年明けの親善試合に臨む、最新の日本代表メンバーが発表された。新顔も入ったが、どこかに引っかかるものもある。日本代表メン…
年明けの親善試合に臨む、最新の日本代表メンバーが発表された。新顔も入ったが、どこかに引っかかるものもある。日本代表メンバー発表にのぞく期待と不安を、サッカージャーナリスト・大住良之がひも解く。
■楽しみな武藤、稲垣、脇坂
楽しみなのは、大迫勇也とともにこの夏に欧州から帰国し、シーズン後半のJリーグで大迫(4得点)を上回る5得点を記録した武藤嘉紀、そしてともに今季のJリーグでベスト11入りしたMF稲垣祥と脇坂泰斗だ。
半年間大迫とのコンビを磨いてきた武藤には、大きなアドバンテージがある。強さ、速さ、決定力というストロングポイントを日本代表で生かすことができれば、残り4試合となったワールドカップ・アジア最終予選の終盤戦で大きな力になることができる。
稲垣はしっかりと中盤を支えながら強烈なミドルシュートを武器にした得点力が持ち味。今季のJリーグでは8得点を記録している。守田英正(サンタクララ)が出場停止の中国戦では、「代役」として十分期待することができる。
そして脇坂は、今季のJリーグで最も安定して力を発揮したMF。最高クラスの技術と試合の読みの力を生かし、チャンスメーカーとして期待したい。10月以来代表のレギュラーとなったMF田中碧(デュッセルドルフ)とはことし前半までMFでコンビを組んでおり、こちらも守田の「代役」の有力な候補だ。
■一番の期待は今季J1得点王
しかし今回のメンバーで誰よりも燃えているのはFW前田大然だろう。今季のJリーグ得点王。爆発的なスピードとゴール前にはいりこむタイミングの良さで23得点を記録した。11月の2試合にも日本代表メンバー入りしていたが、ベトナム戦、オマーン戦とも、23人のベンチ入りメンバーからもれ、スタンドでの観戦という悔しさをかみしめた。
だが欧州組を含めて現在の日本のストライカーで最も「ゴール」のにおいがするのは、セルティックでスターとなったFW古橋亨梧とこの前田をおいていない。前田が攻撃陣に加わることにより、停滞ぎみの日本代表の攻撃が劇的に変わるのではないかと、私は期待している。それだけに、このウズベキスタン戦で目に見える活躍をしてほしいと思う。
だが不確定要素もある。前田はこの冬に欧州に移籍する可能性が高いことだ。1月に移籍が決まったら、少なくとも、ウズベキスタン戦への招集はできなくなる。そして新クラブに慣れるためにワールドカップ予選2試合への招集も見送られることになるかもしれない。
■期待以上に強く込み上げる懸念
しかし私がこのウズベキスタン戦で最も強い懸念を抱くのは、こうしたことではない。22人が選ばれたが、そこには明らかにチーム内での状況の違いがあり、11月のメンバー外から中国戦とサウジアラビア戦のメンバーにはいることは、実際には至難の業ということである。極端な言い方をすれば、12人の選手たちは、11月のメンバー10人だけでは練習も試合もできないのでポジションの穴埋め、あるいはトレーニングパートナーの意味合いが強い。それを選手たちはどう感じ、どう割り切ってこの代表活動に臨むのだろうか。
思い浮かぶのが、2004年の悪夢だ。2月18日のワールドカップ予選(ホームのオマーン戦)に備えて、日本代表は2月12日にイラクとの親善試合を組んだ。イラク戦には24人の選手が臨んだのだが、「欧州組」はMF中村俊輔(レッジーナ)とFW柳沢敦(サンプドリア)の2人だけだった。しかし6日後のオマーン戦には、MF中田英寿(パルマ)、MF稲本潤一(フルハム)、FW高原直泰(ハンブルガーSV)、そしてFW鈴木隆行(ヒュースデン・ゾルダー)の4人が帰ってきて、鈴木以外の3人が先発、この当時のワールドカップ予選ではベンチ入りメンバーが18人だったため、イラク戦後に5人が外され、オマーン戦では残る23人のうち5人がメンバー外となった。
■驚くほど似ている現在の「疎外」代表選手たちの心情
「事件」は、イラク戦を前にした2月9日に起こった。茨城県鹿嶋市で合宿中のメンバー8人がスタッフに断らずに夜間外出をしたのだ。その日に判明したわけではない。後にジーコ監督によって処分された8人のうち、DF山田暢久(浦和レッズ)はオマーン戦に右サイドバックとしてフル出場し、MF小笠原満男(鹿島アントラーズ)とFW久保竜彦(横浜F・マリノス)は交代出場した。そして久保は、0-0で迎えた後半のアディショナルタイム(93分)に値千金の決勝ゴールを挙げている。
発覚したのは、3月1日に発売された写真週刊誌によってだった。8人は鹿嶋市内のキャバクラに行き(山田暢久は入店せず)、他の客とのトラブルが起きたことで「週刊誌ざた」になってしまったのだ。ジーコ監督は「規律違反を許すことはできない」と、次の代表戦、3月31日のアウェー、シンガポール戦には、この8人を招集しなかった。
もちろん、現在の日本代表がこんな規律違反をするとは想像できない。森保一監督が選ぶからには、全員がしっかりとしたプロフェッショナル意識をもった選手のはずだし、何より、昨年来のコロナ禍のなかで外出や会食などを極端に制限され、ときには「バブル環境」のなかで周囲と一切接触せずにトレーニングや試合を続けてきた強い目的意識の持ち主ばかりである。無断外出などありえることではない。
しかし選手の心理状態を考えれば、来年1月のウズベキスタン戦に臨む「国内組日本代表」と、2004年2月に鹿嶋市に招集された選手たちは驚くほど似ているのではないか。