解説者・大沢ケンジのRIZIN展望 前編 12月24日、クリスマスイブにRIZINの榊原信行CEO から"ザ・マッチ"武尊vs那須川天心の一戦が2022年6月に実現することが発表された。6年もの間、揺れに揺れたカードが遂に決定。格闘技ファン…
解説者・大沢ケンジのRIZIN展望 前編
12月24日、クリスマスイブにRIZINの榊原信行CEO から"ザ・マッチ"武尊vs那須川天心の一戦が2022年6月に実現することが発表された。6年もの間、揺れに揺れたカードが遂に決定。格闘技ファンのボルテージは一気に高まった。
そんななか、大晦日にさいたまスーパーアリーナで開催される「Yogibo presents RIZIN.33」。2021年を締めくくる全16試合で、勝ち名乗りを受けるのは誰なのか? 元総合格闘家で、さまざまな格闘技の大会で解説を務める大沢ケンジ(和術慧舟會HEARTS主宰)に、注目カードについて聞いた。
バンタム級トーナメントでベスト4に残った4人(c)RIZIN FF
***
――まずは、この1年でもっとも名を上げた萩原京平選手と、"怪物くん"の異名を持つ鈴木博昭選手の対戦からお願いします。
「RIZINは『勝負してきたな』と。RIZINとしては、萩原京平選手を育てたいはずじゃないですか。かといって、いわゆる"噛ませ犬"的な選手を連れてきても、今の格闘技ファンは納得しないのもわかるし、大晦日にはそれをやれない。『じゃあ誰と組むのか?』というところで組ませた相手が、怪物くん(以下、鈴木=怪物くん)。俺からしたら、『それ大丈夫か?』って感じですよ」
――かなり厳しい相手?
「萩原選手の相手は弥益(ドミネーター聡志)選手じゃないかな、と予想してたんですよ。萩原選手もやりたがっていたし。弥益が("ブラックパンサー")ベイノア選手とやった時は、テイクダウンがちょっと甘かったですよね。弥益は、タックルの時にスピードが出せていないんです。『あの感じだったら、萩原選手はタックルが切れるだろう』と思っていたんです」
――萩原選手にとっては、弥益選手より、怪物くんのほうが相性が悪い?
「打撃だけでいうと、間違いなく怪物くんとのほうが相性はよくない。怪物くんはSHOOT BOXINGでタイトルも獲っているし、ONEでもムエタイルールでしっかり戦えている(3戦2勝)。萩原選手にとっては厳しいカードだと思います。ただ、立ち技でトップの選手に打撃で勝つようなことがあれば、萩原京平はもう"ひと化け"する。だからRIZINは、『ハイリスク・ハイリターンの相手を組んできたな』と」
【試合展開と勝敗の予想は?】
――萩原選手の打撃についてはいかがですか?
「めっちゃいいですよ。相手の攻撃がしっかり見えていると思いますね。右ストレートがいいのと、蹴りがうまい。右のミドル、ハイ、前蹴りが同じような軌道で、相手からすると見えにくいんでしょうね。そこに気を取られると、モーションの少ない右ストレートがズドンと来る」
――試合展開の予想は?
「萩原選手がテイクダウンにいくんじゃないかと思います」
――打撃勝負にはいかない?
「いかないと思いますよ。昨年の大晦日、平本蓮選手に2ラウンドでTKO勝利した試合では、ファーストコンタクトは打撃だったけど、すぐにテイクダウンにいったじゃないですか。萩原選手は相手の強いところ、弱いところがはっきりしてる場合は、弱いほうにいくと思う。打撃の技術は怪物くんのほうが上だと思うので」
――勝敗はどうでしょうか?
「萩原選手がテイクダウンする、怪物くんが立つ。これを繰り返すうちに、怪物くんが2ラウンドに、打撃でTKOかなと」
――怪物くんの寝技は未知数?
「まだ見えないですね。でも、ボンサイ柔術でクレベル(・コイケ)選手たちと練習していますし、あの体つきからして腰は強いはず。受け止める強さがあると思います」
――萩原選手は柔術の練習にも力を入れていますが、その成果が試合で出せるようになるまでにはどのくらいかかるものなのでしょうか?
「萩原選手は、柔術をちゃんとやりだして1年ちょっとなのかな? 前回、昇侍(しょうじ)選手との試合でのテイクダウンのされ方を見ると、寝技の技術はまだまだなのかなという印象です。だけど、テイクダウンされたあとに立つ技術とかは、ちょっとずつ上がってきているのかなと思いますね」
―― 一気にスターダムを駆け上がりたい萩原選手にとっては、大きな意味を持つ試合になりますね。
「そうですね。ただ、萩原選手は、今までの格闘家と別のストーリーでスター街道をいく可能性もある。仮に負けても "這い上がってくる"みたいな。萩原選手なら勝ち負けを繰り返しながらも上にいけそうですよね」
――勝ち負けに関係なくファンがついてくる選手であると。
「もしかしたらRIZIN側は、そこに期待してる部分もあるかもしれない。キツい試合をやって負けても、いい試合をすれば萩原選手の価値は落ちない気がします。萩原選手は、絶対に強くなりますよ。勝たせながらいくのか、いばらの道を用意するのか。今回はキツいカードを組んだ。この試合は、とにかく楽しみですね」
【朝倉海は瀧澤謙太とどう戦うべきか】
大晦日のRIZINで大会の柱となるのが、「バンタム級トーナメント」。2021年6月、東京、大阪の2大会で総勢16名により1回戦が行なわれ、9月には2回戦。そこを勝ち抜いて準決勝へと駒を進めたのは、朝倉海、井上直樹、扇久保博正、瀧澤謙太の4名。準決勝2試合は、朝倉海vs瀧澤謙太、扇久保博正vs井上直樹となった。
優勝するためには、1日2試合の勝利が必須。当然、準決勝はダメージを少なく、スタミナをいかに残して勝てるかどうかがカギとなる、と大沢は言う。
元総合格闘家で解説者の大沢ケンジ
photo by Shinozaki Takahiro
――まずは「優勝候補」と言われている朝倉海選手と、瀧澤謙太選手の試合から展望をお願いします。
「謙太選手はウチのジムによく来るし、昔は海選手も練習に来てたんで、ふたりはレスリングなどを一緒に練習したこともあるんですよ。展開は2パターンあると予想しています。結論から言うと、海が勝つんじゃないかと。海がアウトボクシングをして簡単に倒しにいかなければ、判定勝ちすると思っています」
謙太選手は今回、マジで気合が入ってます。打たれても引かないでしょう。もともと"死闘型"で"激闘型"の選手。パンクラスの時もフラフラになりながら打ち合うタイプでした。だから海が打ち合いにいったら、謙太は耐えて、ドロドロの試合になる可能性があるでしょうね」
――もうひとつのパターンが、その打ち合いの死闘だということですね。朝倉選手の準々決勝、アラン・ヒロ・ヤマニハ戦のような?
「あれよりもキツくなると思いますよ。そのくらい謙太選手は粘るだろうし、ドロドロになった時に、謙太選手はパンチが強いから"ワンチャン"がある。だから、海はあまり勝負しにいかないほうがいい」
――瀧澤選手は、自らを「ダークホース」と言うだけのことはありますね。
「実は、あの『俺がこのトーナメントのダークホースだ!』ってマイク、僕が提案したんです(笑)。勝った時に普通に『優勝するんで応援してください』みたいなものじゃなくて、男気があるんだから『ダークホースだ!!』と吠えたほうがいいんじゃない?って」
――大沢さんプロデュースだったわけですか(笑)。今回、瀧澤選手のマイクがあるとすれば、そこも注目ですね。試合のポイントをおさらいすると、海選手が倒しにいくのか、勝ちに徹するのかだということですね。
「そうですね。海はパンチがすごくいいし、お客さんのことを考えているので、ヤマニハ戦のように倒すことにこだわる。だから面白いんですが、トーナメントをどう勝ち上がるか。勝負に徹して、ダメージもどれだけ少なくできるかがカギですね」
(後編:バンタム級トーナメント決勝、朝倉未来の試合はどうなる?>>)