高木豊の「助っ人」通信簿パ・リーグ編 (セ・リーグ編を読む>>) 例年よりも助っ人外国人選手の活躍が目立たなかった今季の…
高木豊の「助っ人」通信簿
パ・リーグ編 (セ・リーグ編を読む>>)
例年よりも助っ人外国人選手の活躍が目立たなかった今季のパ・リーグ。セ・リーグ編に続き、高木豊が各球団の外国人選手たちを4段階で評価した。

オリックスのジョーンズは日本シリーズでも代打として活躍したが、退団が決定した
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オリックス【△】
25年ぶりのリーグ優勝を達成したオリックス。タイラー・ヒギンスは勝ちパターンのセットアッパーとして8回を任されるなど活躍。シーズン後半の勝負所では、スティーブン・モヤが持ち味の長打力で重要な働きをした。
「シーズン通して活躍したと言えるのは、勝ちパターンで概ね安定した投球を見せていたヒギンスだけですね。野手は厳しかったと思います。ただ、シーズン終盤に吉田正尚が怪我で離脱している時期のモヤの活躍は目立ちました。率は低いですが、チャンスでよく回ってきていましたし、ここぞという時に試合を決める本塁打を打っていました。それでも、シーズンを通して活躍したわけではないので、助っ人としての評価となると厳しい。
(アダム・)ジョーンズは代打で活躍した印象が強いですが、彼のメジャーでの実績を考えれば、本来の期待値はそんなレベルの選手ではないでしょう。(ランヘル・)ラベロは来日してすぐに骨折してしまい気の毒な部分はありましたけど、結局は数字での評価ですから。野手の助っ人たちは期待に応えたとは言えませんが、そういう意味では『よくリーグ優勝できたな』という印象です。やはり杉本(裕太郎)のブレイクが大きかったですね」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)モヤ 106試合 打率.229 13本塁打 47打点 出塁率.261 OPS.634
(野)ジョーンズ 72試合 打率.234 4本塁打 23打点 出塁率.339 OPS.677
(投)ヒギンス 49試合 1勝2敗 28ホールド2セーブ 防御率2.53
ロッテ【◎】
オリックスとの熾烈な優勝争いに敗れ、リーグ2位に甘んじたロッテは、ブランドン・レアードとレオネス・マーティンが打線の中軸として揃って活躍。アデイニー・エチェバリアは打撃面で好不調の波はあったものの、超人的な守備で一定の存在感を示した。
「レアードは1点差で打点王に届かなかったものの、打線の中心として十分な働きを見せました。マーティンは骨折で離脱した時期もありましたが、打撃だけでなく守備もいいですし、チームを牽引するリーダーシップも感じます。この2人は文句なく◎でいいと思います。
エチェバリアは打撃も守備も雑な部分があるんですが、クライマックスシリーズで松井裕樹から打った本塁打は見事でしたし、守備でチームを助けたところがものすごく大きい。守備範囲が広いですし、寝転びながら投げてアウトにするという日本人の選手では考えられないような送球をしますからね。あのような守備は見たことがなかったです。
投手は、シーズン途中に加入した(エンニー・)ロメロがいい投球を見せていましたがシーズン終了前に帰国。(フランク・)ハーマンは24ホールドを記録したものの防御率5点台と、例年に比べると安定感を欠いていて、勝ちパターンを任せられるような投球ではありませんでした。それでも、野手の貢献度は群を抜いていたので全体では◎です」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)レアード 136試合 打率.262 29本塁打 95打点 出塁率.330 OPS.809
(野)マーティン 116試合 打率.233 27本塁打 75打点 出塁率.355 OPS.855
(野)エチェバリア 79試合 打率.203 4本塁打 24打点 出塁率.222 OPS.536
(投)ハーマン 45試合 1勝1敗 24ホールド 防御率5.19
楽天【×】
主軸として期待されたブランドン・ディクソンとルスネイ・カスティーヨが揃って不発。3年目のセットアッパー、アラン・ブセニッツは加入後最も少ない31試合の登板にとどまり、防御率4.97と精彩を欠いた。
「ディクソンにしろカスティーヨにしろ、ほとんど試合に出ていませんし評価のしようがないですね。助っ人外国人には長打、得点力アップという部分が期待されますが、それにまったく応えられず、逆に足を引っ張っていたような状態でした。
ブセニッツは球に力があっても制球面に課題があります。あと、走者を背負った時に投球が単調になるところがよくならないと、勝ちパターンでは使いにくい。シーズン後半はまずまずの出来だったと思うので、来季に信頼を取り戻せるかどうかですね」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)ディクソン 38試合 打率.167 4本塁打 15打点 出塁率.268 OPS.592
(野)カスティーヨ 33試合 打率.225 1本塁打 3打点 出塁率.276 OPS.558
(投)ブセニッツ 31試合 1勝0敗 4ホールド 防御率4.97
ソフトバンク【△】
今季も主軸として期待されたキューバコンビが誤算。ジュリスベル・グラシアルは開幕4番を務めるも、右手薬指の骨折で早々に離脱。アルフレド・デスパイネは終盤に本来の打撃を取り戻すも、シーズン通しての活躍はできなかった。リリーフのリバン・モイネロの安定感は健在だったが、デスパイネと共に東京五輪予選で一時離脱したこともチームにとっては苦しかった。
「ソフトバンクは、グラシアルやデスパイネ、(リバン・)モイネロら質のいい助っ人外国人がいますが、今季の働きは例年の半分くらいでした。特にグラシアルの早期離脱は痛かったですね。(ウラディミール・)バレンティンに関してはほとんど試合に出ていませんし、あの成績では厳しいです(22試合出場、打率.182、4本塁打、9打点)。
投手で頑張っていたのは、モイネロはもちろんですが、(ニック・)マルティネスですね。シーズン後半に打線があれだけ打てない状況で我慢強く投げていましたし、常に試合を作っていました。9勝(4敗)していますが、内容を考えればもっと勝っていてもおかしくないです」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)グラシアル 37試合 打率.304 5本塁打 15打点 出塁率.360 OPS.817
(野)デスパイネ 80試合 打率.264 10本塁打 41打点 出塁率.373 OPS.810
(投)マルティネス 21試合 9勝4敗 防御率1.60 QS率95.2
(投)モイネロ 33試合 1勝0敗 14ホールド5セーブ 防御率1.15
日本ハム【×】
先発ローテーションの一角として期待されたロビー・アーリンは、11試合の登板でわずか2勝。昨季8勝を挙げて期待されたドリュー・バーヘイゲンは5勝にとどまった。一方で、セットアッパーのブライアン・ロドリゲスは24ホールドを挙げるなど一定の活躍を見せた。
「野手の(ロニー・)ロドリゲスは、見ていて期待感がありませんでした。王柏融(ワン・ボーロン)はやっと日本の投手にアジャストしてきた印象ですが、もともと4割打者ということで鳴り物入りで来たわけですから、今季の成績が日本でのキャリアハイでは物足りません。
バーヘイゲンは5勝ですが、優勝争いをしていたオリックスとロッテを相手に10月は好投が続いていましたし、後半は頑張っていましたよね。セットアッパーのロドリゲスは47試合に登板していますし、24ホールドで防御率2.74は及第点です。日本で4年間投げているので日本の打者にも慣れてきています。来季も契約したようですし、今季以上の活躍が期待できるのではないでしょうか」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)王柏融 95試合 打率.242 9本塁打 48打点 出塁率.322 OPS.750
(投)バーヘイゲン 20試合 5勝8敗 防御率3.84 QS率26.3
(投)ロドリゲス 47試合 0勝2敗 24ホールド 防御率2.74
西武【×】
42年ぶりの最下位に沈んだ西武。助っ人が軒並み不振だったことも大きな要因だった。手薄な先発ローテーションの一角として期待されたマット・ダーモディは11試合に登板し1勝も挙げられず、ザック・ニールもわずか1勝。2年目で昨季以上の活躍が期待されたコーリー・スパンジェンバーグも低調な成績で終わった。
「ニールは"負けない男"と呼ばれていた時もありましたが、1勝ではどうにもなりませんし、西武は投打にわたって助っ人がほとんど戦力になりませんでした。チームが最下位ということを考えれば、助っ人たちに頼る部分は多かったと思いますけど、うまく機能しませんでしたね。
(リード・)ギャレットは球威はあるんですが、ピッチングが単調になりがちなところがあり、やられているケースが目につきました。61試合も登板していますが、投げている数ではなくて、やっぱり内容がよくないといけません。西武は投手のやりくりに苦労していたから投げさせていましたけど、ギャレットは常に不安が先に立っていました。
西武もそうですが、今季のパ・リーグは全体的に外国人選手の活躍が目立ちませんでしたね。そのぐらい"日照り続き"でした。極端に言えば、ロッテのレアードとマーティンだけ、という印象です。助っ人の活躍は順位に直結しやすいですし、来季の新戦力も含めて各チームの働きには注目したいと思います」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)スパンジェンバーグ 61試合 打率.232 7本塁打 27打点 出塁率.340 OPS.760
(投)ギャレット 61試合 4勝3敗 17ホールド 防御率3.77
(投)ニール 11試合 1勝6敗 防御率5.85 QS率36.4
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