宮司愛海連載:『Manami Memo』特別編・後編フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。前回に続き、今回もフィギュアスケータ…



宮司愛海連載:『Manami Memo』特別編・後編

フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。前回に続き、今回もフィギュアスケーターの村上佳菜子さんとともにアイスダンスの魅力について語り合います。

前編(アイスダンス「髙橋大輔選手の挑戦はすごいことなんです」)はこちら>>>

【北京五輪の展望】

宮司 今年はなんといってもオリンピックシーズン。世界を含めて、アイスダンスの状況や展望について、村上さんはどのように考えていますか?

村上 アイスダンスはアメリカやヨーロッパがすごく強いなというイメージです。この間、NHK杯で村元哉中・髙橋大輔組や小松原(美里、尊)組が滑った時に、素敵だなと思いましたが、表彰台までは届かなかった。それを見て、世界のレベルの高さを感じたので、それだけアイスダンス界も世界的にレベルが上がっているんだなと思いました。そこにどれだけ日本の選手たちが食い込んでいくか、これからの見どころですね。

宮司 世界のトップアイスダンサーで言うと、ガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン組とか。

村上 すごいですよね。オシャレです、一つひとつのスケーティングが。

宮司 世界のアイスダンスのみならず、今季は、北京五輪の代表1枠を目指して日本のアイスダンスチームが、これまでにはない選考レースを繰り広げて注目が集まっています。いよいよ今月22日からの全日本選手権で代表が決まるわけです。枠はひとつしかありません。

村上 そうなんですよね。村元・髙橋組も本当に北京に向かって計画的に(課題を)一つひとつクリアにして一歩一歩階段を上っているところがあって世界的にも注目されているし、ぜひ行ってほしいなと思います。一方で小松原夫妻ペアも五輪出場のために身を削って毎日毎日、一歩一歩踏みしめて歩んできた道ではあるので。みんなに言えるのは、やってきたことを信じて、自信を持っていつもみたいに滑ってほしいなと思います。だから、どの組に決まってもうれしいし、苦しいです。

宮司 それぞれがそれぞれの持つ力を発揮して。すべての選手がそうできるといいですね。

村上 やりきったと思ってほしいですよね。シングルもそうですけど。みんなこの4年に一度のオリンピックに懸けてきているところがあるので。

宮司 全員を応援したいですよね。

村上 本当に。枠が少ないんですよね。出ない国からわけてもらえないかな。「すみません、ちょっともらっていいですか?」って言って(笑)。

【アイスダンスはシングルの勉強にもなる】

宮司 アイスダンス、見ていて楽しいですよね。

村上 楽しいです。メリル・デイビス、チャーリー・ホワイト組も大好きだったし。テッサ・バーチュー、スコット・モイア組も好きだったし。毎回、世界選手権では必ずアイスダンスを見に行っていました。

宮司 シングルの選手でアイスダンスが好きという選手も多いのですか?

村上 私が現役の時はみんな結構アイスダンスが好きで見ていたと思います。(浅田)真央ちゃんともよく一緒に見に行っていました。

宮司 今の選手はどうなんでしょう。

村上 好きだけれど、そこまでやりたいという子たちは多くないと思います。今、シングルがジャンプの時代だからその余裕がないのかも。アイスダンスは振付の(樋口)美穂子先生も好きだったんですよ。だから、アイスダンスを(勉強のために)見なさいとよく言われていました。

宮司 それはやっぱりスケーティング、表現力を磨くために?

村上 そうですね。ジュニアの時から見なさいと言われていて。オフシーズンにスケーティングを学ぶとなったら、アイスダンスをやっていた先生のところへ行くことが多かったです。アイスダンスも「ちょっと組んでごらん」みたいな感じで、滑ることもありました。「え~、どうやってやるの? 楽しい~」みたいな。まだ若かったので、それぐらいのテンションでしたけど(笑)。

【シングルとの滑り方の違い】

宮司 シングルで滑る時との違いはどれくらいあるのでしょうか?

村上 全く違います。たとえば一緒にせーので歩きましょうって言った時に、歩幅も違えば、踏み込む足も違うかもしれないじゃないですか。

宮司 確かに。そうですね。

村上 そこから合わせていくとなるとさらに難しいですよね。ボールペンで字を書くのは自信を持って書けるけれど、筆となったらドキドキするじゃないですか。ちょっとしたブレも出ちゃうので。そんな感覚がありますね。

宮司 なんだかわかるような気がします。

村上 ボールペンだとサーッと書けちゃって、ちょっとした間違いもごまかせちゃう。それが筆、つまりアイスダンスだとできない感じですね。

宮司 なるほど。そういうことなんですね。面白い! 聞けば聞くほど髙橋選手がどれぐらいすごいことをやっているかもわかってきますね。

村上 それだけではないです! 男性だとリフトもありますから。あれは超~大変だったと思いますよ。髙橋選手も最初の頃は脚が震えていましたし。でも今ではラクにできるようになっていますよね。(村元)哉中ちゃんも(体が)どんどん細くなって、無駄なものが本当になくなっているじゃないですか。お互いの努力がないと、今のブレのないリフトにはなっていかないと思います。ふたりの努力ですよね。あれは本当にすごいと思います。

宮司 お互いが近づいていく感じですよね。

村上 哉中ちゃんのほうがやっぱり経験が長い分、最初の頃はサポートしている感じがあったけれど、今は哉中ちゃんも安心して、髙橋選手に体を預けられている感じ。それがどれだけすごいことかというのは、なかなか言葉では表現できないくらいだと思います。

宮司 シングルの髙橋選手を知っている人からすると、できて当たり前なのかなと思ってしまいそうですが、簡単なことじゃないんですね。


【村元・髙橋組と小松原組の違い】

宮司 村元・髙橋組と小松原組の演技の違いはどこにあるのでしょうか?

村上 え~、難しいですね。たとえば色でわかりやすく言うと、村元・髙橋組は(カメラマンで映画監督の)蜷川実花さんの撮る写真みたいな感じ。

宮司 おお~。色彩が強い。

村上 バーンとして派手な感じ。すごく私のイメージで言ってますよ。一方、小松原組は、とても素敵な風景画みたいな感じ。自然のイメージです。

宮司 雄大な。

村上 そうです、そうです! 滝だったり、木の葉越しに見える富士山など、そういうようなイメージです。

宮司 正反対かもしれないですね。

村上 リフトも含めて私のなかで2組の滑りはそういうイメージです。

宮司 わかりやすかったです。

村上 イメージが伝わったらうれしいです(笑)。いつも解説で「佳菜子節よろしくお願いします」って言われます。

宮司 まさに佳菜子節。たとえが絶妙でした。

村上 独特すぎてすみません(笑)。でも本当にそれぞれの魅力があって、素敵です。またそこにジャッジの好みがあるかもしれないですけどね。




【アイスダンスをする選手の適性】

宮司 アイスダンス選手に適性みたいなものはあるのですか?

村上 何となくの感覚ですけれど、そういうのはあると思います。この子は伸びそうだなとか、この子はペアに行ったらいいのに、とか。この感覚はどうお伝えすればよいか、難しいですね。

宮司 男女でも全然違いそうですしね。

村上 スケートをすごく見てきている人たちは何となくわかる感覚があると思います。たとえば、ちょっとした滑る時のつま先の向きや、ターンの時の足の運び方など。あとは、体の使い方。滑りと体の使い方がどれだけリンクしているかとか。レイバックをする時もいきなりガーンと反る子よりは、バレエのように引き上げながら反っていくのが自然にできる子は、アイスダンスに向いていますかね。そういうちょっとした所作のところで適性があるのかな。「この子すごく美しいよね」って思う子は、素質があるかもしれないです。もちろん絶対とは言えないですけれど。

【感覚の合う相手を探すのは難しい】

宮司 カップルの相性、性格的なものというのはどうなんでしょうか?

村上 アイスダンスではないですが、今、ペアの三浦璃来・木原龍一組って、相性がとってもいいと思うんですよ。私が選手時代、ふたりが別の方と組んで、苦労しているところを間近で見ていたんです。でも、ふたりがカップルになって試合を見た時に、ペアってこんなにも相性がいいと滑りが変わるんだっていうくらい素敵でした。

宮司 それぞれで見ていたからこそわかるわけですね。

村上 はい。だから本当に組んでみないとわからないのだと思います。

宮司 大変な世界ですね。だって「つき合いましょう」、で、うまくいかなかったら「さようなら」って、すぐできるわけではないですよね。

村上 本当にカップル種目の相性って大切で難しいと思います。アイスダンスにも言えることですが、たとえば「この姿勢が苦手」って女性が思っているところを男性側がパッと察知して、「ここ苦手なんだ。こう支えてあげよう」とできるような、感覚の拾い方なども重要です。あとは、パッと手を出した時にパッと合うみたいな、そのあたりの感覚も一緒だとベストなのかなと思います。だから、すごく難しいですね。

宮司 結婚相手を見つけるより難しそうな気も......。

村上 難しいと思います。やりたいって言っているから「じゃあやろう。できるね」だけじゃうまくいかない。一回トライアルでやってみて、できそうだなっていうのがないと難しいと思います。

宮司 では、私たちが見ているアイスダンスのカップルも当たり前ではなくて、それぞれがそれぞれの苦労とストーリーを経てそこにいると思うと、また見方が変わりますね。

村上 今のトップにいる世界の方たちは、そういうのが全くない小さな頃からカップルを組んでいて、ジュニアも経てやっている人たちが多いかもしれないです。

宮司 幼馴染だったりしますしね。

村上 その差はやっぱりどうしても埋められないから、本当に努力しないと難しいかもしれないですね。でも、楽しそう(笑)。

宮司 その点、村元・髙橋組の相性というのはいかがでしょうか?

村上 すごくいいと思います。哉中ちゃんが出すフィギュアスケートの色と髙橋選手の出すフィギュアスケートの色って相性がいいというか、混ざりやすい色だと私は思うので。あとは、髙橋選手がもうちょっとアイスダンスに慣れていけば、もっともっと自分の色が出て、すごいものになると思います。

宮司 楽しみですね。まだ2シーズン目でそれだけの進化を見せているわけですからね。

村上 本当にすごいことです。

【村上さん、まさかの復帰宣言⁈】

宮司 今日はアイスダンスに対する情熱を語っていただきありがとうございました。

村上 アイスダンス、ホントにずっとやりたかったんです、私。大ちゃん(髙橋大輔選手)がやるってなって、「え~、大ちゃんやるんだ。私もずっとやりたいって言ってたじゃん」って(笑)。

宮司 私も見たいです。

村上 やりたいので、私のアイスダンスのパートナーを見つけてください。「募集中」とか「応募求ム!」みたいなことをやってください。お願いします! そうしたら復帰しますから(笑)。

宮司 おお~っ。これは貴重な話が聞けたかもしれない。

(おわり)

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PROFILE
村上佳菜子(むらかみ・かなこ)
プロフィギュアスケーター。94年11月7日生まれ。
愛知県名古屋市出身。血液型:A型。
フィギュアスケート選手(女子シングル)として、ソチオリンピック出場(2014年)、四大陸選手権優勝(2014年)など輝かしい成績を残す。2017年に引退後は、プロフィギュアスケーターやフィギュアスケート解説者として活躍。タレントや女優として数々のテレビ番組にも出演中。
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宮司愛海(みやじ・まなみ)
91年7月29日生まれ。2015年フジテレビ入社。
福岡県出身。血液型:0型。
スポーツ・ニュース番組『S-PARK』のメーンキャスター。スタジオ内での番組進行だけでなく、
現場に出てさまざまな競技にふれ、多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動。
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