準々決勝で国士舘大に2-0勝利、昨季コーチの京都・チョウ貴裁監督が部分合流 わずか10分の“チョウ魔術”指導が効いた。第…
準々決勝で国士舘大に2-0勝利、昨季コーチの京都・チョウ貴裁監督が部分合流
わずか10分の“チョウ魔術”指導が効いた。第70回全日本大学サッカー選手権は14日に準々決勝を行い、関東地区第1代表の流通経済大学は2-0で同地区第7代表の国士舘大学を破って4強進出を決めた。前半に相手のシュート数をゼロに抑え、終始、安定した守備が実現できたのは、前任コーチの指導の賜物だった。中野雄二監督が「昨日、チョウさんが合流して、映像を用意して、このポイントだけは修正したほうが良いとミーティングをしてくれて、こんなに安定した試合をやれた。チョウさんのおかげ。10分程度の練習でしたけど。そこが凄いんですよ」と絶賛した「チョウさん」とは、今季、就任1年目で京都サンガF.C.をJ1昇格に導いた曹貴裁(チョウ・キジェ)監督のことだ。
曹監督は長らく湘南ベルマーレで指揮を執っていたが、19年にパワーハラスメント行為が問題となり退任。日本サッカー協会から公認S級ライセンスの1年間停止処分を受けた。流経大は、曹監督の現場復帰の足がかりを提供するとともに、トッププロ監督から学びを得ようと昨季、コーチに招聘した。
1年限りの指導となったものの、曹監督は今季から京都の指揮官に就任。1年目でJ1昇格を果たした。今回はJリーグ終了後、前年に教えていた流経大の活動に部分合流。試合前日、10分ほどの練習だったが、選手同士の距離が間延びしていることを指摘し、相手のゴールキックやフリーキックの際、最初から下げるのではなく、一度最終ラインを押し上げて全体をコンパクトにすることを徹底するように指導したという。
効果てきめんだった。前半、国士館大のシュートをゼロに抑えて試合のペースをがっちりと掌握。来季J3に昇格するいわきFCに加入が内定しているDF家泉怜依(4年)がグラウンダーの縦パスを入れると、中盤からはサガン鳥栖に加入内定のMF佐藤響(4年)の突破などで攻勢に出た。前半41分には、同じく鳥栖に加入するMF菊地泰智(4年)が「相手の壁が大きかったからパスをしようと思ったけど、よく見たら狙うコースは、壁とは関係なかったので蹴った」と得意の左足で直接FKを決めて先制した。
後半は時間の経過とともに国士館大が意地の反撃を見せるようにはなったが、決定機は作らせず、逆に試合終了間際にMF熊澤和希(3年)が左足のシュートを叩き込んで、試合を締めくくった。
昨季コーチの助言を「全員がなるほどと思ってやっている」
10分間のアドバイスが生きたのは、当然、昨年1年間の指導がベースにある。菊地は「昨年も似たようなことを言われていた。初戦はズルズルとラインが下がったけど、怖がらずラインを下げずに止めれば、(相手のロングパスから生まれるこぼれ球を)処理しやすくなる。それが上手くいって、チョウさんが言ってくれたとおりになった。全員がなるほどと思ってやっているから、自信を持って迷わずにできた」と手応えを語った。
中盤の底に位置するアンカーを務めた熊澤も「良い入りができて、終始良いペースで進められた。最終ラインが上がった時に、自分も一つポジションを上げて、前にいる藤井海和(1年)と菊地を押し上げて、セカンドボールを高い位置で取るように意識した」と曹監督の助言を実行。全体を押し上げて選手間の距離を詰め、連動性を高めることで、相手のロングパスによる守備網の前後分断を回避することで優位に試合を進めることができた。
曹監督は、チームからのベンチ入り要請には応えず、スタンドで見守るにとどめたが、今後も日程が可能であれば部分合流する意向だという。川崎フロンターレに加入内定のDF佐々木旭(4年)は「あれがなかったら、今日もいい試合ができていなかったと思う。このまま優勝に向かって頑張っていきたい」と、プロの舞台に戻ってからも助言をくれた昨季のコーチに感謝を示した。
流経大は、18日に行われる準決勝では、阪南大学(関西地区第4代表)と対戦する。恩返しの日本一まで、あと2つの勝利をつかみにいく。(平野 貴也 / Takaya Hirano)