■様々な感情が交錯するJ2残留争い 安堵の広がるピッチがあり、歓喜に沸いたピッチがあり、悲しみが漂うピッチがあった。 1…

■様々な感情が交錯するJ2残留争い

 安堵の広がるピッチがあり、歓喜に沸いたピッチがあり、悲しみが漂うピッチがあった。

 11月28日に一斉開催されたJ2リーグ第41節では、J2残留争いに大きな動きがあった。

 21位の愛媛FC、22位の松本山雅FCのJ3降格が決定したのである。

 勝点34で21位の愛媛FCは、アウェイで水戸ホーリーホックと対戦した。17分、内田健太が直接FKを突き刺して先制する。しかし後半立ち上がりの50分に同点とされ、87分にカウンターから致命的な一発を浴びてしまう。前節のSC相模原戦に続いて逆転負けを喫し、20位以下が確定してしまった。

 勝点33で22位の松本は、勝点37で18位の相模原とのアウェイゲームに挑んだ。J2残留のためには勝点3がほしい松本は、ルカオが先発に名を連ねた。実に8月以来の出場となるブラジル人FWは、開始早々から積極的にゴールを狙っていく。それでもスコアを動かすことはできず、松本は後半終了間際の90分に失点をしてしまう。

 この時点で肩を落としてもおかしくないが、松本は懸命にファイティングポーズを取り続ける。そして迎えた90+6分、セルジーニョの直接FKが相手のオウンゴールを誘い、1対1のドローに持ち込んだ。

 しかし、勝点1の上積みではJ2残留につながらない。20位以下が確定してしまった。試合後の名波浩監督は、責任は自分にあるという趣旨の発言を繰り返した。

「クラブ、フロント、選手たちに責任は一切ないと思います。自分がやったゲーム数やトレーニングに携わった時間は関係なく、チームの現場の長として責任を強く感じます。もう少しああいうふうにあのタイミングでできたとか、ああいう感じのまま続けたほうがよかったかなとか、そういう後悔は小さいかもしれないですがたくさんあります。それが最終的に大きな結果につながったのは事実だと思います」

 松本が最後に勝利したのは、9月26日の31節までさかのぼる。翌32節から今節の相模原戦まで、10試合連続で勝利をつかめなかった。そのなかには、栃木SCザスパクサツ群馬レノファ山口FC、そして相模原との残留争いの直接対決も含まれている。浮上のきっかけをつかむタイミングをことごとく逃してしまったことが、J3降格につながったと言えるだろう。2度のJ1昇格を経験した北信越の人気クラブは、厳しい現実と向き合うことになった。

■栃木と山口のJ2残留を確定

 28日開催の41節を受けて、前節まで勝点45で14位の栃木、勝点42で15位の山口が、J2残留を確定させた。

 最終節に残留を賭けて臨むのは、勝点41の群馬、勝点40のツエーゲン金沢、勝点39の大宮アルディージャ、勝点38の相模原、勝点35のギラヴァンツ北九州だ。

 北九州はすでにギリギリまで追い込まれている。最終節に勝っても勝点は「38」だ。相模原が負けて勝点差で並ぶことができても、得失点差で劣る可能性が高い。

 奇跡的に19位へ浮上することができたとしても、J3の結果次第でのJ2残留となる。J2ライセンスを持たないテゲバジャーロ宮崎が2位以内に入ることで、19位のチームが救われる。そして、こちらの行方も最終節に委ねられることとなった。

 小林伸二監督のもとで19年にJ3優勝を成し遂げ、20年にJ2でクラブ最高位の5位へ食い込んだ北九州は、2度目のJ3降格が避けられなくなってきた。

 一方、41節で立場を好転させたのは金沢だ。モンテディオ山形との一戦は、1対1のまま後半アディショナルタイムへ突入する。このまま引分けたら勝点は「38」で、相模原と同勝点ながら得失点差で19位のままになってしまう。

 絶体絶命と言っていい局面で、瀬沼優司が値千金のゴールを叩き出す。76分に途中出場し、その3分後にゴールを決めていた背番号10は、90+3分にクリアボールを受けて独走し、右足でネットを揺らしたのだった。

 カウンターに活路を見出した戦いを、柳下正明監督は「勝つためのプレーをしてくれた」と評価した。「山形はどことやっても相手よりチャンスを多く作り出しているので、それに対して打ち合うというのはいまのツエーゲンにはできない。勝ち点3を取るためには、今日みたいなサッカーをするしかない」との覚悟を持って臨んだ一戦だった。

 2ゴールの瀬沼も「簡単な試合にならない苦しい時間が多い試合でしたけど、みんなで粘り強く守って、ホントに少ないチャンスをものにして勝てたゲームだったと思います」と振り返る。4試合ぶりにつかんだ勝利によって、金沢は大宮と相模原を抜いて17位に浮上したのだった。

■金沢、大宮、相模原が生き残りを賭ける

 最終節のカードは以下のとおりとなっている。

大宮(勝点39)対群馬(勝点41)

京都サンガF.C.対金沢(勝点40)

東京ヴェルディ対相模原(勝点38)

山形対北九州(勝点35)

 北九州については、すでに19位以下が確定している。相模原に勝点で並んでも、得失点差で上回るのは難しい。J3降格が3チームになったとしても、降格は避けられない状況だ。

 19位の相模原は勝点3奪取がマストだ。相模原が引分け、大宮が負けると勝点39で並ぶが、得失点差は大宮がマイナス7で相模原がマイナス18だ(数字は41節現在)。1試合で覆せる数字ではない。勝点3を積み上げた先に、J2残留が見えてくる。

 大宮は相模原の結果を睨みつつの戦いとなるが、勝って残留を決めたいところだろう。得失点差ではもっとも優れているが、ホーム最終戦に勝利して自力で残留を勝ち取りたい。

 金沢も勝点3をつかみたい。引分けでも勝点41となり、相模原が勝っても同勝点だが、得失点差では相模原に劣るからだ。

 引分け以下でも残留が決まるのは群馬だ。金沢が勝つと勝点で抜かれるが、大宮、相模原、北九州を勝点で上回ることができる。数字の上ではJ2残留にもっとも近い立場だ。もちろん、油断はできないが。

 最終節は12月5日の13時にキックオフされる。最終節までもつれたJ2残留争いは、ついに結末を迎える。

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