大王製紙エリエールレディスで実感したマナーの重要性

 女子ゴルフの国内ツアー・大王製紙エリエールレディスは、21日まで愛媛・エリエールGC松山で行われ、原英莉花(日本通運)の優勝で幕を閉じた。今大会で女子ゴルフの現場を初めて取材した記者が、4日間で感じたマナーの重要性や競技の魅力をコラムで伝える。(文=THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)

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 渋野日向子選手の今季国内最終戦、稲見萌寧選手の賞金女王が決まる可能性もあった大会で、初めて女子ゴルフの現場を取材した。これまで主にプロ、アマ野球の現場を中心に取材してきたが、ゴルフ現場ならではの環境や文化を感じた4日間だった。

 大会中は毎朝5時30分起きで午前7時頃に会場に到着していたが、既に多くの関係者が準備を整えていた。プレスルームもすぐに仕事ができる状態。大会運営に携わった全ての方に、頭が下がる思いだった。プロ野球のデーゲームなら午前10時頃に球場に居れば事足りる。競技時間の長さや準備の違いがあるとはいえ、ホスピタリティの文化にまず驚いた。

 1年ぶりの優勝を果たした原選手の涙が印象的だった今大会。思い知らされたのは、ゴルフ取材は結構体力が必要だということ。4日間、最低でも前半9ホールは選手を追いかけコースを歩き回った。自然の中を切り開いたアップダウンの激しい道のり。スマートホンの歩数計は連日1万歩を超えていたが、32歳、運動不足の記者の足腰は悲鳴を上げていた。

 4日間晴天に恵まれ、過ごしやすい気候だったからまだ良かった。夏場などはさらに過酷なのは明らか。炎天下で声を出し続ける高校球児の凄さも十二分に感じてきたが、一打一打の集中力を切らさない女子ゴルファーへの尊敬も抱かずに居られなかった。

野球とは違うと感じた“流れ”の作り方

 ラウンド中は選手たちが互いにリスペクトを言葉に出していることに感心させられた。バーディーを奪った後、「ナイス」と声をかけ合う選手は1人や2人ではない。組のリズムや雰囲気が個人成績にも繋がると聞いたことがあるが、競争相手でも称賛する競技特性を実感した。

 初取材にあたり、特に注意するよう事前に伝えられていたのはマナーの遵守。選手がルーティンに入ったら動いてはいけないし、音を立てることもNG行為。打つ前にカメラのシャッターを切るなどもってのほか。当たり前のことだが、僅かな音や動きがショット、パットの乱れに繋がるからだ。

 この辺りは野球と大きく違う部分。モーションに入った投手にシャッターを切るのも問題ないし、観客席からは応援団の演奏や声援が常に飛び交っている。野球は球場のムードに乗せられて打つ、打たれることもあり“流れ”を周囲が生み出すこともある競技だが、ゴルフは静止したボールを静かな環境で、自分のタイミング、リズムで打ち続けるという点では、自ら“流れ”を作らなければならないスポーツなのだと感じた。

 選手を見守る側の雑音や目につく動きは、悪い流れを生み出す元。何かあってはならないと、度々マナーモードになっているか確認しないと不安になったし、急斜面を登った後の息切れですら抑えなければならないと気を張っていた。ギャラリー同士で互いに注意する場面も見かけ、意識の高さを感じさせられたが、残念な出来事もあった。

 第3日の7番パー4でのこと。渋野選手が約1.5メートルのパーパットを打つ前、グリーン周りにいた男性の着信音が鳴り響いた。なかなか止まらず、付近にいた別の観客が注意した後にようやく収まった。少し嫌な空気が流れた直後、仕切り直しで放たれたパーパットは外れ、ボギーとなった。

選手との距離が近いのは“マナーの順守”大前提のもと

 着信音が結果に直接結びついたかどうかは分からない。ただ、1センチの差でも明暗が分かれてしまうスポーツということを、見守る側も肝に銘じておかなければならないと感じた瞬間だった。

 今大会、渋野選手は12位タイで145万円を獲得しているが、仮にこれがパーであれば9位タイ、賞金は205万円だった。各ランキングで来季のシード権も決まるし、一打一打に重みがある。もし自分のせいで1打損し、優勝を逃すなんてことがあったら……想像するだけでゾッとした。

 観客の多いスタートホールでは、携帯電話は電源を切るかマナーモードにするよう再三アナウンスされていたし、各組についている係員、キャディーも会話、歩行などを止めるよう常に促していた。それでも撮影を注意される人もおり、スタートホールでは選手が現れる前ではあったものの、コース脇からアラーム音が鳴ったこともあった。

 ツアー側で出来ることは十分やっているように感じる。ここまでくると、各々の意識の問題だろう。「自分は大丈夫」「ちょっとくらい良いだろう」という軽い気持ちが、選手の生活を変えてしまう恐ろしさを秘めていることを、強く心に刻んだ。

 ゴルフファンには当然のことかもしれないが、もう一つ驚いたことがある。それは選手とギャラリーの動線がほぼ同じということだ。ホール間の移動時などでは特に距離が近く、人気ゴルファーの表情や動きを間近に見られる。

 野球ならスタンドから近づくことはできないし、選手がベンチに戻れば何をしているかわかりづらい。一方、ゴルフは18ホールずっと近くで選手を観戦できる。個人的には「これは凄い」と思ったし、変わらないでほしい特長だと感じた。会見で複数の選手から話を聞いたが、どの人にもそれぞれの魅力があり、人気を集めていることも頷けた。

 こうした魅力を近くで感じられるのも、周りで見守る私たちのマナーが守られているという大前提があってこそ。口酸っぱく言われていた遵守の重要性に、本当の意味で触れられた4日間だった。(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)