先日、初出場だったシーズン最終戦「Nitto ATPファイナルズ」でベスト4進出を果たした22歳のキャスパー・ルード(ノ…

先日、初出場だったシーズン最終戦「Nitto ATPファイナルズ」でベスト4進出を果たした22歳のキャスパー・ルード(ノルウェー)は、キャリア初期からクレーコートを得意としていて、クレーで格段の強さを見せるラファエル・ナダル(スペイン)やドミニク・ティーム(オーストリア)の足跡を辿りつつあった。そしてルードはその類まれなるテニスの才能を、ハードコートでも開花させ始めている。ATP(男子プロテニス協会)の公式ホームページが伝えている。【関連記事】22歳ルード、サンディエゴで今季ツアートップの5勝目

今シーズンのルードは、ハードコートでこれまでと大きく異なる成果をあげた。「Nitto ATPファイナルズ」に出場し、ラウンドロビンで世界ランキング5位のアンドレイ・ルブレフ(ロシア)に勝利して準決勝に進出。これまで苦手としてきたハードコートの大会で、あと2勝で優勝というところまで迫った。

ルードの活躍に以前から注目していた元世界4位のブラッド・ギルバート(アメリカ)は、次のように語った。「ルブレフと対戦する彼を見て、非常に充実している状態なのが見て取れた。彼は、今後伸びていくクレーコートプレーヤーというわけではない。もうすでに強い選手になっている。この結果には驚かなかったね」

今シーズンまでのルードのハードコート大会での戦績は16勝27敗だった。だが今年はファイナルズに出場したルブレフやキャメロン・ノリー(イギリス)、元世界王者のアンディ・マレー(イギリス)、ディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)、2017年のファイナルズ覇者グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)などに勝利し、ハードコートで25勝10敗という良い結果を残した。今シーズン、ハードコートでルードより好成績をあげているのは3選手のみ。やはり「Nitto ATPファイナルズ」ベスト4の世界王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ファイナルズ準優勝のダニール・メドベージェフ(ロシア)、そして優勝したアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)だ。

ルードは、ずっとハードコートへの苦手意識をなくそうと努力してきた。昨年新型コロナウイルス感染拡大の影響でツアーが中断されていた間、ルードはハードコート克服を中心に練習を重ね、苦手なものに慣れることに時間を使った。

「速く走る必要があるし、ステップも素早く踏まなきゃいけない。ベースラインから2、3、4メートル離れている時よりずっと速く反応しなきゃいけないんだ」と当時ルードは語っていた。「僕にとっては間違いなく挑戦だね。ある練習では、普段よりずっと多くミスをしていた気がする。コートに入っていく方が、後ろにいてトップスピンでプレーするよりずっとリスクが高いんだ」

「防御に回ってずっと走り回るより、攻撃的にプレーする方が良いと思うんだ。できるだけ攻撃的になるべきなんだけど、それがもっと自然にできる人もいる」

ルードのチームを率いるのは、父親で元世界39位のクリスチャン・ルードさんだ。クリスチャンさんは、時間をかけてできるだけ多くのフォアハンドを打ち、対戦相手を苦しめることができるクレーコートこそルードの強みが発揮できると知っていた。だが、ハードコートで息子が力を発揮する可能性を諦めたことはなかった。

「ハードコートでは、ベースラインの内側で待機して、上ってくるボールを打たなきゃいけない。彼はその部分を強化した。特にバックハンドをね。今年もその前も、強い選手を何人もハードコートで下してきた。彼の一番好きなサーフェスは変わらずクレーだろうけど、将来はハードコートでもっといい成績を残すと思うよ」とクリスチャンさんは8月のインタビューで語っていた。

ハードコートでの活躍は、チームが想定していたよりも早く訪れた。ルードは9月末から開催された「ATP250 サンディエゴ」で、自身初のハードコート大会での優勝を飾る。決勝では落としたのはたった2ゲームとノリーを圧倒。そして「Nitto ATPファイナルズ」でも素晴らしい成績を残した。

「Nitto ATPファイナルズ」が始まってすぐ、出場選手の何人かが球足がすごく速いと言及していた。ルードには不利なコートかと思えたが、カリフォルニアの自宅から観戦していたギルバートの目には中くらいのスピードに見えたという。ルードはノリーやルブレフを退け、昨年覇者メドベージェフとの準決勝に進出し、そこで敗れた。

ギルバートは、2年前の「ATP250 ヒューストン」で初めてツアー大会の決勝に進出したルードのプレーを見たことを覚えていた。アンドレ・アガシ(アメリカ)やアンディ・ロディック(アメリカ)のコーチを務めたこともあるギルバート曰く、当時と比較し現在のルードが大きく成長した点がいくつかあるという。

「サーブがすごく良くなっている。最も向上したのはそこだね。ファーストとセカンド、両方ともだ。彼は素晴らしく上達したよ。フォアハンドは彼の大きな武器だ。昔は素晴らしいショットを打つことも多かったけれど、ミスも多かった。今のフォアハンドはずっと安定していて、正確だ。その2つが、彼のプレーが上達した理由だね」

「彼はプレーが安定してきた。それに、やり過ぎないこと、得意なクレーでやろうとすることと違うプレーをしないことを学んだんだ」

(テニスデイリー編集部)

※写真は「ATP250 キッツビューエル」でのルード

(Photo by Markus Tobisch/SEPA.Media /Getty Images)