WEリーグに加入しなかったこともあって、昨シーズンのC大阪堺の主力はほとんどが他のクラブに移籍してしまった。

 昨シーズンのメンバーのうち、林穂乃香はスウェーデンのAIKストックホルムに、そして宝田沙織はアメリカのワシントン・スピリットに移籍。浜野まいかはI神戸、北村菜々美はベレーザに移ってWEリーグで活躍している。そのうち、林と宝田、北村の3人は東京オリンピックでもメンバー入りを果たした。

 昨年の主力の多くが抜けたため、今シーズンもC大阪堺は平均年齢17歳台という若いメンバーで戦っている。それが、“究極の育成クラブ”を目指すC大阪堺の姿なのである。

■新リーグ誕生で生まれた問題

 皇后杯の準々決勝に進出した8チームのうち、WEリーグが6チームを占めるのだが、それ以外の2チームはそれぞれWEリーグ勢を破ったUー18の日テレ・東京ヴェルディ・メニーナと平均年齢17歳台のC大阪堺ということになったのだ。

 女子サッカーで、若い世代が順調に育っていることを如実に示す結果と言っていいだろう。

 そうした素材を成長させるのが、WEリーグの役割だ。

 強い者同士が対戦して切磋琢磨することこそ、教科の王道のはずなのだが、WEリーグでは上位チームと下位チームとの差が大きい(もちろん、プロリーグ発足に伴って下位チームが勝負にこだわるようになったため、番狂わせが増えてはいるが)。

 とすれば、強豪チームがWEリーグとなでしこリーグに分かれてしまっていることは残念なことだ。

 WEリーグ加盟は、戦力だけでは実現できない。しかし、WEリーグの上位、下位の戦力さが大きすぎるという状況を考えれば、WEリーグ入りしなかったなでしこリーグ上位チームとWEリーグ勢との対戦機会も増やしていくべきではないのか……。

 若い選手たちが育ちつつあることが明らかになった今だからこそ、女子サッカー界の構造を再考すべき時期なのではないだろうか。

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