福島良一「MLBコアサイド」 1973年の初渡米から48年にわたってメジャーリーグの造詣を深めてきた福島良一氏に、さまざ…

福島良一「MLBコアサイド」

 1973年の初渡米から48年にわたってメジャーリーグの造詣を深めてきた福島良一氏に、さまざまな魅力を伝えてもらう「MLBコアサイド」。今回は広島の鈴木誠也選手について語ってもらいました。

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鈴木誠也の今季の年俸は推定3億1000万円

 メジャーリーグ機構(MLB)は選手会との新労使交渉を期限までに締結することができず、現地12月2日に球団オーナーによるロックアウト(施設閉鎖)をスタートさせました。そのため、移籍交渉を含めたすべての業務も現在はストップしています。

 ポスティングシステムでのメジャーリーグ移籍を目指す広島の鈴木誠也外野手も、その影響を大きく受けているひとりです。ロックアウト解除となれば交渉は再開されますが、どの球団が鈴木選手を欲しがっているのか、すでに水面下ではメディアを使うなど様々な駆け引きが行なわれています。

 鈴木選手の評価を知る指針のひとつとして、複数のアメリカ大手メディアが発表した「FA選手ランキング」を見てみましょう。スポーツ専門局『ESPN』は上位50人中17位、権威あるスポーツ専門誌『スポーツ・イラストレイテッド』も17位、大手移籍サイト『MLBトレードルーマーズ』は20位に鈴木選手をランキングしました。

 今オフも多くのメジャーリーガーがFAとなっていますが、そのなかで20位以内に食い込んでいるのはすごいことです。鈴木選手がこれほど高く評価されているのは、次の理由が考えられるでしょう。

 まずは、ホームランバッターにしては三振が少ないことです。今年の鈴木選手は自己最多の38本塁打、長打率.639をマークしながら、フォアボールは87個を記録した一方、三振は88個しか喫しませんでした。スポーツ・イラストレイテッド誌が「ここ3年の累計では四球数が三振数を上回っている」と紹介したように、3年間で合計262四球に対して242三振しか奪われていません。

【右の長距離砲が減った背景】

 また、鈴木選手は優れたバッティングセンスだけでなく、外野の守備にも定評があります。強肩を生かしたライトの守備力は球界屈指で、これまで5度もゴールデングラブ賞を受賞。さらには走力もスピードがあり、通算82盗塁をマークしている点も見逃せません。

 まさに鈴木選手は「走・攻・守」の三拍子が揃ったオールラウンドプレーヤーです。アメリカのメディアも「鈴木選手は5ツールプレーヤー」と高く評価していました。5ツールプレーヤーとは「ミート力」「長打力」「走力」「守備力」「送球力」の5つの能力が水準以上に高い選手を指します。

 そのうえ、まだ27歳という若さも魅力的でしょう。今季本塁打王に輝いたブラディミール・ゲレロ・ジュニア(22歳/トロント・ブルージェイズ)やフェルナンド・タティス・ジュニア(22歳/サンディエゴ・パドレス)といった若手スターが台頭してきた一方、今オフのFA市場は30歳前後のベテラン選手が多く占めています。その点も鈴木選手の価値が高くなっている要因ではないでしょうか。

 最近の傾向から見れば、鈴木選手が「右のパワーヒッターである」ことも人気のひとつです。近年メジャーでは右投手のレベルアップが顕著で、変化球の対応に苦しむ右打者が増えました。また、右打者に不利な形状の球場が増加したため、右の長距離砲が減っている背景もあります。右打者が左打者やスイッチヒッターに転向した例もあるほどです。

 昨年、両リーグで33人が長打率5割以上を残しましたが、そのうち右打者は半数以下の16人。かつてメジャーでは右の長距離砲が数多く活躍していただけに、あまりの少なさに驚きも感じます。

 さらに掘り下げると、今季30本塁打以上打ったバッターで100三振未満だったのは、ホセ・ラミレス(クリーブランド・ガーディアンズ)、ノーラン・アレナド(セントルイス・カージナルス)、ホセ・アルトゥーベ(ヒューストン・アストロズ)、マイケル・タッカー(アストロズ)の4人だけ。また、長打率5割以上で100三振未満は、タッカー、ラミレス、フアン・ソト(ワシントン・ナショナルズ)の3人だけでした。

【過去40年でMLB最低の数字】

 メジャーは日本のプロ野球に比べて「三振かホームランか」というスラッガータイプが多いとはいえ、ホームランが多くて三振が少ないバッターは貴重です。これも鈴木選手の評価が高い理由でしょう。

 また、メジャーのもうひとつの傾向として、近年の「投高打低」も見逃せません。今季は低反発球の影響により、全チームを合わせた平均打率は1972年以来最低の.244をマークしました。つまり、1973年にア・リーグが指名打者制を導入して以来、最低の数字だったのです。

 2019年はメジャー史上最多の6776本塁打を記録しましたが、2021年は2年ぶりのフルシーズンでありながら5944本塁打と激減。近年はフライボール革命の影響によって機動力も影を潜め、過去40年間で最低の1試合平均0.46盗塁しか記録しませんでした。

つまり、メジャー全体的に攻撃力が低下しているのです。そのような傾向もあって、鈴木選手のような長打力があり、三振も少なく、さらに走れる右の外野手には高いニーズがあると言えます。

 ロックアウトで交渉が停止する前に移籍先が決まったFA選手のうち、鈴木選手と同じ外野を守れる主なプレーヤーは以下のとおりです。

★スターリング・マルテ(33歳/オークランド・アスレチックス→ニューヨーク・メッツ)
 →4年総額7800万ドル(約88億円)
★クリス・テイラー(31歳/ロサンゼルス・ドジャースと再契約)
 →4年総額6000万ドル(約68億円)
★アビサイル・ガルシア(30歳/ミルウォーキー・ブルワーズ→マイアミ・マーリンズ)
 →4年5300万ドル(約60億円)
★マーク・カナ(32歳/オークランド・アスレチックス→ニューヨーク・メッツ)
 →2年総額2650万ドル(約30億円)
★コール・カルフーン(34歳/アリゾナ・ダイヤモンドバックス→テキサス・レンジャーズ)
 →1年520万ドル(約6億円)

 上記のうち、マルテ、テイラー、ガルシアの3人はFA市場で鈴木選手の前後にランキングされていました。したがって、彼らの契約年数や年俸総額から考察すると、鈴木選手も4年総額6000万ドル(約68億円/年俸17億円)ぐらいの価値は十分あると思います。

 ロックアウト解除後、鈴木選手はどの球団と交渉し、どんな大型契約を結ぶことになるのか。一日も早くオーナー側と選手会が新労使協定を締結し、鈴木選手の移籍交渉が再開するのを待ちたいところです。