朝倉未来インタビュー後編 (前編:「どの格闘技が一番強いのか」格闘エンタメの展望>>) 時代の寵児、朝倉未来。『THE OUTSIDER』で2階級制覇を果たし、2018年8月に『RIZIN』に参戦すると怒涛の7連勝を飾って中心選手に。You…

朝倉未来インタビュー後編 (前編:「どの格闘技が一番強いのか」格闘エンタメの展望>>)

 時代の寵児、朝倉未来。『THE OUTSIDER』で2階級制覇を果たし、2018年8月に『RIZIN』に参戦すると怒涛の7連勝を飾って中心選手に。YouTubeにも活躍の場を広げ、チャンネル登録者数は200万人超えている。

 今年は、6月の東京ドーム大会でクレベル・コイケと対戦し、三角絞めで初の一本負けを喫した。しかし再起戦となる10月の『RIZIN LANDMARK』で萩原京平に完勝。本日13時からの第二弾カード発表が注目される大晦日の『RIZIN.33』への参戦はあるのか。そして、朝倉未来の最終目標とは――。



次回のRIZINやその後についての動向が注目される朝倉未来

――大晦日の『RIZIN』への参戦は現時点では未定ですか?

「そうですね。左ひざのケガもありますし、練習や減量を含めて何とも言えないです」

――このところ、減量はほぼ水抜きなしで合わせていると聞いています。大会に向けた体づくり、調整の方法は変わってきましたか?

「直近の試合はほとんど水抜きなしでいけましたが、もし大晦日に出るとなったらやらざるを得ない。過酷な減量になると思います。普段から追い込んではいるので、事前にオファーをいただいている場合であれば、水抜きはあまりせずに試合に出られる状態にはなっていますけどね」

――現在、トレーナーは5人体制だそうですね。

「それぞれ違った種目の方で、みなさん言うことも違ったりしますけど(笑)。自分でどの意見を取り入れるかを決めながらやっています」

――クレベル戦の前までのトレーニングは、ほぼスパーリングのみだったとのことですが。

「クレベル戦の1カ月前から、ランニングとミット打ち、ウエイトトレーニングを始めました。それまでは、朝の1時間のスパーリングだけで勝てていたんですが、今はスパー以外のトレーニングもやっていて、得るものもかなり大きいと感じています」

――フィジカル面はトレーナーの土居進さんの指導で、エルゴメーターやパワーマックスなど過酷なトレーニングもされているようですね。

「今日も、それぞれのトレーニングを2往復ずつやってきたんですけど、疲労で眠たくなるくらいキツいですよ。土居さんは、ちょっとおかしいくらいハードです(笑)」

 10月24日に開催された『RIZIN.31』で、王者・斎藤裕が、RIZIN初参戦の牛久絢太郎にTKOで敗れて王座交代。群雄割拠の様相を呈してきたRIZINフェザー級戦線。RIZIN榊原信行CEOは、「牛久vs.朝倉未来に一足跳びに持っていく感じではないです」とし、「来年、ワールドグランプリという形でフェザー級は面白いんじゃないか」と、トーナメント開催を示唆している。

――(2020年11月に判定負けを喫した)斎藤選手、クレベル選手へのリベンジか、フェザー級トーナメントか。先日、「フェザー級トーナメントには出ずにUFCと交渉」という発言もありましたが?

「UFCは、行きたいと思うだけで行ける場所ではないですけどね。RIZINのフェザー級トーナメントは......トーナメントをするまでもないんじゃないかと。頭角を現している選手はいるので、やるなら4人でとかでもいいのかなと思うし、トーナメントをしなくても頂点を決められると思うんです」

――バンタム級トーナメントのように、16人まで広げる必要はないと?

「トーナメントの一回戦でケガをする可能性もあるじゃないですか。だったら強い者同士、成績がいい選手だけでやったほうが、話は早いと思うんですよ」

――最近は選手同士が、SNSでトラッシュトークを展開して大会までを盛り上げていく傾向があります。朝倉選手は、平本蓮選手とTwitterなどで舌戦を展開されていますね。

「平本は正直、"オモチャ"って感じで眼中にもない。格闘家としてのレベルも全然違うし、それはみんなもわかっていると思います。だから茶番だと思ってもらえたら(笑)。

 でも、平本はもうちょっと実績を積んだら面白い選手になるかもしれませんけどね。そこは彼次第です。現状は、大きいことは言うのに、昨年の大晦日の試合で手も足も出ずに負け、そこから1試合もしてない。僕からすると、今の彼の職業は"ミット打ち"です」

――朝倉選手は自身のことも含め、物事を客観的な視点で見ていますね。

「主観的にも客観的にも見ようとしているので、あんまり恥ずかしいことは言わないんですけど、平本は自分を棚に上げる能力に優れすぎていて、『それをお前が言うのか』ということも言っちゃう。それも才能だとは思うんですけど、あれは僕にはできないです」

――発信する分だけ、当然リスクも背負うわけですよね?

「キツいと思いますよ。例えば、今後の対戦カードが微妙な相手だったら、『あれだけデカいことを言っていたのにどうなんだ』と言われるでしょうし。そのへんは平本も自分で自分を追い込んでいるんでしょうし、リスペクトしています。だから、今後、誰とやるのか楽しみですよ」



リラックスした表情で今後について語った

――平本選手に限らず、影響力が大きい朝倉選手に絡むのは、リターンの大きさを考えてという部分もありそうでしょうか。

「売名だと思いますよ。僕と試合をした場合も"負けて当然"なので、相手からしたらメリットしかない。力量が離れた選手に噛みついて、挑んで負けても選手としては終わりませんから」

――朝倉選手は、『RIZIN』参戦後、ものすごい勢いでスターダムを駆け上がってきたわけですが、ターニングポイントとなった試合はありますか?

「RIZINでの初試合である(2018年8月の)日沖発戦が一番ですね。それ以降は、ルイス・グスタボ戦、矢地祐介戦。そのへんの試合は、上に行くために落とせない試合でした」

――格闘家・朝倉未来としての最終目標はありますか?

「クレベル戦の前からさまざまなレーニングを始めて、明らかに自分が変わってきているというか、やっと効果が出始めているので、まずは(斎藤、クレベルの)2人にリベンジしたい。とりあえず『RIZIN』フェザー級の中で一番強い選手になりたいですね。そうなった先に、また新しい景色が見えてくるんじゃないかと」

――リベンジする舞台がどこになるのかわかりませんが、大晦日だとしたら時間がありませんね。

「本当に期間が短くなるので、考えものですね。やるんだったらちゃんと準備したいですし、中途半端にやって負けたらすごく後悔しそうなので。ファンの中にも『大晦日は、出ないでほしい』という人がいる一方で、『出てくれ』という人もいるので判断が難しいです」

――朝倉選手のファンは、格闘技を長年見て来たコアな層と、YouTubeなどから入ってきたライトな層が混在していますから、さまざまな意見がありそうですね。

「僕の言動をすべて正しいと思っているファンもいれば、格闘技は大好きだけど僕のことは大嫌いなアンチもいる。大晦日に出てほしいと思っているのは、そのアンチが多い印象です。僕が負けても勝ってもどちらでもいいけど、格闘技は盛り上がってほしいという人たちでしょうから」

――朝倉選手は現在29歳。以前は「30歳で引退」という発言をされていましたが、考えは変わってきましたか?

「30歳でやめることもできると思います。正直なところ、いろんなビジネスを確立してを富を築くことができましたから、路頭に迷うことはないはず。でも、先ほども言ったように自分が成長し始めていることはわかっていますし、やっぱり格闘技が好きなので、やめられないんじゃないかと思っています」

――フィジカルトレーナーの土居さんも、しっかり効果が出るまで3年くらいは必要とおっしゃっているようですね。

「そうなんですよ。今でもトレーニングの効果は出てきているんですけど、『続けていけばもっと出るんじゃないか』となりますよね。格闘技は、中毒。依存性があるんですよ。例えて言うと、自分に悪い影響があるのはわかっているのに、大好きな彼女みたいな(笑)。別れたら寂しくなりそうなんですよ。だから、しばらくやめられないかもしれないですね」

――では、「朝倉未来」というひとりの人間としての目標はありますか?

「"やりがい"を持って生きていきたいですね。これまでも、すごく周りの人が助けてくれることもあって、やりたいことを実現してきています。世に出してないビジネスの案もあります。でも、結局は格闘技を超える刺激は存在しない。それがなくなった時にどうなるかは、ちょっとわからないですね」

――人生の中心にあるのは、あくまで格闘技?

「そうですね。今まではリスクを背負っていろんな挑戦をしてきましたが、成功してしまったらその時点でリスクはなくなってしまう。だから今の僕は、格闘技がなくなったら将来安泰なサラリーマンに近い感じなんじゃないかと。お金に困ることがないのは大事だけど、僕は刺激中毒なんで。ビジネスを確立した状態で格闘技から離れてしまったら、その後の人生は楽しいのかな、と考えることはあります」

――刺激中毒といえば、ケンカに明け暮れていた時代に、スリルを味わうために50mの鉄塔を登った、なんてエピソードもありますね。

「ケンカじゃなくても何でもいいから、命をかけた遊びが楽しかったんです。それに近いのが格闘技。それを超えるものがあるのか......全財産かけたギャンブルとかじゃないとその域にはいかないんじゃないかと」

――昔も今も、そしてこれからも、刺激を求めていくのは変わらない?

「何もない状態から、まったく別のもので成功を目指して挑戦していく。そういうのが面白いと思っています」

 自らが設定した人生の目標設定を次々とクリアし、新たな刺激を求めて進む朝倉未来。闘いの螺旋からは、当分降りられそうもない。

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