オランダ・レーワルデンで開催されたカーリングの北京五輪世界最終予選で、女子日本代表のロコ・ソラーレがプレーオフで韓国代表に勝利し、北京五輪の出場権を獲得した。 出場9チームによる総当たりのリーグ戦から、ロコ・ソラーレの戦いぶりは安定してい…

 オランダ・レーワルデンで開催されたカーリングの北京五輪世界最終予選で、女子日本代表のロコ・ソラーレがプレーオフで韓国代表に勝利し、北京五輪の出場権を獲得した。

 出場9チームによる総当たりのリーグ戦から、ロコ・ソラーレの戦いぶりは安定していた。勝ち星では6勝2敗と、スコットランド、韓国とともにトップで並んでDSC(ドローショットチャレンジ)の結果によって3位に甘んじたが、不利な先攻で得点を奪うスチールの数はトップタイの14。逆に相手にスチールされた数は1と、不安定なアイスコンディションにありながら、リスクマネジメントの高さでは群を抜いていた。



北京五輪の出場権を獲得したロコ・ソラーレ。左から藤澤五月、吉田知那美、鈴木夕湖、吉田夕梨花、石崎琴美

 その立役者となったのは、セカンドの鈴木夕湖だ。

 カーリングではアイスの変化を含め、点差と残りエンド、両チームのリード4投が終わった際の石の配置などを判断材料にして、セカンドのショットで攻めるか、守るか、決めることが多い。その点、今大会の鈴木はどちらにもしっかりと対応。テイクも、ドローも高い精度で決めてきた。

 テイクでは、相手が置いたガードストーンを1投で2つ弾き飛ばすダブルピールを要所で決め、ドローでは最終的に点になる強い石を幾度もハウス内に送り込んだ。ポジションごとのショット率でも相手セカンドに負けたのは1度だけ。敗戦したスコットランド戦、トルコ戦以外では2点以上のビハインドを負うことがなく、多くのゲームで序盤から主導権を握れたのは、そんな鈴木の仕事に依るところが大きかったと言えるだろう。

 また、ミックスダブルスでペアを組む平昌五輪男子代表の両角公佑(TM軽井沢)は、「夕湖選手はドローもテイクも精度が高いですし、目もいいんですよ」と言って、鈴木の投げる技術だけでなく、スイーパーとしての能力を高く評価する。

 カーリングにおいて"目"というのは、ストーンの挙動からウエイト(速さ)、回転、曲がり幅などを見極める能力を指し、スイーパーとして不可欠な資質だ。

 さらに両角は、鈴木の長所についてこう語る。

「彼女はクセ強で愉快なキャラクターですが、組んでみてわかったのは、すごくカーリングのことを考えている、ということ。人一倍、真摯に向き合っています。

 あとは、理系女子らしく効率的にモノを考えるので、ショットを運ぶ時も常に最高の結果と最悪の結果を頭に入れて、決して最悪にならないようにプレーしています。だから、ミスが出ても致命傷になりにくい。ああいう選手がいるチームは強いですよ」

 鈴木は今回の最終予選だけでなく、9月に稚内で行なわれた北海道銀行フォルティウスとの日本代表決定戦でもハイパフォーマンスを披露し、MVPに選ばれている。今季好調な理由について、鈴木本人はこう分析している。

「(コロナ禍にあって昨季は)海外遠征に行けなかった分、基礎的な練習を『今までの人生で一番やった』っていうくらいやった。それがよかったのかも」

 両角はそれについても同意し、こう続ける。

「ロコ・ソラーレのなかでも、夕湖選手と藤澤五月選手の氷上練習の量は飛び抜けているんじゃないですかね。ほっておいたら、ずっと(ストーンを)投げている。基礎練って、やっぱり楽しくないんですよ。それでも、それを楽しそうにこなせるのは、彼女たちの才能だと思います」

 振り返れば、4年前の平昌五輪では、鈴木はショットが安定せずに苦しんだ試合がいくつかあった。その時も彼女は「下手だから、練習してくる」と言って、空き時間にアイスに乗ってひたすら基礎練習を繰り返していた。

 練習は裏切らない。努力は報われる――時にキレイごとのように響くフレーズだが、練習や努力を怠らなかった今回の鈴木の活躍はそれを実証している。五輪でも同様のパフォーマンスを発揮できれば、チームの躍進につながることは間違いない。と同時に、4年前と同じく多くの人々に勇気と力を与えるのではないだろうか。

「まずはピーキングが大事。もう若くもないので、ちゃんと自分の身体と向き合って北京五輪に調子を合わせていきたい」

 開幕まで50日を切った北京五輪に向けて、12月に30歳の誕生日を迎えたばかりの鈴木はそう語った。身長145cmの小兵にかかる期待と注目度は増すばかりだ。