第74回を数える全国高等学校バスケットボール選手権大会が12月23日、東京体育館等で開幕した。今年も全国を代表する男女…

 第74回を数える全国高等学校バスケットボール選手権大会が12月23日、東京体育館等で開幕した。今年も全国を代表する男女それぞれ60校の精鋭たちが「ウィンターカップ」の愛称で知られる日本一決定トーナメントに集結。そのなかにはNBAへの未知を切り開いた八村塁や渡邊雄太と同じように卒業後の渡米を見すえる選手たちも----。今回は注目すべき選手にスポットライトを当ててみた。

 近年、日本バスケットボール界の盛り上がりは顕著だ。そして現在、トップレベルで活躍するスター選手たちも「ウィンターカップ」という大舞台を経験し、羽ばたいていった。



今大会ナンバー1注目株の山﨑一渉

 その最も顕著な例は、現在NBAで活躍する八村塁(ワシントン・ウィザーズ)や渡邊雄太(トロント・ラプターズ)と言えるだろう。八村は2013年大会から明成高校(現・仙台大付属明成高/宮城)をウィンターカップ3連覇に導いており、渡邊は尽誠学園(香川)で2011年大会から2年連続で準優勝を果たしている。

 ウィンターリーグは戦後1948年から続く(1971年から2016年までは全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会の名称で開催)歴史のある大会である。ただ、従前とは異なる近年の新たな流れとして、この大会での活躍をステッピングストーンにして卒業後に海外の大学等へ進学する選手が出てきていることが挙げられるだろう。

 例年、ウィンターカップが終わるまで卒業後の進路が判明することは稀である。だが、今大会にもアメリカの大学等へ進学する可能性のある注目すべき選手が数人いる。

 そのなかで今大会、最も注目度の高いのが山﨑一渉(やまざき・いぶ/仙台大付属明成高)だろう。八村に憧れて明成に進学した3年生は、今大会ナンバー1の実力と評され"八村二世"と呼ばれる199cmの選手。登録上ポジションはスモールフォワードではあるものの、実際はインサイド、アウトサイドの技量を持つ、コートを広く使えるオールラウンダーだ。




八村塁を想起させるウィリアムス ショーン莉音

 

【海外にルーツを持つ選手たち】

 昨年のウィンターカップ決勝は、歴史に刻まれると言っても過言ではない名勝負となったが、その主役のひとりは当時2年生だった山﨑だった。明成は対戦相手の東山高校に最大17点差をつけられたが挽回に成功。試合残り5秒で山﨑が勝ち越しのジャンプシュートを沈め、劇的な形で通算6度目の王座に戴冠している。

 この東山との決勝戦で25得点、10リバウンドを挙げて大会のベストファイブにも選出された山﨑は、高校最終学年となった今年、3Pシュートやボールハンドリングなどさらにプレーの質を高めてきたように見える。

 7月には日本男子代表としてラトビアでのU19ワールドカップにも出場。日本は未勝利(0勝7敗)最下位に終わったが、山﨑はチームトップの14.6得点、3P成功率は43.9%をマークし健闘した。3年生となり優勝候補の絶対的エースとなった山﨑。八村が在籍した以来となる明成連覇達成のカギを握るのは、間違いなくこの男だ。

 明成にとって大会初戦となった25日の北陸高校(福井)との初戦。山﨑は3Pを5本決めるなどで21得点、10リバウンド、5アシスト、3スティールと、攻守で掛け値どおりの活躍を見せて98−48の快勝に寄与した。

 また、山﨑は技術だけではなく、内面でも成長を見せている。北陸戦後に「自分から考えてプレーしていた」とも山?は語ったとおり、明成の佐藤久夫コーチから課題だと指摘されていた積極性も改善されてきた。

 八村以来、明成には山﨑のような海外にルーツを持つ選手がひっきりなしに入学してきている。山﨑以外にも海外の大学等へ進む可能性のある選手はいる。

 1年生のウィリアムス ショーン莉音(まりおん)もそのひとり。アメリカの大学進学とその先のNBA入りという、大きな目標を掲げている身長198cmの選手だ。

 昨年まで所属したBリーグ・アースフレンズ東京ZのU15チームでは、将来を見すえてよりオールラウンドな選手になるための指導を受けてきた。今回のウィンターカップではセンター登録となってはいるものの、高校でも世界を見すえたスタイルで成長を遂げて海外へと青写真を描いているはずだ。

【八村塁を想起させるスタイル】

 筆者は今年3月に行なわれたBリーグU15チャンピオンシップ(アースフレンズは3位となった)でウィリアムスに話を聞いている。まだ粗さはありながらも、豊かな才能を感じさせるプレーぶりもさることながら、頭のよさを感じさせる言葉の確かさにも頼もしさを感じさせられた。

 3Pラインの外でプレーすることも多かったアースフレンズ時代とは勝手が違い、明成では主にインサイドを任されているが、その役割の変化にも対応している。山﨑とともに25日の初戦で先発起用されたウィリアムスは、佐藤コーチをして「大胆」と言わしめるパフォーマンスで、15得点、22リバウンド、3ブロックと大器ぶりを見せつけた。

 出場時間も38分強とフル出場に近い時間、リバウンドで身体を張り、コートを駆け巡ったウィリアムス。「全国大会でプレーすることでアドレナリンが出たのかわからないですが、一生懸命にやることでバスケットボールもどんどん楽しくなっていった」と、若者らしい活力あふれる言葉を口にした。

 ちなみに、ウィリアムスは北海道出身だが東京足立区育ち。中学時代にあった足立区でのバスケットボールクリニックで明成の佐藤コーチから「NBAに行きたいなら明成に来い」と声をかけられたのがひとつのきっかけだったようだ。

 明成には、山﨑やもうひとりのエース格である3年のPG(ポイントガード)菅野ブルースがいるが、彼らと比べてもプレースタイルや体格は八村を想起させるところの多いウィリアムスの成長も楽しみだ。

 一方、福岡大学付属大濠高校(福岡)の1年、川島悠翔(かわしま・ゆうと)もウィリアムスと同様、早くからアメリカの大学進学を公言している有望選手だ。下級生でまだ技術的には当然、発展途上ではあるものの、身長はすでに200cmで先発メンバーの一員となっている。

 24日の1回戦、対開志国際高校(新潟)戦でもスタメン出場した川島は、20分強の出場でチーム2位の15得点を挙げ、88−64の勝利に貢献した。4本中1本成功の3Pはまだ成長の余地がかなりあるように感じられたが、一方でユーロステップからのレイアップを決めるなど、リングへアタックする力はすでにある程度通用しているように思えた。




【海外行きを見越して英語習得】

 まだ1年生だが、このウィンターカップも将来の海外すきを見すえて経験するだけにとどまらず、積極的なプレーにこだわっていきたいと、開志国際戦後に話した。

「日本の高さで得点できないとあっち(アメリカ)へ行っても難しいと思うので、どんどん攻めて、自分の(シュート)セレクションミスとかを反省しつつ、海外に向けて得点能力のある選手になれるように、というのも目標にしています」

 川島のポテンシャルの高さは、7月のU19ワールドカップには高校1年生としては唯一、メンバー選出されたことが物語っている。話しぶりからしても頭のよさを感じさせ、海外行きを見越してすでに熱心に英語習得に努めていると聞く。

 日本人選手がアメリカの大学へ行く場合、バスケットボールだけでなく、英語や学業面でのハードルも超えなければならない。だが、川島の場合は高校に入学したばかりの今の段階からそこも怠っておらず、ほかの"海外希望組"と毛色を異にすると言えるかもしれない。

 冒頭で記したように、現段階で選手たちの進路がはっきり発表されし、海外の大学へ進学するのではないかと言われていた選手が日本の学校へ行くという情報も耳に入ってくる。

 日本バスケットボール協会・技術委員会の東野智弥委員長は、今大会に出るような現在の「U15、16、17の世代」(東野氏)には才能が多く存在し、個々に事情や収束しない新型コロナウイルスの状況があるのは理解できるとしたうえで、「どんどんチャレンジしてもらいたい」と才気ある若者たちの背中を押すとともに発破をかける。

「今はコロナだから(海外に)行きたくても行けないというのはありますが、やっぱり渡邊とか八村、富永(啓生/ネブラスカ大3年)あたりがアメリカに行っているのは『何かがある』から行っているわけで。彼らに見えるのは向上心。競争力の高いところでやることでさらにレベルアップするのは間違いないというのが、彼らのなかにもあった。だから高校の段階でキラリと輝く選手はいるじゃないですか。ここ(国内のレベル)で簡単にやれちゃうという選手だったら、僕はチャレンジすべきだと思います」