朝倉未来インタビュー前編 11月27日、穏やかな土曜日の昼下がり、場所は東京のど真ん中。会場内ではバンテージを撒いた選手が行き交い、スタッフも忙しなく動いている。有観客の興行とは別の緊張感が漂っていた。 薄暗い場内の真ん中に浮かび上がる金網…

朝倉未来インタビュー前編

 11月27日、穏やかな土曜日の昼下がり、場所は東京のど真ん中。会場内ではバンテージを撒いた選手が行き交い、スタッフも忙しなく動いている。有観客の興行とは別の緊張感が漂っていた。

 薄暗い場内の真ん中に浮かび上がる金網のオクタゴン。そこを舞台に、1分間最強を決める『BreakingDown』の第3回大会が行なわれた。



第3回『BreakingDown』終了後にインタビューに応じた朝倉未来 photo by Shinozaki Takahiro

 視聴者の声を積極的に取り入れてバージョンアップしてきた同大会。今大会では新たな企画として、『ミドル級 (84 kg 以下)1Dayトーナメント』を開催し、賞金30万円をかけて8名が参戦。その他、ワンマッチも含めた合計20試合は、その多くがバチバチの打撃戦となった。

 出場する選手たちはボクシング、空手、日本拳法、テコンドー、柔術など、さまざまなバックボーンを持った、プロ3試合以内の格闘家たち。「1分1ラウンド」で決着する新しい総合格闘技エンターテインメントは、予想ができない展開が魅力となっている。

 アドバイザーは格闘家、YouTuberとしても人気の朝倉未来と弟の海で、大会当日は解説も務めている。第3回大会終了後、朝倉未来に大会の総括と今後の展望を聞いた。

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――今大会は多くの試合が激しい殴り合いになりました。『BreakingDown』のよさが出た大会だったと思いますが、印象はいかがですか?

「(AbemaTVなどの)視聴者の意見も取り入れ、回を追うごとに楽しい大会になっているとは思いますが、もっと膠着(こうちゃく)がない大会を目指しています。基本的に打撃戦が面白いと思っているので、そういった試合を増やしていきたいですね」

――今回は全20試合中、打撃のみのルールで行なわれたのは2試合でしたが、立ち技の試合を増やすという考えでしょうか。

「そうですね。打撃で劣勢になった場合に組みにいける選択肢があると、そこで膠着してしまうことがある。なので、打撃のみの試合を増やしたいです」

――総合ルールの試合でも、ほとんどの選手がパンチで倒しにいっていました。技術ではなく、気持ちで向かっていく選手が多かったように感じます。

「これまでの2大会でもそうでしたが、気持ちが強い選手が勝っていますね。積極的に前に出ることができて、パンチがうまい選手は見ていて面白いです」

――初期のUFCやPRIDEのように、選手のバックボーン、キャラクターがわかりやすいのも特徴ですね。

「そこも『BreakingDown』のいいところのひとつで、『どの格闘技が一番強いのか』という異種格闘技になっています。見る方たちがワクワクするような大会になっているんじゃないかと思います」

――今後のテーマはありますか?

「『BreakingDown』の顔となる選手を作っていきたいですね」



注目選手に上げた川島悠汰(左)と丸田喬仁(右)(C)AbemaTV, Inc.(C)BreakingDown

――大会後には、川島悠汰選手(ミドル級1Dayトーナメントの準決勝敗退)など注目する選手の名前も挙げていました。川島選手は敗れはしたものの、入場時のアピールなども印象に残る選手でしたね。

「彼は23歳と若い選手なので、これからもっと実力もついていくと思います。その川島選手に勝った丸田喬仁選手は、総合格闘技歴4カ月なのに打撃が相当よかったですし、大きな期待感があります。打撃のみのルールになったらより強みが生かされるでしょう」

――そんな2人を差し置いてトーナメントを制したのは、現役プロレスラーの井土徹也選手でした。

「記念すべき初代王者ですね。ただ、ミドル級にはもっと強い人がゴロゴロいるはず。井土選手には『BreakingDown』のチャンピオンとして、しっかり防衛していってほしいです」

――選手たちの格闘技歴には差がありますね。選手選考や組み合わせにはどういった基準があるんですか?

「組み合わせはだいたい格闘技歴が合うようにしています。選手選考については、たくさんの応募があるんですけど、これまでの大会に出て面白かった選手はすぐに採用します。あとはプロフィールが面白い選手ですね」

――今回も「元プロ野球選手」の相内誠選手(元西武)や、「先生」といったキャッチーな肩書きの選手が参戦していました。キャラクター、バックボーンも大事ですね。

「ただ、今のやり方だと、映像を見ている人は選手たちの人生やストーリーがわからないんじゃないかと。今後は煽りVTRを作るなどして、選手に感情移入できるような演出を取り入れていこうと思います」



元西武の投手、相内誠は右ストレートKO勝利を収めた(C)AbemaTV, Inc.(C)BreakingDown

――次回以降の構想についても聞かせていただけますか?

「ここまでは2カ月おきに大会を開催しているので、対戦カードの質という点では微妙になってきている部分もあります。少し期間を空けて、豪華な対戦カードを組んでみようかなと思っています」

――今大会は知名度や話題性を排除し、ゼロからスター選手を発掘することに重点を置いたとのことですが、「豪華なカード」とはどういった組み合わせになりそうでしょうか。

「過去に面白い試合をした選手や、別の競技で成功している選手などを組み合わせてみようかと考えています。あと、演出も含めた"豪華さ"がある大会もやってみたい。例えば、ケージの周りをパーティー会場のようにしたり、選手を金網で囲むのではなくて壁が少しあるだけのリングにしてみたり。視聴者により楽しんでもらえるように、背景をCGにするといったことも面白いんじゃないかと思います」

――なるほど、かなり広い意味で「チャレンジしていく」ということですね。

「今は視聴者の声がダイレクトに聞ける時代なので、身内だけで考えているよりも多角的に物事が見られる。大会の動画の再生回数からしても、何百万人という人たちが見てくれているようですが、そういったファンの意見を聞きながら、よりよいものにしていきたいです」

――大会はとてもテンポがよく、高いテンションを維持しながら次々と試合が進んでいく印象でした。今後、観客を入れて開催する可能性はありますか?

「先ほども言った"豪華なパーティー会場"にするようなイメージはあって、少人数は入れる可能性はありますけど、あまり多くの観客を入れるのは時代に合っていないように感じます。これまではコロナ禍ということもあって無観客でやってきましたが、PPV(ペーパービュー)の手ごたえもありますから」

――次回、第4回大会は年明けになりますが、そこでやりたいことは?

「いろんな階級のトーナメントはやってみたいですね。これから、大会と共に選手も魅力を増していくと思うので、殴り合いに自信のある方にはぜひ参加してもらいたいです」

(後編:格闘技は「悪影響があるのに、大好きな彼女みたい」>>)