「走らない」と言われてきた白毛馬の常識を、自らの活躍によって、次々と覆してきたソダシ(牝3歳)。 重賞5勝、うちGI2勝…
「走らない」と言われてきた白毛馬の常識を、自らの活躍によって、次々と覆してきたソダシ(牝3歳)。
重賞5勝、うちGI2勝という成績は、立派なA級馬のもの。もはや「白毛は走らない」などと言う人はいないだろう。
だが、その実績に満足することなく、ソダシは新たな可能性に挑む。芝GI馬の、ダートGIへのチャレンジだ。
向かうは、名うてのダート巧者が集う「秋のダート王決定戦」となるGIチャンピオンズC(12月5日/中京・ダート1800m)。これは、ソダシの"二刀流"への挑戦と言ってもいいかもしれない。

ダートGIのチャンピオンズCに挑むソダシ
このチャレンジの理由について、ソダシを管理する須貝尚介調教師はこう語っている。
「血統背景もあるし、今後も見据えて、この辺でダートを試してみるのもいいかな、と」
この挑戦は、もとより勝算があってのこと。その最大の根拠は、須貝調教師の言う「血統背景」だ。
母ブチコは現役時代にダート4勝と、生粋のダート馬。なおかつ、父のクロフネに至っては、NHKマイルC(東京・芝1600m)を制して芝GIでも戴冠を遂げているが、その秋にはダート路線に矛先を変えて2戦2勝。そのうちの1勝が、チャンピオンズCの前身であるGIジャパンカップダート(東京・ダート2100m)だった。
しかも、このダート2戦における衝撃のパフォーマンスは、今なお語り継がれるほどの"伝説"。それゆえ、日本競馬における歴代最強ダート馬に、クロフネの名前を挙げる専門家も少なくない。
つまりソダシの血統背景は、むしろダートでこそ真価を発揮する、と見ることができるのだ。
そもそもソダシは洋芝、パワーが求められるとされる札幌コースで2戦2勝。ともに重賞で、ひとつはこの夏のGII札幌記念(8月22日/札幌・芝2000m)。のちに日本馬初のブリーダーズC(フィリー&メアターフ)制覇を果たしたラヴズオンリーユーを一蹴していることは記憶に新しい。
要するに、ソダシはGI桜花賞(4月11日/阪神・芝1600m)でレコード勝ちするようなスピードに加えて、ダート競馬に必要なパワーも兼ね備えているのである。
こうしたことを踏まえて、ソダシのダート競馬への挑戦はもともと「予定の行動」であって、あとはタイミングの問題だったようだ。
また、チャンピオンズCは、3歳牝馬が勝った例こそないものの、2015年に牝馬のサンビスタが優勝。3歳馬も、2018年のルヴァンスレーヴ、2019年のクリソベリルが勝っており、「牝馬だから」とか「3歳馬だから」といった高いハードルがあるわけではない。
そうなると、GIを勝つ能力を秘め、スピードとパワーを兼ね備え、バリバリのダート血統でもあるソダシなら、好走の可能性は十分にありそうだ。
では、識者の見立てはどうか。関西の競馬専門紙記者はこう語る。
「芝のGIでは成績的にやや頭打ち、という状況。ダートを試すにはいいタイミングだと思います。
でも、勝ち負けまではどうでしょうか。ダートを使うのはいいとしても、いきなりGIですからね。過去、ジャパンCダート時代を含めて、ダート初戦でこのレースを勝った馬はいません。その辺りに一抹の不安があります」
確かにソダシの父クロフネ、そして同じく芝GIを勝ってジャパンCダートを制しているイーグルカフェにしても、ダート初戦がGIではなかった。さらに、2020年のGIフェブラリーS(東京・ダート1600m)を制している安田記念馬のモズアスコットも、その前に一度、GIII根岸S(1着。東京・ダート1400m)を走っている。
「芝とダートの一番の違いは、ダート競馬では砂をかぶること。どんな馬も必ず、これを嫌がります。もちろん、そこには程度の差があって、どうしても我慢できない馬はダートに向きませんが、我慢できる馬はそれに少しずつ耐えながら、次第に慣れてきて、ダート戦にも対応できるようになります。
ただ、ソダシはもともと気性に難があるタイプ。そのため、砂をかぶることに我慢がきくかどうか。それを見極めないうちにいきなりGIというのは、やはり厳しいように思います」
専門紙記者の見解は厳しい。
とはいえ、先行脚質のソダシにとって、砂をかぶらない位置で競馬をすることはさほど難しいことではないだろう。たとえば、真ん中から外寄りの枠を引いて、うまくスタートをきって、気分よく先行する。そういう競馬ができれば、フルに能力を発揮できるのではないか。
いきなりGIというのは確かに酷な条件かもしれない。しかし、デビュー以来「厳しい」と言われながら、あらゆる難題をことごとく克服してきたのが、ソダシである。
今年のチャンピオンズCは、日本競馬界における新たな"二刀流"伝説の幕開けとなるかもしれない。