失点数の少ないチームを支えたGKたちの評価 2021シーズンのJリーグは川崎フロンターレが圧倒的な強さを見せて、2度目の…
失点数の少ないチームを支えたGKたちの評価
2021シーズンのJリーグは川崎フロンターレが圧倒的な強さを見せて、2度目の連覇を達成、シーズンを終えた。MVP(年間優秀選手賞)には川崎Fのレアンドロ・ダミアン選手が受賞し、ベストイレブンにも川崎Fの選手が名を連ねた。
そんなシーズンを締めくくる企画として、「THE ANSWER」ではスポーツ・チャンネル「DAZN」とともに毎月行ってきた「月間表彰」において、「月間ベストセーブ」のセレクターである元日本代表GKの楢﨑正剛氏に、GK目線で2021シーズンを総括してもらった。
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楢﨑氏の独自目線で決める「年間表彰~GK部門」。真っ先に挙がった名前は、ベストイレブンにも選ばれ、名古屋グランパスの守護神として数々の記録達成に大きく貢献したランゲラックだ。
第2節の北海道コンサドーレ札幌戦から9試合連続無失点を成し遂げ、Jリーグ新記録を打ち立てた。実に818分もの間ゴールを割らせなかった最大の要因として、名古屋の堅守を体現するオーストラリア人GKの存在が大きかったと楢﨑氏は話す。
「名古屋がチームとして守備をベースにして戦っていたのは間違いありませんが、ランゲラック選手の存在は、その守備力にプラスαをもたらしていました。目に見える数字として表れる貢献は確実性の高いプレーをできる選手だからこそです」
名古屋は38試合中21試合でクリーンシートを記録。失点30は優勝した川崎Fに次ぐ2番目の少なさで、楢﨑氏はプレーヤーとしての心理面にも言及した。
「数字や記録は自分で意識しなくても情報として耳に入ってきてしまいます。そういった状況で意識して、そのうえで結果を出せるのがホンモノの実力。意識しすぎてプレーが硬くなってしまったら良いプレーはできませんし、どんな状況でもブレない基礎技術の高さがランゲラック選手にはあります。僕も現役時代、シーズン前もシーズン中も1試合1失点以下をひとつの目標にしていましたが、ほとんど達成できませんでした」
1試合1失点以下の失点数という観点では、リーグ最少失点28の川崎Fに触れないわけにはいかない。
そのチャンピオンチームを最後尾で支えたのがチョン・ソンリョンだ。
「チームとして攻撃力があって、しかもこの失点数なら優勝して当然かもしれません(苦笑)。チョン・ソンリョン選手はコンスタントに高いパフォーマンスを発揮できる選手の代表格。川崎Fは基本的に相手を圧倒できるチームですが、試合を優位に進めるチームなりのプレッシャーもあったはず。そこで動じるような素振りを一切見せなかったですし『試合を壊さない』『安心感を与える』『計算できる』といった要素はとても大きい」
同じく攻撃的なチームといえば、2位でフィニッシュした横浜F・マリノスが挙がる。かつての堅守のスタイルから大幅にモデルチェンジし、今季はリーグ最多82得点を叩き出した。その一方で35失点は川崎F、名古屋に次ぐ3位タイだ。その戦いぶりは楢﨑氏の目にどのように映ったのか。
「スタイルが変わった中でもこの失点数を維持できているのはさすがです。攻撃に力を注ぐことで守備の負担を減らすという発想もありますが、その場合はGKやDFに力のある選手がいないと難しい。ゴールマウスを守った高丘陽平選手は実戦を重ねるごとに自信を付けているように見えました。クラブとしてもスタイルにフィットしそうな選手をチョイスして獲得していると思います」
GKはチームの浮沈に左右される反面、窮地を救う決め手にも
反対に、自身のパフォーマンスとチームの結果が比例しない場合もある。「GKは自分が活躍しても結果が伴わないこともあるポジションです」という楢﨑氏の言葉が重く響く。
チームは降格という憂き目に遭ったが、ベガルタ仙台のヤクブ・スウォビィクや横浜FCのスベンド・ブローダーセンのパフォーマンスは苦しいチーム事情にあってもひと際目立っていた。
「個人能力に疑いの余地がない選手たちです。ただGKだけでゴールを守れるか、失点を減らせるかというと、長いシーズンでは難しい部分もあります。それでも仙台と横浜FCが最後まで粘って残留争いを戦えた背景には、間違いなく優れたGKの存在がありました」
チームの浮沈に左右されてしまう側面もあるが、一方で窮地を救う決め手にもなれる。それがGKというポジションの難しさであり、魅力だろう。
前出の外国籍2選手と同じように、日本人GKにも苦難のシーズンとなった実力者がいた。ガンバ大阪の東口順昭や清水エスパルスの権田修一だ。
「東口選手は今季も数多くのファインセーブを披露しましたが、チームとしてピンチの数が多かったという印象は否めません。最終節でようやく残留を決めた清水も苦しいシーズンでした。日本代表として試合に出場している権田選手の力でなんとか踏ん張っていた部分もあります。2チームと両選手にはこの苦労を糧に来季以降の活躍に期待したいです」
他にも月間ベストセーブの選考にあたって数多くの試合をチェックする楢﨑氏の目に留まる選手がいた。
「昇格したシーズンで8位に食い込んだアビスパ福岡では村上昌謙選手がアベレージの高いプレーを続けていたと思います。それから北海道コンサドーレ札幌の菅野孝憲選手も経験値を生かしてピンチを救っていました。若手に目を向けると、湘南ベルマーレの谷晃生選手は東京五輪を経て注目を浴びる存在になりました。これから日本代表で出場機会を得るためには、ここからもうひと伸びしてほしいタイミング。さらに高いステージを目指してほしいプレーヤーです」
サッカーのスタイルやシステムには時代の潮流が付きもの。それに呼応するようにGKも進化し、仕事は多岐に渡る。だからこそ、楢﨑氏はあえて強調した。
「育成の指導現場にも共通することですが、現代のGKに求められる仕事はとても多い。なんでもやらないといけないので、今のプレーヤーは大変です。でも揺るぎないことがひとつあるとすれば、ゴールを守るという仕事。それをコンスタントにハイレベルにできる選手が優れたGKですし、大切なポイントだと思います」
インタビュー序盤に名前が挙がった選手の軌跡を振り返ると分かりやすい。ランゲラックは来日から4シーズン、チョン・ソンリョンは6シーズンをJリーグで過ごし、どのシーズンも高いパフォーマンスでそれぞれの所属チームを支えている。
GKを語る上で「コンスタントにハイレベル」は来季以降のJリーグでもキーワードになっていくに違いない。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)