ビーチバレー坂口佳穂ラストインタビュー(後編)坂口佳穂(25歳/マイナビ)はビーチバレーに携わってきた7年の間に、技量だけでなく、人間性も磨かれたという。そこで得たもの生かして、彼女はこれからどんな道を歩んでいくのか、話を聞いた――。前編は…

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坂口佳穂ラストインタビュー(後編)

坂口佳穂(25歳/マイナビ)はビーチバレーに携わってきた7年の間に、技量だけでなく、人間性も磨かれたという。そこで得たもの生かして、彼女はこれからどんな道を歩んでいくのか、話を聞いた――。

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――シーズン始めに毎年行なってきたインタビューでは、ビーチバレーのプレー面とともに、自らの精神的な成長についてもよくお話をされていました。その辺りも競技生活のなかで得たもののひとつでしょうか。

「そうですね。人間としても、かなり成長させてもらえたなと思っています。今改めて振り返ってみると、以前の私は自分勝手でわがままでした。当時のことを考えると恥ずかしくなるほど。ビーチバレーに出会っていなかったら......と思うと恐ろしいです(苦笑)。

 相手に対する思いやりなど、ビーチバレーという2人でやるスポーツの競技性から学んだことは多いです。とりわけ、最初のパートナーである(鈴木)悠佳子さんからは、いろいろなことを教えてもらいました。甘えをなくすことや、『自分と向き合うことをしないと勝てないよ』と言われて、どうしたらいいのか悩むことも多かったのですが、その時も悠佳子さんは一緒に考えてくれました。

 そうして、徐々に自分自身を受け入れることなどもできるようになって、自らがやるべきことや目標なども明確になっていきました。そこからは気持ちもラクになって、人の意見も素直に聞けるようになったと思います。家族、特に父親からは『佳穂は変わったね』とよく言われます」

――「新ビーチの妖精」と呼ばれたりして、ビーチバレーの成績ではないところでも注目を浴びてきたことついてはどう感じていましたか。

「特に嫌ではなかったです。見てもらえる機会が増えると、スポンサーさんなどにも注目されて、私たちの競技環境もよくなります。もちろん、だからこそ結果が求められるので。頑張らないといけないと思っていました。

 とはいえ、変な重圧を感じることはなかったですね。スポンサーのみなさんも一緒に頑張っていこうという感じだったので、私はのびのびとプレーできました。むしろ、いろいろなところで取り上げてもらうことには感謝していました」

――ワールドツアーではさまざまな国へ行ったと思いますが、印象に残っている国、美味しかった食事などありますか。

「悪い思い出として印象に残っているのは、パラグアイですね。別にその国が嫌いというわけではなくて、2019年のオフに長期合宿をした時に体調を崩してしまったんです。

 日本よりも気温も湿度も高くてぐったり。自分で作ったハンバーグにあたって、寝込んだりもしました。一緒に食べた(村上)礼華は全然平気だったんですが......。それから一時期、お肉が食べられなくなって、ハンバーグも作れなくなるほどでした(苦笑)。

 ただ、その合宿のお休みの日に行ったイグアスの滝はスゴかったです! ブラジル側とアルゼンチン側の両方から見たのですが、それはもう壮大な絶景で、こんなところが地球にあるんだって感動しました。滝の近くまでボートに乗って行くこともできて、そのすばらしい光景に衝撃を受けました。

 食事では、ローマで食べたピザが世界一美味しかったです! そのピザ屋へ毎日行きたかったぐらい。最高だったのは、チーズときのこのピザ。薄くてカリッとした生地がまた、絶品でした。『やっぱりローマのピザは全然違うなぁ』って思いました。

 ビールはイタリアの『ペローニ』がめちゃくちゃ美味しかった! パラグアイの合宿にコーチが持ってきてくれて、よく飲んでいました。それから、ブラジルのカクテル『カイピリーニャ』。ブラジル人のコーチにつくり方を教えてもらって飲みましたが、すごく美味しかったです」

――さて、今後についてですが、セカンドキャリアでは何をするのか決まっているのでしょうか。

「具体的には何も決まっていません。今は充電期間ですね。いろいろと考えて、多くのことを学びながら、何をするのか決めたいと思っています」

――いつか、現役復帰するようなことはあるのでしょうか。

「ビーチバレーを子どもたちに教えたりするのは興味がありますが、再び自分が競技者としてプレーすることはないと思います。ビーチバレーは本当に楽しいですけど、私は負けるのが嫌いなので、中途半端にはできないですから。

 それでも、体を動かすことが好きなので、その楽しさを伝える仕事などができたらいいな、とは考えています。引退した今も、じっとしているのは嫌いなので、毎朝ランニングとヨガはやっています。たまにピラティスとか、ゴルフにも行っています。充電期間中の目標は、ホノルルマラソンに出場すること。そして、ゴルフのスコアで100を切ることですね(笑)」

――今後、どういった仕事をしていくのか楽しみにしています。

「ビーチバレーから得たものの一番は"思いやりの気持ち"だったと思います。パートナーやコーチと一緒に、チームとして頑張っていくには、それが大事だと感じました。

 また、ビーチバレーを通じて、いろいろな方々と出会いましたが、選手も、スポンサーの方々も、そしてメディアのみなさんも、思いやりの気持ちがある人が多かったと思います。そうした方々からいただいた気持ちを、今度は私がいろんな方々と出会って返していけたらいいなと思っています。そういう仕事をしたいな、と」

――ところで、東京五輪の7人制ラグビー代表でも活躍したラガーマンの松井千士選手(27歳・横浜キヤノンイーグルス)との入籍も発表されました。まずはご結婚おめでとうございます。おふたりの出会いはどのような形だったのでしょうか。

「ありがとうございます。(出会いは)3年ぐらい前に先輩のビーチバレー選手を介して連絡をとるようになって。誰かと話をする時、私は聞く側にまわることが多いのですが、(私よりも)彼のほうがとても聞き上手で。最初から家族と話しているような感覚でした。今まで出会った男性とは違うなと思いました」

――とてもお似合いのおふたりですが、以前、坂口さんがお話されていた好きな男性のタイプに松井選手はぴったりハマっていますね。

「身長が高くて、体を鍛えていて、濃い顔......そのままですね(笑)。彼はしっかりしていてとても真面目。約束も時間もきちんと守るんです。ふたりで約束して、いくら私が待ち合わせ時間より早く行っても、彼は必ず(先に)いるんです。

 聞くと、人を待たせるのが嫌いで、約束の20分前には着いているそうです。それにはびっくりしましたけど、素敵な人だなと思いました」

――東京五輪も控えていましたし、コロナ禍ということもあって、ここ数年はなかなか会えなかったのではないですか。

「ふたりとも海外遠征が多かったので、会う機会は年に1、2回。ほぼ遠距離恋愛でした。それでも、アスリート同士だったので、いろいろなことを話すことができましたし、お互いに理解し合える部分が多かったです。

 彼が出場した東京五輪が終わってからプロポーズされて結婚を決めたのですが、私の引退とは関係ありません。私はもともと結婚してもビーチバレーは続けるつもりでいたので」

――どんな家庭を築いていきたいですか。

「私もポジティブなのですが、彼はもっとポジティブで、いつも私を笑わせてくれます。だから、明るく楽しい家庭になればいいなと思っています。

 私は料理が好きですから、(アスリートの彼を)そういった面でもサポートしていければいいな、と。ただ、おつき合いしている時からそうでしたけど、彼はとても忙しい身。晩酌はひとりでしていることが多いです(笑)」

(おわり)



坂口佳穂(さかぐち・かほ)
1996年3月25日生まれ。宮崎県出身。武蔵野大卒。身長173cm。血液型A