「HEROs AWARD 2021」でチーム・リーグ部門を受賞 スポーツやアスリートの力が社会課題の解決を加速させること…

「HEROs AWARD 2021」でチーム・リーグ部門を受賞

 スポーツやアスリートの力が社会課題の解決を加速させることを社会に可視化・発信するために、社会貢献活動に取り組むアスリートを表彰する「HEROs AWARD 2021」の表彰式が20日、都内で開催された。チーム・リーグ部門は、昨季B1リーグ王者の千葉ジェッツふなばしが受賞。同チームの社会貢献プロジェクト「JETS ASSIST」が評価されたことが理由となったなか、田村征也社長、選手、スタッフに活動内容や意義について話を聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

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 田村社長は、受賞の喜びを率直に表現した。

「千葉ジェッツふなばしとして、初めての受賞になりますし、とても光栄に思っております。そして、受賞できたことを驚いております」

 受賞理由は「JETS ASSIST」。千葉ジェッツふなばしがスポンサー、NPO法人、自治体らと共に取り組んできた社会貢献プロジェクトだ。

「我々は、地域愛着を掲げて活動しています。地域の皆様に支えられて活動できていますが、その恩返しも込めて、動き出したことが始まりです」(田村社長)

 千葉ジェッツふなばしは、2019年1月に天皇杯3連覇を飾った後、「地域を支えていく存在になる」ことを目指すようになった。当時の島田慎二社長(現Bリーグチェアマン)が「このまま地域に支えられているだけでは、今後、存続していくことは難しいのでは」と強く思っていたからだ。

 島田氏はクラブ内に専属の部隊を設置。担当者たちは、プロジェクトを継続的なものにするため、スポンサー獲得にも奔走した。そして同年9月、株式会社サテライトオフィス(本社・東京)をメインパートナーに据えて、JETS ASSISTの始動を発表した。同社は都内に本社を構えているが、代表の原口豊氏は船橋市在住。そして、「応援してきた千葉ジェッツふなばしを船橋市にさらに根付かせたい」という思いもあり、新プロジェクトへの協力に至った。

2019年に始動、目標は「地域を支えていく存在になる」

 こうして基盤が整ったJETS ASSISTの活動理念は、経済的、社会的に恵まれない境遇の子供たちや、日々、苦しい思いをしている人々に対して、「生き甲斐をもって、生きていけるよう支援をする」。その上で、Planet(地球を守る)、People(支援が必要な人々人に手を差し伸べる)、Peace(平和、安全、安心)からなる「オフコートの3P」という考え方を据え、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献を目指すことになった。自治体、NPO法人とも連携。地域課題の現状をリサーチし、そこにアプローチすることを特徴にした。

「我々だけの取り組みになると、どうしてもスポーツの普及にフォーカスしてしまいますが、地域の皆様に今、困っていることをヒアリングして課題解決することが一番の目的なので、(スポンサー、自治体、NPO法人などに)ご一緒してもらっています。結果、それがマルチな活動につながっています」(田村社長)

 JETS ASSISTで、これまで手掛けた活動は多岐にわたる。以下は代表的な例だ。

●「思い出を未来につなぐ」絆Tシャツプロジェクト
 プラスチックごみ問題の深刻化を受け、「使い捨てからリサイクルへ」と意識変革を推進するため、企画された活動。ホームゲームの会場に来場した観客から回収した古着および、選手から回収した古着をリサイクルし、「絆Tシャツ」と題した新Tシャツに生まれ変わらせるというもの。「絆Tシャツ」は一般販売し、売り上げの一部は、新型コロナウイルスと闘っている医療従事者に寄付される。19年10月のホームゲーム時に初めて実施された際には、2日間で来場者約700人の協力があり、重さ100キログラム以上の古着Tシャツを回収。20年10月に行われたホームゲーム時に実施された際には、2日間で約400着の古着Tシャツが集まった。

●フードドライブプロジェクト
 自宅にある食品で寄付できるものを支援が必要な人たちに届けてもらうための回収イベント。日本では現在、7人に1人、ひとり親世帯の子供は半数以上が貧困状態にあるとされ、船橋市でも子供たちが食に不安を抱えて生活している家庭が存在している。その背景を踏まえたフードバンクふなばしと協業した取り組み。集められた食料は、フードバンクふなばしと船橋市の連携で、支援が必要な家庭に届けられる。今年5月のホームゲーム時には2日間で来場者300人から、総重量280kgの食品が寄せられた。

●ブックドライブプロジェクト
 本を寄贈してもらい、本が必要な人や新しい読み手に届けるプロジェクト。NBAでも、カンファレンス優勝チームは必ず実施していた活動で、千葉ジェッツふなばしは、コロナ禍で苦しい状況にある子供たちや青少年に応援を届けるため、ホームゲーム開催時は、来場者に「元気になれる本」や「勇気をもらえる本」の持参を呼びかけ、400冊以上の本を集めた。そして、千葉県内の公立高4校に計240冊を寄贈。それぞれには、千葉ジェッツふなばしの公式マスコットキャラクター「ジャンボくん」のシールが貼られている。

●交通安全のためのランドセルカバーの配布
 船橋市の子供たちの交通安全に対する意識の向上とランドセルカバーの着用による交通事故防止等を目的とし、パートナー企業のXFLAG、船橋東警察署、交通安全協会の賛同のもとに実現した活動。今年4月、船橋東署管内にある29の船橋市立小の新1年生約3000人に配布された。ランドセルカバーには「ジャンボくん」が手を挙げ、横断歩道を渡るデザインが施され、交通事故防止に寄与している。

●バスケットゴールセット寄贈
 パートナー企業であるXFLAGのサポートを受け、船橋市内の150を数える幼稚園・保育園を対象に、千葉ジェッツふなばしオリジナルのミニバスケットゴールセット(ミニバスケットゴール&ボール)を寄贈。「千葉県をバスケットボール王国にする」というビジョンを基に、コロナ禍で問題になった子供たちの運動不足、体力低下解消への寄与を目指している。さらには「元気や勇気を与えたい」「バスケットボールや千葉ジェッツふなばしをもっと好きになってもらいたい」という思いも込めている。

「いずれの活動も、地域の皆様に千葉ジェッツふなばしを知っていただく機会にもなっています。そして年々、参加する方が増え、『こういう活動をしてはどうですか』という提案もいただいています。バスケットゴールの寄贈に関しては、子供たちが最初に取り組むスポーツが『バスケットボールであってほしい』という願いもあります」(田村社長)

 その他、バスケットボール教室、ボール寄贈、ゴミ拾い、虐待防止を訴える活動などを合わせると、JETS ASSISTの活動は年間100を数える。それぞれには細やかな準備が必要で、スタッフの忙しさは想像に難くないが、広報チームの芳賀宏輔さんは「子供たちや皆さんの笑顔を見れば、大変なことがあってもすべて吹き飛びます」と話す。

チーム内で確立された社会貢献の意識、独自で動く選手も

 それは選手たちも同じ気持ちで、JETS ASSISTが始まって以来、チーム内で社会貢献の姿勢が確立された。船橋市出身で15年から在籍する原修太は、自身で「ハラの輪プロジェクト」を立ち上げ、長期療養中の子供たちとのオンライン交流会やバスケットボールプレゼント企画などを実施してきた。千葉ジェッツふなばしとしても、原の活動をJETS ASSISTの一環として支援。影響を受けた他の選手からは「自分も何かやってみたい」という声が上がっているという。

「きっかけは僕自身が、(18年夏に国の指定する難病の)潰瘍性大腸炎を患い、長期の入院生活をしたことでした。その際に同じ病気や似た病気の人に勇気をもらったので、『今度は自分が』という思いがあり、芳賀さんと一緒にオンライン交流会をしたり、特別支援学校に行っています。子供たちにはいつも『元気を与えたい』と思っていますけど、全員が元気過ぎて、逆に元気をもらっています。あとは、僕自身が活躍することが、子供たちに勇気を与えると思っています。その意識が、今のいい結果に繋がっていると感じています」(原)

 ベテランの大宮宏正も、社会貢献活動に高い意識を持つ1人だ。

「養護施設への訪問は、千葉ジェッツふなばしに来る前から続けていますが、個人の力では大きくならないものが、JETS ASSISTによって広がっていくことがありがたいです。そして、活動に興味を持ってくれる人々が増えることで、世の中が優しくなっていく。それが嬉しいです」(大宮)

他チームへの好影響で田村社長「どんどん真似をして」

 千葉ジェッツふなばしは昨季、B1王者になった。今季もB1東地区で好調を維持。JETS ASSISTの活動でも他チームに影響を与えている。

「活動の事例はリーグを通じて、全クラブに公開しています。いいところはどんどん真似してほしいですし、リーグ全体が発展していくためにも、自分たちで抱え込まず、今後も情報を開示してシェアしていきます。我々は今後も、千葉ジェッツふなばしだからできることをやっていきたいですし、地域のハブ(中心地)となって、『ジェッツがやるなら』という感じで、多くの方が活動に参加しやすい雰囲気を作っていきたいです。チームの結果は『心技体』のすべてが揃って出るものですが、選手たちも活動を通じて社会的責任を自覚し、心の部分が磨かれていると感じています」(田村社長)

 地域に支えられ、地域を支える存在になりつつある千葉ジェッツふなばし。HEROs AWARD受賞を機に、JETS ASSISTをさらに充実させ、B1年間2連覇を果たせば、押しも押されもせぬ「Bリーグのリーダー」になりそうだ。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)