ヤクルトの日本一で幕を閉じた2021年のプロ野球。今シーズンいっぱいで多くの名選手がユニフォームを脱ぎ、その後の動向に…

 ヤクルトの日本一で幕を閉じた2021年のプロ野球。今シーズンいっぱいで多くの名選手がユニフォームを脱ぎ、その後の動向にも注目が集まっている。

 引退のニュースが次々と流れてくるなかで、ふと「今年の引退選手でチームを作ったら強いのでは?」という疑問が。それぞれの活躍と成績を振り返りながら、2021年引退選手でオーダーを組んでみた。(引退の情報は2021年12月6日時点)


プロ野球、メジャーでも活躍した松坂大輔

 photo by Kyodo News

【投手陣は"平成の怪物"など実績十分の3人】

<先発・松坂大輔>(西武、レッドソックスなど 41歳/右投)

 先発は"平成の怪物"。第一次西武時代は完投・完封数もリーグ屈指で、WBCでは2度のMVPを獲得するなど「エース」と呼ぶにふさわしい投手だった。

 高卒1年目にして16勝(5敗)を挙げ、新人王、最多勝利などのタイトルを獲得。パ・リーグの投手として歴代最多となる7度のゴールデングラブ賞に輝いている。8年間で7度の2ケタ勝利を記録し、2006年オフにレッドソックスと契約。2007年は15勝(12敗)を記録し、ワールドシーリーズでは日本人投手として初勝利を飾った。

 2008年も18勝(3敗)をマークしたが、翌年からケガに苦しんで勝利数が減少。2015年に日本球界に復帰してからは登板できない時期が続いたものの、ソフトバンクから中日に移籍した2018年に6勝(4敗)を挙げてカムバック賞を獲得し、ファンに勇気を与えた。

 引退後は日本シリーズの解説を務めるなど活躍。指導者の道も含め、さまざまな栄光と苦悩を経験した松坂の今後に注目が集まる。

 大竹寛(広島、巨人 38歳/右投)

 先発のイメージが強いが、巨人がリーグ優勝を果たした2019年に8ホールド、2020年に16ホールドを記録。2017年の最優秀中継ぎ投手(39ホールド)である桑原謙太朗(阪神など)と迷ったが、実働年数、ロングリリーフへの対応なども考えて大竹に。

 2000年代の広島では負け数が勝ちを上回ることも多かったが、変化球を駆使しての「打たせてとる」投球で、2009年には球団記録となる43回2/3無失点を記録。2012年からは2年連続で2ケタ勝利を記録し、FAで巨人に移籍した。移籍後は思うように勝ち星を伸ばせなかったが、キャリア終盤にリリーフで輝きを放った。

 私生活では大のラーメン好きとしても知られ、引退会見では報道陣への差し入れとして、自身の通算の負け数(101敗)と同じ数のカップラーメンを用意。来季は巨人の巡回トレーニング統括補佐として活動するが、持ち前の明るいキャラクターでもチームを支えるだろう。

 デニス・サファテ(広島、ソフトバンクなど 40歳/右投)

 投手陣の最後を託すのは、シーズン最多セーブ記録を持つ助っ人クローザー。来日1年目の2011年は広島で35セーブを挙げ、西武を経て2014年にはソフトバンクへ。2015年から3年連続でセーブ王に輝いている。

 150キロ後半のストレートとフォークで多くの三振を奪う一方、四球や被本塁打が少なく、2014年から4年連続で「60登板以上・防御率1点台」と抜群の安定感を誇った。特に圧巻だったのは2017年。レギュラーシーズンでは66登板で防御率1.09、NPB最多記録となる54セーブを記録した。

 同年のDeNAとの日本シリーズでは、第2、3戦でセーブを挙げ、第6戦は9回表から登場して3イニングをピシャリ。11回裏のサヨナラ勝ちを呼び込んだ快投は「サファテの36球」とも呼ばれた。その活躍で日本シリーズMVPに輝き、レギュラーシーズンMVPとダブル受賞している。

 翌年からは股関節のケガに悩まされ、手術を行なうも復活はならず。それでも引退発表後には、その功績を称える声が相次いだ。

 鳥谷敬(阪神、ロッテ 40歳/右投左打)

「3番・ショート」の印象も強いが、巧みなバットコントロール、抜群の選球眼で出塁率も高く(2011年は最高出塁率、2013年から2年連続で4割越え)、なおかつ俊足ということからリードオフマンに。

 球界屈指の守備の名手でもあり、プロ入り1年目から1軍で起用され、翌2005年から2017年までシーズン全試合出場を果たすなど体も強かった。2013年のWBCでは、チャイニーズタイペイ戦の1点ビハインドで迎えた9回表2アウトから、2塁への盗塁を決めて井端弘和の同点タイムリーを導き、日本中のファンを熱狂させた。

 2017年に2000本安打を達成するも、翌年から出場機会と共に打撃成績も落ちていく。2019年には事実上の引退勧告を受けたが、現役にこだわって阪神を退団し、翌年の春にロッテ入団が決定。主に代打での出場ではあったが、若手の見本としてもチームに貢献した。

 引退後の去就は未定だが、将来的に指導者になることへも意欲を見せており、何年か後に再びユニフォーム姿が再び見られる日が来るかもしれない。

 小窪哲也(広島、ロッテ 36歳/右投右打)

 内野をすべて守れるユーティリティープレーヤー。粘り強さと巧打が売りで1年目の2008年から98試合に出場し、その後は激しいスタメン争いでレギュラー定着とはならなかったが、代打や守備固めも含めて長く広島を支え続けた。リーダーシップにも優れ、広島では2016年から選手会長を2年務めてチームをリーグ優勝に導いている。

 2020年には自由契約となり指導者の打診を受けたものの、視野を広げるために他の球団でもプレーしてから指導者になりたいという意向で現役続行を決意する。しばらく他球団からオファーはなかったが、独立リーグを経て2021年8月にロッテと契約し、NPBに復帰。ロッテでは18打席1安打も、その1安打は本塁打だった。

 引退後、広島で来季の一軍内野守備・走塁コーチを務めることが発表された。他球団でも野球を学んだ"リーダー"が、その経験を古巣に還元する。

 長谷川勇也(ソフトバンク 36歳/右投左打)

 ソフトバンクが誇るヒットメーカー。通算76本塁打も記録し、2009年から5年連続で盗塁数が2ケタと俊足でもあった。ドラフトは5位指名も、プロ入り3年目の2009年からレギュラーに定着。秋山幸二監督に重宝された。

 キャリアの最高潮を迎えたのは2013年。全試合に出場して198安打を放ち、球団記録を更新して最多安打のタイトルを獲得。交流戦では打率.418でMVP、打率.341で首位打者にも輝き、ベストナインにも選ばれた。

 2014年も活躍したが、同年9月に右足首を痛めてからは代打での起用が多くなる。その後は手術とリハビリを繰り返しながらも勝負所での一打で存在感を放ち続けた。体の状態に限界を感じ、今年10月に引退を発表。来季からはソフトバンクの一軍打撃コーチとして、次なる好打者を育てていく。

 雄平(ヤクルト 37歳/左投左打)

 最速151キロを誇る左腕として2002年のドラフト1位で入団。1年目に初勝利を記録したが、その後は制球難もあって勝ち星を伸ばせず、2009年オフに打者への転向を決意した。

 2年ほど二軍で力をつけ、2012年からは一軍で活躍。俊足なため1番などで起用されることもあったが、2014年に持ち前のパワーを生かしたフルスイングで本格開花。同年は4番も務めるなど、打率.316、23本塁打、90打点を記録した。

 その後も強肩・強打の外野手として活躍したが、2020年から出場機会が減り今年9月に引退を発表。引退試合の広島戦ではライトで途中出場し、有終のヒットを放っている。楽天二軍打撃コーチへの就任が決まり、早くも秋季キャンプから指導を行なっている。

 亀井善行(巨人 39歳/右投左打)

 毎年のように力のある選手が加入する巨人において、熾烈な外野手争いのなかで存在感を放ち続けた。勝負強いバッティングだけでなく、打球への反応や送球など守備能力も高く評価されていた名外野手だったが、今回の企画では内野手不足によりファーストでの起用に。

 大きくブレイクしたのは2009年。守備力が買われて日本代表に選ばれ、3月のWBCに出場。レギュラーシーズンでは134試合に出場して142安打、25本塁打を放ち、日本ハムとの日本シリーズ第5戦では、1点ビハインドの9回裏に同点ホームランを放って逆転勝利を呼び込んだ。同年には初のゴールデングラブ賞も受賞している。

 キャリア終盤もレギュラーとしての起用が多かったが、2020年9月の左脚内転筋のケガで麻痺症状が残ったこともあって引退を決意。シーズン終了後、一軍外野守備兼走塁コーチへの就任が発表された。

 中井大介(巨人、DeNA 32歳/右投右打)

 巨人では、長打力があり内外野の守備をこなす選手として長く活躍を期待された。2012年には二軍で打率.323を残し、48打点と116安打で打点王・最多安打の二冠に輝く。しかし一軍ではレギュラー陣の高い壁に阻まれ、2017年にはセカンドで90試合に出場するも翌年は成績を落とし、自由契約となった。

 2018年オフのトライアウトを受けると、右中間への二塁打など3打数1安打、2四球とアピールし、DeNAが獲得を発表した。移籍1年目は開幕一軍で迎え、その後は代打として活躍。今年10月の横浜スタジアムでの巨人戦が引退試合では、代打で登場してライト前ヒット。試合後の引退セレモニーでは両球団の選手からメッセージが送られた。

  藤井淳志(中日 40歳/右投両打)

 遠投で125mを記録する中日の強肩・外野手で、落合博満監督時代から重宝された。スイッチヒッターで1発もあり、通算打率などからも今回は6番でもよかったが、下位打線からのチャンスメイクを考えて7番に。

 2005年の大学生・社会人ドラフト3位で入団。中日では福留孝介以来7年ぶりとなる新人開幕スタメンを勝ち取るも、一軍での出番はなかなか増えず。しかし2008年にはドミニカ共和国のウィンターリーグにも派遣されるなど着実に力をつけ、和田一浩、平田良介、大島洋平など外野手の強力なライバルがいるなかで、2013年から2018年は毎年100試合前後に出場するなどチームに貢献した。

 ファンサービスも積極的に行ない、明るいキャラクターでもファンに愛された。バンテリンドームでの引退試合では、同じく引退を発表した山井大介と共に先発出場。「1番・ライト」の藤井は見逃し三振も、堂上直倫から花束を渡され、中日ひと筋16年のプロ生活に終止符を打った。

 高谷裕亮(ソフトバンク 40歳/右投左打)

 盗塁阻止率が高く、キャッチング能力に長けた"スーパーサブ"の捕手。甲斐拓也が正捕手となってからも、ゲーム終盤に途中出場してゲームを締め、「抑え捕手」と呼ばれるようになる。2017年から3年連続で日本一になった日本シリーズでも、リリーフ陣を巧みにリードした。

 コミュニケーション能力が高いことでも知られ、外国人選手を含めてチームメイトからの信頼も厚かった。晩年は勝負強いバッティングで代打としても活躍しており、戦力外通告を受けてからも現役続行に意欲も見せたが、ユニフォームを脱ぐことを決断。来季は二軍バッテリーコーチを務めることが決まっており、甲斐に続く日本を代表するキャッチャーを育てることを目指す。

1 ショート 鳥谷敬(左)

2 サード  小窪哲也(右)

3 センター 長谷川勇也(左)

4 ライト  雄平(左)

5 ファースト 亀井善行(左)

6 セカンド 中井大介(右)

7 レフト  藤井淳志(両)

8 キャッチャー 高谷裕亮(左)

9 ピッチャー 松坂大輔(右)

中継ぎ 大竹寛 
抑え デニス・サファテ

 クリーンナップが全員左バッターで、スラッガーがいないのは少し寂しい。しかし、ランナーを溜めて1点を積み重ねていき、投手陣がリードを守る戦い方であれば勝機がありそう。

 ここで名前を挙げなかった選手も含め、ファンを喜ばせてくれたすべての引退選手に、感謝を伝えるとともに今後の活躍を期待しています!