競技外も盛り上がった「東京五輪総集編」、河島ティヤナさんの行動が世界で話題に 2021年夏に東京五輪・パラリンピックが開催され、世界のアスリートが熱戦を繰り広げた。1年延期に無観客という未曾有の環境下、多くの海外選手やメディアが舞台裏をSN…

競技外も盛り上がった「東京五輪総集編」、河島ティヤナさんの行動が世界で話題に

 2021年夏に東京五輪・パラリンピックが開催され、世界のアスリートが熱戦を繰り広げた。1年延期に無観客という未曾有の環境下、多くの海外選手やメディアが舞台裏をSNSで発信。日本文化の魅力を世界に伝えるなど、競技外も盛り上がった。そんな出来事を「東京五輪総集編」と題し、振り返る。今回は金メダルを獲得した選手を巡る奇跡的な秘話。陸上男子110メートル障害を制した31歳のハンスル・パーチメント(ジャマイカ)が、あるミスを救ってもらった大会スタッフの女性に感謝する動画をインスタグラムにアップし、世界的な話題となった。

 まさかのミスを犯したのは、8月4日の準決勝直前だった。選手村を出発したパーチメントは「音楽を聴いていたため、何も聞こえなかった」とバスを間違えたことに気づかず。到着したのは、陸上が行われる国立競技場とは反対方向の東京アクアティクスセンターだった。準決勝は午前11時17分開始。「選手村に戻って、正しいバスに乗ろうとしたらウォーミングアップをする時間がないかも」と考えたという。

 救世主となったのは、日本人の女性スタッフ。なんとタクシー代をくれたおかげで国立競技場にたどり着くことができた。「おかげで、ウォーミングアップをする十分な時間をつくることができた」と準決勝を組2着で突破。さらに5日の決勝は13秒04で金メダルを獲得した。

 インスタグラムに動画を公開し、一部始終を説明。「彼女を見つけて金メダルを見せるつもりだ」と、日を改めて再び競泳会場を訪れた。「僕のこと覚えている?」。女性に話しかけ、「見せたいものがあるんだ」と取り出したのは金メダル。「勝ったんだ。あなたが助けてくれたから。シャツもプレゼントするよ。サイズが合えば良いんだけど。そしてお金も返すよ」と感謝を伝え、2ショットを撮影した。

 コメント欄には、海外ファンも「涙が止まらない」「美しい行動だね」「金メダルの裏にこんなストーリーがあったんだ」「神様は見ていたんだね」「とても心温まる話だ」「感動した」と称賛の声が殺到。さらに、この投稿をきっかけに各国メディアが報じ、大会スタッフは一躍、時の人になった。その女性はストイコビッチ河島ティヤナさんという。

本人が明かしていた経緯「助けたい気持ち一心でした」

 当時、「THE ANSWER」の取材を受けた河島さんによると、旅行会社「近畿日本ツーリスト」が業務委託した派遣スタッフとして、競技会場のバス乗降場で選手ら大会関係者を案内・誘導する業務を担っていた。バスを乗り間違えたパーチメントは本来、選手村に戻ってバスに乗り換えるべきだったが、「それではレースに間に合わない」との本人の答えがあり、現場責任者の判断で専用タクシーを呼び、1万円をポケットマネーで渡したという。

 その理由について「知らない土地で試合のことで頭がいっぱいだろうし、そんな時に迷って間違ってしまうのは仕方ないだろうと思いました。国を背負って人生をかけて来てるんだろうなと思うと、今回このご時世の中、五輪に出られたのは奇跡かもしれない。もう最後になるかもしれない。一生後悔させてしまうことは私にはできないと思い、助けたい気持ち一心でした」などと明かしていた。

 大会後にはジャマイカ大使館で河島さんへの感謝の式典が開かれた。さまざまな“おもてなし”が話題に浴びることになった東京五輪。なかでも、河島さんはその象徴ともいえる一人だった。(THE ANSWER編集部)