今年の2歳牡馬戦線は前評判の高かった良血馬や期待馬がやや苦戦。新馬、重賞と1番人気で連勝を飾った馬は、GIIIサウジア…
今年の2歳牡馬戦線は前評判の高かった良血馬や期待馬がやや苦戦。新馬、重賞と1番人気で連勝を飾った馬は、GIIIサウジアラビアロイヤルC(10月9日/東京・芝1600m)を制したコマンドライン(牡2歳/父ディープインパクト)くらいだ。

2戦2勝でGIIIサウジアラビアロイヤルCを制したコマンドライン
ただし、決してレベルが低いわけではない。パソコン競馬ライターの市丸博司氏が語る。
「今年の2歳牡馬は全般的に、現時点でのTF指数(※市丸氏が独自に編み出したデータ指数)が昨年よりもやや落ちます。しかしながら、指数1位のセリフォス(牡2歳/父ダイワメジャー)は昨年の1位よりもポイントが高く、ポイント上位勢は例年並みの指数をマークしています。(大舞台への戦いは)まだまだこれからですし、今後に希望が持てる世代と言えるのではないでしょうか」
実際、無敗で重賞を勝っている馬は冒頭のコマンドラインの他、GIII札幌2歳S(9月4日/札幌・芝1800m)を圧勝したジオグリフ(牡2歳/父ドレフォン)、GII東京スポーツ杯2歳S(11月20日/東京・芝1800m)で完勝劇を演じたイクイノックス(牡2歳/父キタサンブラック)、そして市丸氏が触れた、GIII新潟2歳S(8月29日/新潟・芝1600m)とGIIデイリー杯2歳S(11月13日/阪神・芝1600m)を制覇しているセリフォスらがいる。いずれも、実力を秘めた逸材ばかりだ。
そして、こうした面々がしのぎを削る2歳GI、朝日杯フューチュリティS(12月19日/阪神・芝1600m)やホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)がまもなく行なわれる。今回はそれらを前にして、現時点での2歳牡馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、独特なデータを駆使するパソコン競馬ライターの市丸博司氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、来春のクラシックを目指す2歳牡馬の、現時点における実力・能力を分析しランクづけ。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。

1位は、イクイノックス。キタサンブラックの初年度産駒で、母父が今年のトレンドでもあるキングヘイロー。年内の2歳GIに出走する予定はないが、東スポ杯2歳Sで圧倒的な強さを見せて、クラシックの有力候補に躍り出た。
木南友輔氏(日刊スポーツ記者)
「新馬戦(8月28日/新潟・芝1800m)を現地で見ていて、その走りからスピード感が伝わってくることはなかったのですが、最後はグングンと後続との差を広げる勝ちっぷりを披露。ワンペースなタイプですが、フットワークが大きいため、見た目以上に速く走れる馬です。続く東スポ杯2歳Sでも好時計で快勝。先々へと期待が膨らみます」
市丸博司氏(パソコン競馬ライター)
「新馬、東スポ杯2歳Sを勝って2戦2勝。いずれも能力の高さを感じさせるレースでした。次走はホープフルSかと思いましたが、年明けになる模様。クラシックに乗っていくのは確実の存在で、今から楽しみです」
土屋真光氏(フリーライター)
「新馬戦では、のちにGI阪神ジュベナイルフィリーズを制したサークルオブライフ(牝2歳)や、1勝クラスのエリカ賞でレコード勝ちした良血サトノヘリオス(牡2歳)らをあっさりとちぎりました。そして、東スポ杯2歳Sも好内容で完勝。この先、父同様の成長があるなら、相当な器かもしれません」

2位もデビュー2連勝で重賞を制したコマンドライン。このあとは、ホープフルSに出走予定。話題の血統馬がどんな走りを見せるのか、注目される。
吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「全兄のアルジャンナよりも馬体重が50kg以上重く、腹袋の大きい筋肉隆々とした馬体を誇示しています。つなぎは短めで柔らかみがあり、一瞬の脚よりは腹袋の大きさを生かしたスタミナとスピード持続力が武器。立ちツメの脚元やかき込みの利いた走法からして、荒れた馬場も難なくこなせるでしょう。
平均的なラップでの体力勝負で最も力を発揮するタイプ。前走のサウジアラビアロイヤルCの時のように前で受ける形となれば、長い直線でもかなりの粘りを見せることができます。まだ完全に仕上げていない段階で2戦2勝。これから馬がしっかりして馬体の輪郭が明確になってくれば、そのパフォーマンスは一段とアップするのではないでしょうか」
木南氏
「国枝栄調教師がぞっこんのディープ産駒。ノーザンファームの生産馬ゆえ、今後気になるのは(他馬との絡みで)クリストフ・ルメール騎手がどこまで継続騎乗してくれるか。そういう意味でも、ホープフルSでその真価が問われます」
3位は、デビュー以来無傷の3連勝で重賞2勝を挙げているセリフォス。3戦すべてマイルで、次戦もマイルGIの朝日杯FSに挑む。
市丸氏
「ここまで3戦3勝。前走のデイリー杯2歳Sでは、この世代最上位の指数を叩き出しました。将来性はともかく、現時点では非常に高い能力を示しています。その能力は、朝日杯FSに出走予定のメンバーのなかでもトップと言ってもいいでしょう。このレースも難なくクリアするようなら、今後の路線も含めて、興味深い存在になることは間違いありません」
4位は、ドレフォンの初年度産駒となるジオグリフ。同馬も2戦無敗で重賞の札幌2歳Sを制覇。過去2戦は1800m戦だったが、2歳GIではマイル戦の朝日杯FSに出走予定だ。
土屋氏
「新馬戦(6月26日/東京・芝1800m)を好時計で勝利。その後、2着のアサヒ(牡2歳)が東スポ杯2歳Sで2着、3着のアスクビクターモア(牡2歳)がリステッド競走のアイビーSで3着と好走していることを考えれば、レースレベルも秀逸だったと言えます。東京と札幌と、異なる競馬場で結果を出したことでも能力の高さがうかがえます。今後のポイントは、父の現役時代の戦績からして、どこまで距離を延ばせるか、といったところでしょうか」
5位には、前走でGIII京都2歳S(11月27日/阪神・芝2000m)を勝ったジャスティンロック(牡2歳/父リオンディーズ)が入った。今後は年明け、GII弥生賞(3月6日/中山・芝2000m)からの始動を予定している。
木南氏
「京都2歳Sでは、後方から大外を回って他馬をねじ伏せました。海外での購入が目立つオーナーですが、北海道セレクションセールの落札馬にお宝がいた......という感じでしょうか。母系は1990年代に活躍した名牝ホクトベガと同じ。今後の日本ではエピファネイア産駒の活躍が見込まれていますが、同じシーザリオの子であるリオンディーズ産駒の躍進もあるのか、注目の1頭。同時に、シーザリオの血のすごさを改めて痛感させられます」
現状、牡馬も牝馬と同様、新馬、未勝利戦を勝ち上がったばかりの馬のなかにも、素質馬がたくさん控えている。年明け以降のオープン戦や重賞の結果次第では、ランキングがガラッと変わる可能性が大いにある。ともあれ、まずは今後のランキングを大きく左右するであろう、年末の2つのGI戦に注目である。