3月31日に開幕した今季プロ野球は、開幕から早くも2週間が経過した。セ・リーグでは昨季覇者の広島が開幕2戦目から10連勝、パ・リーグでは楽天が投打のかみ合った試合運びで首位をキープしている。とは言うものの、ペナントレースは始まったばかり。こ…

3月31日に開幕した今季プロ野球は、開幕から早くも2週間が経過した。セ・リーグでは昨季覇者の広島が開幕2戦目から10連勝、パ・リーグでは楽天が投打のかみ合った試合運びで首位をキープしている。とは言うものの、ペナントレースは始まったばかり。ここからどんな展開を見せるのか、ファンも楽しみにしているだろう。

■阪神の今季注目投手は秋山拓巳、元投手コーチが見る成長の証とは

 3月31日に開幕した今季プロ野球は、開幕から早くも2週間が経過した。セ・リーグでは昨季覇者の広島が開幕2戦目から10連勝、パ・リーグでは楽天が投打のかみ合った試合運びで首位をキープしている。とは言うものの、ペナントレースは始まったばかり。ここからどんな展開を見せるのか、ファンも楽しみにしているだろう。

 2014年以来の日本シリーズ進出を目指す阪神は、14日現在、7勝4敗で2位につけている。金本知憲監督を迎え、“超変革”をスローガンに戦った昨季は、64勝76敗の4位で4年ぶりBクラスに終わった。2季ぶりのクライマックスシリーズ進出、13年ぶりリーグ優勝を狙う今季は、オフにFA移籍してきた糸井嘉男外野手が早速の活躍を見せている。三塁へコンバートされた鳥谷敬内野手のバットも好調で、ベテランと若手の良さがかみ合った打線が生まれた。

 では、猛虎が覇権を取り戻すために、カギを握る投手は誰なのか。阪神OBで元メジャーリーガーの藪恵壹氏は「今年は秋山(拓己)ですよ」と力強く切り出した。

 今季8年目を迎える秋山は、09年ドラフト4位で阪神入りした25歳右腕。今季はここまで2試合に先発して1勝0敗、防御率3.75の成績だ。「今年は8年目。大分時間が掛かっていますが、今年は開花すると思いますよ」と太鼓判を押すには理由がある。

「そもそも彼の体格からすれば、球速は145キロ以上出てもおかしくない。それだけの才能を秘めています。それ以上に、今年は右打者に対するアウトコースへの真っ直ぐのコントロールがよくなっている。それで抑えられるようになっている。やっぱり投手の基本はアウトコース低めに真っ直ぐを投げられるか。今年の秋山は、それができていますね。

 例えば、去年10勝したのに今年苦しんでいる岩貞(祐太)を見ても、今年はアウトローのコントロールが全然良くないですよね。去年はプレートの一塁寄りを踏んでいたから、ちゃんと放れていたんですよ」

■プレートを踏む位置は、持ち球とリリースポイント次第

 海の向こうでは、レンジャーズのダルビッシュ有投手がプレートを踏む位置を一塁側から三塁側に戻し、乱調だった開幕戦以降は快投を続けている。2012年には阪神で投手コーチを務めた藪氏は、プレートを踏む位置は「持ち球にもよるし、球の出どころにもよる」と解説する。

「右打者のアウトローにコントロールよく真っ直ぐを投げたければ、基本は一塁側を踏んだ方がいい。狙う場所とリリースポイントの距離ができるだけ近い方がいい訳ですから。三塁側を踏めば、右打者の外角には腕がクロスして斜めに投げる感じになって、少し距離が長くなります。

 あとはボールの特性ですよね。ツーシームやシュート系の球を軸にする投手は一塁側が多い。だから、メジャーの投手はほとんど一塁側を踏んでいる。サイドハンドで投げる投手もそうですね。

 自分の球の出どころ=リリースポイントがどこに来るのかも大事。できれば、約61センチあるプレートの中に収まっていた方がいい。それぞれバッターには『ボールがこの枠内に入っていればストライクゾーン』という目安がある。投手から見れば、そのストライクゾーンから打ちに来たところでボールに外れる球が投げられれば、一番打たれないんですよ。

 それに気付いたのは、元ツインズの左腕ヨハン・サンタナ(04、06年サイ・ヤング賞受賞)の写真を見た時。彼のリリースポイントはプレートの真ん中くらいで、真上から叩くように投げるんですよ。そこから真っ直ぐ、チェンジアップ、スライダーが方々にグワッと分かれる。打者にとっては厄介ですよね」

 春にはキャンプ地・沖縄にも出掛け、秋山の投球を見たという藪氏は「5試合投げるうち、2試合は打ち込まれないようにできればいい」と話す。

「もちろん、勝ちが付くに越したことはないけど、勝ち負けは自分の手の届かないようなところにある。だから、とにかくQS(クオリティスタート、6回以上を投げて自責点3以下)を目指してほしいですね。できれば、3点はあげないで2点で終われるようにしながら、QS率を上げていけばいい。今年はそれができると思うし、期待しています」

 開幕で先発ローテ入りした今季は、1軍に定着して勝利に貢献することができるのか。高卒8年目の25歳右腕の奮起に期待したい。

佐藤直子●文 text by Naoko Sato