リーグ・アン第15節、サンテティエンヌ対パリ・サンジェルマン(PSG)。開幕前から大きな期待を集めていた新戦力DFセル…

 リーグ・アン第15節、サンテティエンヌ対パリ・サンジェルマン(PSG)。開幕前から大きな期待を集めていた新戦力DFセルヒオ・ラモスが予想以上の長期にわたるリハビリを経て、ようやくPSGデビューを果たした。

 この試合のスタメンは、まさに豪華絢爛。GKジャンルイジ・ドンナルンマ、DFにはアクラフ・ハキミ、セルヒオ・ラモス、マルキーニョス、フアン・ベルナトの4人。マルコ・ヴェラッティ、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、アンデル・エレーラが負傷欠場とあり、ダブルボランチはイドリッサ・ゲイェとダニーロ・ペレイラがコンビを組んだ。

 そして前線は、右にアンヘル・ディ・マリア、左にネイマール、トップ下にリオネル・メッシ、1トップにキリアン・エムバペ。トーマス・トゥヘル監督時代、エムバペ、ネイマール、ディ・マリア、マウロ・イカルディの4人は「ファンタスティック4」と呼ばれたが、現在の4人こそが「"リアル"ファンタスティック4」だ。



ピッチで笑顔を見せながら話し合うネイマールとメッシ

 まるでゲームの世界のよう。だが、実際に彼らが織りなすコンビネーションプレーの数々も、まさにゲームそのものだった。

 開始からボールを支配しながら決定機を逸し、相手CKの流れから先制点を献上するあたりは相変わらず。それでも、相手がひとり退場したことも影響し、終わってみれば3−1の逆転勝利を飾るあたりに、目下リーグ・アン首位独走中の余裕を見た。

 とりわけ、自陣に引いて守る相手に対する攻撃バリエーションの多彩さは、ほかのチームでは見ることができない"異常"なレベル。しかも、満を持して復帰したセルヒオ・ラモスまでもがレアル・マドリード時代と同様の攻撃参加を見せるのだから、10人のサンテティエンヌには「ご愁傷様」としか言いようがない。

 次はどこから、どうやって崩すのか......。おそらくマウリシオ・ポチェッティーノ監督さえも予測できないその攻撃を見ていると、ワクワク感で時間の経過を忘れてしまうほど。

 少し大袈裟に言えば、そこにはサッカーを観る楽しみの原点があった。

 この試合の4日前、PSGはチャンピオンズリーグ(CL)の舞台でマンチェスター・シティに逆転負けを喫した。高度なチーム戦術を最大活用するシティが、非組織的かつ圧倒的な個の力で戦うPSGを凌駕した試合----見方次第でそうなるが、振り返れば、前回の対戦ではその逆の結果も生まれていた。

 もちろん、国内とほかのヨーロッパではまったく別のチームに変わるPSGゆえ、対戦の図式をそこまで単純化できないのも事実。だが、少なくとも対照的な両チームによる戦いの決着は、まだ結論が出ていないと見るのが妥当だ。

 なにより「MNMトリオ」と呼ばれるメッシ、ネイマール、エムバペの3人が織りなすコンビプレーが、試合を重ねるごとに急ピッチで高まっている。そのことに、このチームが持つ無限大の可能性を感じる。

 そもそも、これまで3人が同時にピッチに立ったのはわずか7試合。そのうち3試合が4−2−3−1の「ファンタスティック4」であることを考えると、4−3−3の3トップとしてMNMだけで関係を築く実践の機会は、これまで4回しかないのだ。

 当初はたしかに、まだお互いの意図やスタイルを探りながらの関係だった。特に初めてチームメイトになったエムバペとメッシは、お互いを知るための探り合いのような行き違いのプレーも散見された。

 だが、数十年にひとりの逸材同士の関係に、心配は無用だった。

「我々には3人の王様がいる」

 もちろん、いい意味でそう表現したのはポチェッティーノ監督だが、しかしこれまでのMNMを見るかぎり、誰ひとりとして王様のような振る舞いをする者はいない。むしろ、この3人に共通しているのは、お互いをリスペクトし合うという"譲り合い"の精神のように感じる。

「僕たちはケーキを分け合う必要がある」と公言したエムバペは、特にその姿勢が顕著だ。

 たとえば、メッシが壁の背後で横になったことが話題となったシティとのCL第2節。その直後に同じような場所で与えた直接FKのシーンで、エムバペは一目散に壁の背後に近づくと、「汚れ役は僕がやる」と言わんばかりに今度は自らが横になった。

 また、CL第3節のライプツィヒ戦では自らPKを得た瞬間、メッシを指さしキッカーに指名。試合終盤にハキミが得たPKシーンでは、今度はメッシがエムバペを指名した。残念ながらミスしてしまったが、その頃からふたりの関係は急接近した印象だ。

 実際、目下3年連続リーグ・アン得点王のエムバペは、メッシのデビュー前に5ゴールを量産していたが、それ以降は2ゴールとペースダウン。決して調子を落としたわけではなく、逆にアシストが急増し、現在はリーグトップの7アシストをマークする。

 その傾向は、メッシにも言える。最初の頃は、チーム全体に"ボールを持ったらメッシを見る"傾向が強かったが、最近はメッシがフリーでもそれをおとりに、スムースに別の選択をできるようになってきた。

 それにより、現在のメッシはいい意味で"ワン・オブ・ゼム"になっているのだが、冒頭のサンテティエンヌ戦では全3ゴールをアシスト。CLよりもゴールを狙うチャンスが多いリーグ・アンでまだ1ゴールしかないメッシだが、焦りは微塵も感じさせない。多くのものを背負って戦い続けたバルセロナ時代と違い、PSGでは純粋にサッカーを楽しんでいるように見えるのだ。

 もうひとりのネイマールも然り。

 MNMの4−3−3で挑んだ第14節のナント戦で、後半65分にGKケイロル・ナバスが一発レッドで退場処分となると、やむなく指揮官はネイマールをベンチに下げた。昨季までのネイマールなら、そのままロッカールームに消えてもおかしくないような状況だ。だが、悲しそうな表情をしながらも、エムバペとメッシなら仕方がないといった心境だったのか、そのまま静かにベンチに腰かけた。

 これらはほんのひと握りのシーンであり、おそらくピッチ外を含めれば、3人の関係は格段に深まっていると見ていい。

 特にネイマールが調子を上げつつある最近は、ハーフタイム後にピッチに登場する際、3人が楽しそうに何かを話しているシーンをよく見かけるようになった。もちろんエムバペのスペイン語が向上していることもあるが、そのシーンとシンクロするように、3人のコンビネーションは高まっている。

 ますます見るのが楽しみになったMNMトリオ。残念ながら、冒頭のサンテティエンヌ戦でネイマールが負傷したたことで、しばらく結成は一時休止となるが、CLグループ2位通過を決めたPSGにとって、ラウンド16までに復帰を見通せるだけでも救いと言える。

 しかも、たとえネイマールが不在でも、PSGにはこれまで攻撃を司ってきたディ・マリアという重要戦力がいる。そのケタ外れの"ストライカー操作術"があれば、ネイマール不在の間にメッシとエムバペのゴール数が急増する可能性は十分にある。

 また、セルヒオ・ラモスが復帰した守備陣では、ポチェッティーノ監督が3バックをオプション導入することを示唆。マルキーニョス、プレスネル・キンペンベ、セルヒオ・ラモスのMKRトリオが最終ラインを形成する日も近そうだ。CLではマルキーニョスのボランチ起用というオプションも考えられ、そうなれば永遠に解決しそうもない守備バランスの問題も、個の力でカバーできる可能性がわずかに見えてくる。

 とにかく、"新銀河系軍団"PSGは見どころが盛りだくさん。エムバペの契約状況を考えれば、このドリームチームを拝めるのは最短で1年、最長でも3年だ(メッシとの契約は最長3年。仮に延長しようとしても赤字経営を禁止するUEFAの「ファイナンシャル・フェアプレー制度」に引っかかる可能性が極めて高いため)。その儚さも含め、2020−2021シーズンのPSGを絶対に見逃すべきではない。