チャンピオンズリーグ(CL)は、グループステージ第5節までに、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマン(PSG)、…
チャンピオンズリーグ(CL)は、グループステージ第5節までに、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマン(PSG)、リバプール、ユベントス、チェルシー、レアル・マドリード、インテル、アヤックス、マンチェスター・ユナイテッド、バイエルンの10チームがベスト16入りを決めていた。最終第6節の戦いを経て、アトレティコ・マドリード、スポルティング、リール、ザルツブルク、ベンフィカ、ビジャレアルの6チームがそこに名前を連ねることになった。
15チームの内訳は、イングランド4、スペイン3、イタリア、フランス、ポルトガル各2、オランダ、ドイツ、オーストリア各1。また、6戦全勝で通過したチームは、リバプール、アヤックス、バイエルンの3チームになる。
各組とも総じて僅差だった。競った好試合が多かった。ヤング・ボーイズ、クラブ・ブルージュ、シェリフ・ティラスポリなど、泡沫候補と目された伏兵が健闘。格上相手に番狂わせを含む善戦を展開した。チーム戦術もさることながら、そこで目についたのは、16強入りしたクラブでも通用しそうな個人能力に優れた選手だ。「サッカー」のレベルが上がっていることを実感した瞬間である。
CLに今季、南野拓実(リバプール)ひとりしか送り込んでいない日本サッカーが心配にもなったが、それはともかく、非ビッグクラブの健闘は、逆に日本人を勇気づける意味合いがある。番狂わせはどのようにして発生するか。そのメカニズムを知ることが、W杯で列強と対戦する際、生きのびる知恵になる。イングランド勢やレアル・マドリード、バルセロナなど、ともするとビッグクラブの動向に目はいきがちだが、等身大のチームの戦いぶりにこそ教材は溢れている。

ミラン戦に先発、後半アディショナルタイムまでプレーした南野拓実(リバプール)
その最右翼がアヤックスだ。グループステージを6戦全勝で通過したことは、優勝、準優勝に輝いた1994-95、1995-96シーズンにも、ベスト4入りした2018-19シーズンにもなかったクラブ史上初のケースになる。グループステージ最終戦では、すでに首位通過を決めていたにもかかわらず、スポルティング相手に4-2で打ち勝っている。地力を誇示するような勝利で、決勝トーナメントへの期待感を振りまいた。
【優勝に最も近い3チーム】
グループステージの得点王(10点)に輝いたCFセバスティアン・ハラーを真ん中に、アントニー、ダビド・ネレスというブラジル人の小柄なウイングがその脇を固める3トップと、伝統のパスワークが絡み合う攻撃は、目にも鮮やかに映える。
イングランド勢の興隆、スペイン勢の衰退という流れの中で、アヤックスの台頭は見逃されがちな出来事になるが、立ち位置的に日本が注視すべきはこちらになる。参考にすべきサッカーだと言いたくなるが、同じ日、バイエルンに0-3で敗れたバルセロナについても、視線を向けたい。
アヤックスとバルサの関係は、1971年、アヤックスを欧州一に導いたリヌス・ミケルスがバルサの監督に就任したことに端を発する。言わずと知れたFIFA認定の「20世紀の最優秀監督」である。その2年後、ミケルスの後を追うようにヨハン・クライフがバルセロナを訪れ、選手として活躍。引退後、バルサの監督に就任したことで、両クラブはすっかり親戚関係になった。チャンピオンズカップ(現在のCL)を3連覇したアヤックスのスタイルが、ほぼそのままバルサのサッカーの根幹となったわけだ。
だが、本家はアヤックスだ。バルサは分家。バルサがCLグループステージで脱落し、アヤックスが6戦全勝で16強入りを決めたいま、その関係をあらためて想起させられる。初心に返ろうとするならば、学ぶべきは現在のアヤックス。と言いたくなるほど、エリク・テン・ハーグ率いるアヤックスは、模範的なサッカーをしている。
ブックメーカー各社の予想に目を凝らせば、そのアヤックスはレアル・マドリードを抑え、優勝予想の7番手につけている。1位から6位まではマンチェスター・シティ、バイエルン、リバプール、PSG、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッドだ。この順位は、決勝トーナメントの組み合わせ抽選後、多少変化するものと思われるが、筆者もこの序列には99%同意する。
もっと言えば、マンチェスター・シティか、バイエルンか、リバプールかだと思う。本命視されているシティは、ジョゼップ・グアルディオラを介せばアヤックスと親戚関係のクラブになる。グループステージの1位同士の対戦がない決勝トーナメント1回戦はともかく、準々決勝以降で拝みたいカードになる。
【南野のポジションの適性も明らかに】
3番手につけるリバプールには、日本人唯一のチャンピオンズリーガー南野がいる。第6節のミラン戦では後半の追加タイムに、マックス・ウォルトマンと交代するまで、90分以上ピッチに立った。また、その前の第5節のポルト戦ではフルタイム出場を果たしている。事実上の消化試合とはいえ、この経験は大きい。リバプールがCL決勝に進出し、南野がそのピッチに立つ可能性はどれほどか。CLはプレミアとは異なり、選手交代5人制で行なわれるので、チャンスは膨らんでいる。
その2試合通しての南野の印象は、そつなくこなしたという感じだ。ミラン戦は4-3-3の左インサイドハーフ、ポルト戦は0トップと呼ぶべきCFでの出場だった。後半のなかばから右ウイングに回ったが、左ウイングで出場することが多い日本代表とは、少しばかり異なる姿を見せた。
ともすると、どこでもできる多機能的な選手に見えるが、4-3-3ならばインサイドハーフか0トップが適任であることが、再確認されたような気がする。日本代表では左ウイングを任されても、居心地の悪さを覚えるのか、真ん中付近で構えたがるが、リバプールでは少なくともポジションには忠実だった。苦手そうな右ウイングに回されても、ポジションを守り、相手の左サイドバックに圧力をかけようとした。日本代表で許されてもリバプールでは許されないものが見えた気がした。
リバプールでは、その右ウイングを担当するモハメド・サラーの好調さが目立つ。次回のバロンドールの有力候補と筆者は見るが、今年の投票ではなんと7位に沈んだ。ロベルト・レバンドフスキを抑えてリオネル・メッシが受賞したことが、騒ぎになっているが、サラーの7位にはそれと同じくらい違和感を覚える。
このサラーに代表される左利きの活躍が目立ったグループステージでもあった。第6節の対バルサ戦、前半43分に正面からズドーンとミドルシュートを蹴り込んだレロイ・ザネ(バイエルン)。前述のアントニー(アヤックス)。そして極めつきはマンチェスター・シティで、ベルナルド・シウバ、フィル・フォーデン、リヤド・マフレズ、オレクサンドル・ジンチェンコと、スタメンクラスの左利き選手を4人も擁している。
PSGのメッシ、アンヘル・ディ・マリアも忘れるわけにはいかない選手になるが、相手の逆を取るプレー、あるいは左右のバランスを整えることが勝利の近道だと考えると、決勝トーナメントは、この左利きの選手たちの活躍に注目してみたくなる。