解説者・大沢ケンジのRIZIN展望 後編(前編:萩原vs怪物くん、朝倉海の準決勝展望>>) RIZIN.33で注目のバンタム級トーナメント。それを制覇したあとで、2022年は海外に進出することを目標に掲げている朝倉海は「体がどうなっても絶対…

解説者・大沢ケンジのRIZIN展望 後編

(前編:萩原vs怪物くん、朝倉海の準決勝展望>>)

 RIZIN.33で注目のバンタム級トーナメント。それを制覇したあとで、2022年は海外に進出することを目標に掲げている朝倉海は「体がどうなっても絶対優勝したい」と、不退転の決意で臨む。

 インタビュー前編で、大沢は準決勝のひとつ、朝倉が瀧澤謙太に勝利して決勝に進出すると予想したが、立ちはだかるのは扇久保博正か井上直樹か。インタビュー後編は、もうひとつの準決勝の予想と決勝の行方、さらに朝倉未来の試合などを展望してもらった。



対戦カード発表会見で顔を合わせた朝倉未来(右)と斎藤裕 photo by Nikkan Spoets/AFLO

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――もうひとつのバンタム級トーナメント準決勝、扇久保博正 vs 井上直樹。どんな展開が予想されますか?

「扇久保選手のテイクダウンは防ぐことは難しいでしょう。ただ、扇久保選手は組みが強いけど、井上選手は下からの攻めが強いから、抑えている扇久保選手も疲れてくるはず。だから、前半は扇久保選手ペース、後半は井上選手ペースになりそうですね」

――勝敗はどうでしょうか?

「後半、扇久保選手が削られてきて、井上選手の打撃をもらうようになる。判定で井上選手の勝ち、という感じでしょうか」

――いずれにしても、削り合いになる?

「なるでしょうね。もしかしたら、扇久保選手がテイクダウンにきたところで、井上選手がサクッとバックチョークを決めて勝つ可能性もあるかもしれない。でも、扇久保選手の押さえつける力は本当に強いですからね。今、UFCで活躍しているアレッシャンドリ・パントージャっていう、マネル・ケイプ(2019年の大みそかに朝倉海にKO勝ち)にも勝ったこともある選手がいるんですけど、そのパントージャと対戦した時(2016年8月)も扇久保選手が完全に抑え込んでますから」

――朝倉選手と共に優勝候補に挙げられる井上選手は、まだまだ底が知れない強さがありそうです。

「確かに強い。井上選手のレスリング力はまだ見えていないんですが、マネージャーのシュウヒラタさんが言うには、『レスリングもすごく強い』と。タックルの実力もまだ見せていない感はありますが、打撃はめっちゃいいし、寝技もとんでもなく強いですよ」

【トーナメント決勝の行方は?】

――ここまでの大沢さんの予想では、決勝は朝倉海選手と井上直樹選手の対戦になるわけですね。

「『優勝者はどっち?』となったら、準決勝の海選手次第です。アウトボクシングで海選手がダメージ少なく勝っていれば、疲弊している井上選手に勝つ。だけど、謙太選手と殴り合って、体力が削られてダメージも溜まった海選手と、体力だけ削られた井上選手だったら、井上選手が優勝するんじゃないかと思います」

――決勝に上がった時に元気なほうが勝つイメージですか?

「そうですね。次のことを考えて戦っていたら勝てないし、本当にキツい試合になる。負ければ当然地獄。でも、勝っても地獄です。

 次の日は病院にいるとか、そのくらいのダメージが残る可能性もありますね。危険と隣り合わせなんですけど、そこが面白いところでもあります。もちろん、『事故は起きないでくれ』と願いながら、楽しませてもらいます」

 トーナメントの行方と共に大きな注目を集めるリベンジマッチが、斎藤裕 vs 朝倉未来だ。2020年11月に朝倉を破り、RIZIN初代フェザー級王座王者に就いた斎藤。2021年6月の東京ドーム大会では、ノンタイトル戦で難敵・ヴガール・ケラモフを判定で退けた。しかし10月、RIZIN初参戦の牛久絢太郎にTKOで敗れて王座陥落。初防衛戦でベルトを失った。

 一方の朝倉は、6月の東京ドーム大会でクレベル・コイケ選手に三角締めで一本負け。その後、10月の『RIZIN LANDMARK』での萩原京平との試合は寝技で支配し、判定勝利。今回の一戦で勝てばベルト戦線に前進、負ければ大きく後退する。どちらにとっても絶対に負けられない一戦の行方は?

――今後のフェザー級戦線を占う斎藤裕 vs 朝倉未来。約1年ぶりのリマッチになります。

「この試合は朝倉未来選手が勝つと思います。前回の対戦で未来選手が負けたのは、ニータップでテイクダウンされて、印象が悪かったのが大きい。でも、全体的な打撃は未来選手がややリードしていると見ています」

【朝倉未来を優勢と見るワケ】

――あの試合でRIZINの判定基準も注目されましたが、「朝倉選手が勝っていた」という声も挙がっていますね。

「RIZINのジャッジは、ダメージを最優先して判定するんですが、微差はとらないんです。フラッシュダウンとか、明確に腰が落ちたとかじゃないといけない。斎藤選手がフラッシュダウンをしたように見えるシーンがありましたが、あれも取っていないんです。その後もすぐに打ち合って、うまく帳消しにした感じですね」

――ダメージが無いように見せた斎藤選手がうまかった?

「そうですね。すぐに相殺できたから、そこまでダメージの差がないように見えたということでしょう」

――今回、朝倉選手の勝利を予想するワケは?

「斎藤選手が牛久選手に負けた試合、僕は斎藤選手が打撃で倒すと思っていたんです。僕のなかで牛久選手は、そこまで打撃がうまい選手ではないと思っているので。だけど、斎藤選手は打撃ではそこまで差を見せられなかった。やっぱり斎藤選手は、打撃と寝技を混ぜてナンボの選手。トータルで勝負する選手だと思いました。

 今回は前回の試合と違って、未来選手もニータップを研究していると思う。カウンター待ちになって止まっているとニータップもらうんですけど、そのへんは工夫してくるはずです。レスリングでのタックルだったら、未来選手は対応できるので倒れない。だから未来選手が、打撃で差をつけて判定勝ちかなと思いますね」

――前回の負けを修正して、打撃で上回る朝倉選手が勝つ?

「そうですね。前回のように斎藤選手も打ち返すとは思うけど、打撃ではやはり未来選手に分がある。斎藤選手のテイクダウンを防いで、打撃を当てて判定勝ち。逆に斎藤選手は、テイクダウンできるかどうかがカギになりますね」

 RIZINの2021年総決算。バンタム級トーナメントは地獄の旅路の最終章。そして、フェザー級トップ戦線を占う一戦の行方は、リベンジか返り討ちか。聖地・さいたまスーパーアリーナで今年最後に笑うのは誰なのか、注目したい。