トヨタ自動車は6日、同社のモータースポーツ活動「トヨタガズーレーシング」の来季体制発表会を東京都内で開き、F1や仏ルマン24時間レースでも活躍した中嶋一貴(36)が今季限りで現役を引退すると発表した。今後は独ケルンにある欧州拠点「トヨタガ…

 トヨタ自動車は6日、同社のモータースポーツ活動「トヨタガズーレーシング」の来季体制発表会を東京都内で開き、F1や仏ルマン24時間レースでも活躍した中嶋一貴(36)が今季限りで現役を引退すると発表した。今後は独ケルンにある欧州拠点「トヨタガズーレーシングヨーロッパ(TGR-E)」の副会長としてレース活動の運営を担う。

トヨタ自動車の豊田章男社長から花束を贈られた中嶋一貴(トヨタ自動車提供)

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「WEC(世界耐久選手権)のレースドライバーを退くことはすでに発表されていますが、それと同時に、今年いっぱいをもってレーシングドライバーの立場からも退くことを自分自身で決めました。この場で発表させていただけること、本当に感謝しています」

 11月に開催されたの世界耐久選手権(WEC)最終戦「バーレーン8時間」の開幕直前にトヨタチームのドライバーから退くことが発表され、勝利で有終を飾ったが、それがドライバーとしてのラストランとなった。

 36歳での引退は非常に早い。F1でも現役最年長で今季限りでF1を引退するアルファロメオのキミ・ライコネンが42歳。アルピーヌのフェルナンド・アロンソも40歳。米インディカーに参戦している佐藤琢磨は44歳だ。国内レースに目を向けても40代以上でレースを続けるドライバーは多い。

 ただし、30代で選手活動をきっぱりとやめた選手もいる。それが一貴の父親で日本人で初めてF1にフル参戦した中嶋悟さんだ。F1最終年だった1991年に現役を引退。その時は38歳だった。

 引退前に自身のレーシングチーム「ナカジマレーシング」を立ち上げており、その後はチームOBドライバーの野田英樹、中野信治、高木虎之介の3人をF1に導いた。現在は国内トップカテゴリーのスーパーフォーミュラとスーパーGTで活躍を続けている。

2020年のルマン24時間レースで中嶋一貴は3連覇を飾った(トヨタ自動車提供)


 一貴は「僕がレースを始めたのが11歳のときですので、それから25年。まずはレースを始めるきっかけをくれた両親に感謝したいと思います。18歳の時にフォーミュラ・トヨタから、トヨタの育成ドライバーとしてデビューしてから18年、人生の半分をずっとトヨタのドライバーとして、デビューから育てていただいた」。引き際の潔さは父親譲りでもあった。

 18歳からトヨタ一筋で、フォーミュラ・トヨタ、欧州F3、GP2(現F2)とステップアップし、F1ではウィリアムズ・トヨタの一員として2007年の最終戦でデビュー。08、09年と計3シーズンを戦った。国内レースに参戦しながら、12年にトヨタのWECプロジェクトに組み込まれ、2018―19年シーズンにシリーズ王者となり、仏ルマン24時間レースでは3連覇を果たした。

 「本当にたくさんの経験をさせてもらって、自分自身がもともと持っている力以上のものを環境によって引き出していただけたと思っているので、その点も感謝しています」と振り返った。

 WECのトヨタチームは一貴に代わってルマン経験もある平川亮(27)を起用。小林可夢偉はドライバー兼任でチーム代表も務める。世界ラリー選手権のワークスチームも昨年末のトミ・マキネン前代表の勇退に伴い、現役バリバリのヤリ―マティ・ラトバラ(36)=フィンランド=を後任に起用する英断を下した。その時から現役に近い選手をチームの要職に起用する方針に転換していたのかもしれない。

 会見であいさつしたトヨタ自動車の豊田章男社長は「私は最近、(同社が標榜する)『もっといいクルマづくり』に、意識的に『モータースポーツを基点とした』と付け加えている」と明かした。現役に近い選手をモータースポーツの要職に据えるのはドライバーファーストの考え方が根底にあるとみる。TGR-Eの副会長となった中嶋一貴の手腕が今から楽しみでもある。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)



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