Jリーグクライマックス2021 J1残留をかけた直接対決、第36節終了時点で15位の湘南ベルマーレは本拠地に17位の徳島…

Jリーグクライマックス2021

 J1残留をかけた直接対決、第36節終了時点で15位の湘南ベルマーレは本拠地に17位の徳島ヴォルティスを迎え、0-1と敗れている。この結果、引き分けでも優位に立てていたはずの湘南は残留に足踏み。ひとつ順位を落とし、薄氷を踏む勝利を挙げた徳島に勝ち点36で並ばれた。

 最終節を前に、横浜FC、ベガルタ仙台、大分トリニータはすでに降格が決定。16位の清水エスパルスが劇的勝利で勝ち点を39に伸ばして15位に浮上し、残りひとつの「降格」をめぐる争いは混沌さを増している。清水、湘南(得失点差で徳島を上回る)は勝てば自力でほぼ残留が決まるが、負ければ真っ逆さまの可能性がある。

 なぜ湘南は苦杯をなめ、徳島は土俵際で残ったのか――。その検証は、残留戦の行方も占うことになるだろう。



湘南ベルマーレ戦で貴重な決勝ゴールを決めた岸本武流(徳島ヴォルティス)

 11月27日、平塚。四字熟語を代名詞に、湘南の選手がモニターに映し出され、スタジアムDJのアナウンスが入り、スタンドは拍手とハリセンで応えていた。お馴染みの光景だが、「負けられない」という独特の緊張感が滲(にじ)む。この試合を前に、ブラジル人MFオリベイラを心臓発作で失った悲しみと混乱も混ざっているのか、スタンドに陣取る関係者の顔はこわばっていた。

「打て!打て!打て!打て!打て!」

 会場の一角では、レゲエグループの演奏が会場を盛り上げ、勢いをつけようとしていた。

 試合開始直後から、湘南は消極的に見えた。後ろが重たく、前線のプレスも弱かった。ボールの出どころを抑えられず、ペースをつかめない。「引き分けでも優位」という有利な状況が「安全に」と気持ちにブレーキをかけ、出足を鈍らせたのだろうか。

「僕たちは最初の入りから、気持ち的に守りに入ってしまいました。ボールを奪うべきところではまらず、"アグレッシブに走って戦う"という自分たちの良さを出せなかった」(湘南・舘幸希)

 一方の徳島も慎重な立ち上がりだった。彼らの場合、「負けたら終わりでミスはできない」という違う種類の重圧があった。

 それでもポゼッションを捨てず、GKを使いながらパスを回したが、「運べ!」というベンチからの檄に、センターバックが応える余裕はなかなかない。一度、無理に中へパスをつけようとし、狙われてカットされ、カウンターからウェリントンにシュートを浴びた。

「相手のプレスに対し、自分たちがボールを持てることがわかりました。ただ、どこに穴があるのか、ひずみを見つけるのに試行錯誤しながらで......。自分たちはギャンブルに出るのではなく、どこかでチャンスが来るのかを窺いながら、前半は様子を見ていました」(徳島・岩尾憲)

 徳島の4-3-3は成熟度が低く、選手同士がアジャストするのに時間がかかった。そこをつかれて湘南に強いプレスを受けていたら、混乱が出ていただろう。ただ、岩尾がボールに触るたび、触らなくても相手を引き出すことで、次第にリズムが出てきた。後半になって湘南が前がかりになったが、逆手に取る余裕があった。トップの垣田裕暉が抜群のキープと反転力を見せ、攻撃の芽が出ていた。

 後半18分に、徳島の2人が交代した後だった。右FWだった宮代大聖が左インサイドハーフに入っていたが、これがテンポを生む。絶妙な間合いで左にスルーパスを入れると、それを受けた田向泰輝がクロスを入れ、ブロックされたが左CKに。これを岩尾がサインプレーで、ファーへめがけて配球。エリア外から飛び込んだ宮代がダイレクトボレーを打ち込み、いったんはGKに防がれたが、こぼれ球を岸本武流が押し込んだ。

「Paciencia」

 徳島のダニエル・ポヤトス監督は「我慢」と総括していたが、徐々に押し込んで戦い、用意したセットプレーを決めた。"してやったり"の心境だったはずだ。

 湘南は最近の5試合、交代カードで展開を好転させてきた。しかし徳島戦は不発だった。徳島が垣田を下げて投入したムシャガ・バケンガが全く機能せず、優位に運べる状況だったが、パワーを出すことができなかった。チームメイトを失った悲嘆の影響がないはずはない。

「首の皮一枚でつながりました。ラスト1試合は、とにかく出し切る。それが大事だと思っています」(徳島・岸本武流)

 徳島は危うさを潜ませながらも、「ボールを持つ」というサッカーを捨てなかった。おかげでジャブを打つように相手の足を止め、クリーンヒットでダウンを奪い、凱歌をあげた。最終節はサンフレッチェ広島とのホーム戦だが、戦いの中で勝ち筋を見つけ、勝ち点3を獲得するしかない。彼らの場合、負け=降格だ。

 一方、敗れた湘南は敵地でガンバ大阪と対戦する。彼らはたとえ負けても、徳島が負ければ残留できる。だが、少しでも腰が引けるとずるずると崩れるだろう。ここまで来たら心理戦だ。

「原点に立ち返ってプレーしないと、と思っています。これまでもチームは逆境を乗り越えてきて、リバウンドメンタリティはあるので。もう一回、ひとつにまとまってベルマーレらしく......」(湘南・岡本拓也)

 攻守に激しく戦う「湘南スタイル」を再起動できるか。

 ちなみに清水は本拠地でセレッソ大阪と対戦する。12月4日、生き残りを懸けた最終決戦はすべて14時キックオフだ。