ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 いよいよGI有馬記念(12月26日/中山・芝2500m)ですね。駅や…
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
いよいよGI有馬記念(12月26日/中山・芝2500m)ですね。駅や電車内など至るところに告知ポスターが貼られ、テレビCMも見ない日がないくらい流されています。
そうしたこともあって、ふだん馬券を買わない人も参加する、一年で最も注目度の高いレースです。それゆえ、僕も何とか「有馬記念だけは買う」という読者の方々のお役に立てればな、と思っています。
さて、有馬記念の舞台となるのは、中山・芝2500m。このコースは「トリッキー」と言われるように、なかなか特徴的です。僕も有馬記念には2度ほど乗ったことがありますが、乗り難しいコースという印象が強いです。
具体的には、コーナーの途中のような場所からスタートするので、ポジション取りが難しい点が挙げられます。特に外枠は(前に)壁を作りにくいので、先行馬なら絶対に内枠がほしいところでしょう。
次に厄介なのは、内回りコースに入る2周目の、3コーナーから直線入り口まで。騎手にとっては、最大の攻略ポイントとなります。というのも、バテてしまって下がってくる馬や、逆に外から早めにマクってくる馬などがいて、非常にゴチャつくからです。ここでさばき損ねてしまうと、直線で脚を余してしまうことになります。
また、このコースは2500mという距離のわりに「マイラーが好走する」と言われています。これは、ペースの問題が大きいと思われます。
コーナーが6回もあって、そのつどスピードが落ちて息が入りやすく、道中は距離を意識して淡々と流れることが多いので、最後の直線勝負という展開になることがあるからです。そうなると、スタミナに不安がある馬でもごまかしが効くのかもしれません。
しかしながら、今年の有馬記念はマイラーには厳しいでしょう。スタミナが必要な持久力勝負になりそうな予感がするからです。なにしろ、気風がいいハイペースの逃げで、GIII福島記念(11月14日/福島・芝2000m)を制して臨むパンサラッサ(牡4歳)がいますからね。
さらに、GI菊花賞(10月24日/阪神・芝3000m)の長丁場をまんまと逃げきったタイトルホルダー(牡3歳)もいます。この2頭は後続をある程度離して逃げたいクチ。少なくとも団子状態のスローペースで、淡々と回ってくるような展開は考えられません。
そうして、最後の3コーナーを迎えて逃げ馬と後続との差があると、後続はその時点からロングスパートを仕掛けなければいけません。人気馬のゴーサインとともに、各馬が一斉に動き出すことになるでしょう。
ということは、3コーナーからゴールまでの3ハロン近い距離を持ち堪えることができる、長くいい脚が求められます。しかも、コーナーリングをしながら上がっていって、最後に急坂が待ち受けていることを考えると、相当な持久力が必要です。となれば、マイラーには酷な展開で、今年は"タフな有馬"になる公算が高いです。
人気を二分するであろうエフフォーリア(牡3歳)とクロノジェネシス(牝5歳)は、後半3ハロンでびっしり脚を使いきる競馬で何度も結果を出しています。まともなら、ともに上位争いに加わってくるはずです。大きく崩れるとしたら、別の理由(体調面など)しか考えられません。

「2強」の一角崩しが見込まれるステラヴェローチェ
下馬評どおり、2強の一騎打ちとなる確率が高いですが、2強に割って入る伏兵候補を挙げるとしたら、僕はステラヴェローチェ(牡3歳)をプッシュしたいと思います。
ステラヴェローチェは、クラシック三冠レースで3着、3着、4着と好走しました。そしてこの馬の武器は、勝負どころとなる後半の末脚の持久力。いずれも"漁夫の利"を狙う形でしたが、三冠すべてで掲示板(5着以内)に載った安定感は高く評価すべきでしょう。
前走のGI菊花賞(10月24日/阪神・芝3000m)がそうだったように、自分で展開を作れる馬ではないので、人気を背負うと買いづらいタイプですが、人気が落ちる今回は一発を期待するには絶好の存在となります。
対エフフォーリアとなると3戦3敗と分が悪いものの、距離が延びたGI日本ダービー(5月30日/東京・芝2400m)では、1馬身4分の1差まで詰めました。さらなる距離延長を味方にして、より肉薄するシーンがあってもおかしくありません。
個人的には、クラシックでもコンビを組んできた吉田隼人騎手騎乗によるリベンジを期待していたのですが、今回は乗り替わり。勝負の世界である以上、仕方がないことです。
ともあれ、新たにコンビを組むのは、GI阪神ジュベナイルフィリーズのサークルオブライフ、GIIIターコイズSのミスニューヨークと、2週連続重賞Vを遂げたミルコ・デムーロ騎手。ともに後方からの差しきり勝ちを決めているので、ステラヴェローチェとも手が合いそうですし、現在の勢いは大きな魅力です。
今年の有馬記念は、持久力勝負で急浮上が見込めるステラヴェローチェの"一角崩し"の可能性ありと見て、同馬を今回の「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。