過去10年のGIジャパンC(東京・芝2400m)で、3歳馬が勝ったのは2度。2012年のジェンティルドンナと2018年…

 過去10年のGIジャパンC(東京・芝2400m)で、3歳馬が勝ったのは2度。2012年のジェンティルドンナと2018年のアーモンドアイだ。

 3歳馬は古馬に比べて斤量面での恩恵があるとはいえ、並みの「強い馬」では勝てない。ジェンティルドンナやアーモンドアイのような、競馬史にその名が刻まれる、いわば"名馬級"でなければ勝てない――そう歴史は証明している。

 3歳馬がジャパンCを勝つことは、それだけハードルが高いのだ。

 そして今年のジャパンC(11月28日)には、2頭の3歳馬が出走を予定している。ダービー馬のシャフリヤール(牡3歳)と、オークス馬のユーバーレーベン(牝3歳)である。

 とりわけ注目されるのは、シャフリヤールだろう。



日本ダービーでは皐月賞馬エフフォーリアを下し、世代の頂点に立ったシャフリヤール(右)

 この馬は強いことは強い。しかし、どの程度強いのか、つかみづらいところがある。

 ここまで5戦3勝。GI日本ダービー(5月30日/東京・芝2400m)を含めて重賞2勝。十分に「強い馬」には値するが、負けた2戦の内容に物足りなさを感じる。

 特に、前走のGII神戸新聞杯(9月26日/中京・芝2200m)である。敗因は不良馬場と言われるが、勝ち馬からおよそ5馬身差をつけられての4着という結果はさすがに負けすぎではないか。

 これで、ジャパンCを勝つほどの「器がある」と言えるだろうか。

 こうした疑問や懸念に対して、関西の競馬専門紙記者はこう反論する。

「神戸新聞杯は負けて"正解"でした。あのレースの上位馬は、続くGI菊花賞でことごとく敗れています。勝ったステラヴェローチェが4着。2、3着馬に至ってはふた桁着順に沈む惨敗でした。それは、神戸新聞杯における不良馬場で好走した反動があったと見るべきでしょう。

 その点、シャフリヤールは無理に勝ちにいくようなレースをしませんでしたからね。ダメージはほとんどなかったと見ていいでしょう。4着という結果も、5馬身差という着差も、ノーカウントでいいと思います」

 もともとキャリア3戦目のGIII毎日杯(3月27日/阪神・芝1800m)で、驚異的なレコードをマークして勝ったスピードタイプ。神戸新聞杯の不良馬場ではまったく力を出せなかった。ゆえに、先の専門紙記者が言うとおり、その一戦は度外視していいのかもしれない。

 それに、シャフリヤールは当初から菊花賞に出るつもりはなく、神戸新聞杯のあとはジャパンC出走を想定していたという。その分、レース間隔は長くとれるし、たとえダメージがあったとしても、回復のための時間的な余裕は十分にあった。

 だとすれば、シャフリヤールにとって、ジャパンCは持てる能力を最大限に発揮できる舞台となるはずだ。それが実現した時の強さは、今さら言うまでもないだろう。

 また、今年は秋のGIシリーズでも3歳馬が奮闘しており、「強い3歳世代」と言われている。その代表格が、エフフォーリア。「3強対決」で沸いたGI天皇賞・秋で、昨年の三冠馬コントレイル、女傑グランアレグリアを一蹴した。

 そのエフフォーリアも、全6戦のキャリアで一度だけ苦杯をなめている。それが、今年の日本ダービー。先着を許したのは、シャフリヤールである。

 単純比較で言えば、シャフリヤールは「強い3歳世代」最強のエフフォーリアの上。つまり、古馬一線級相手にもヒケをとらない――そんな計算が成り立つ。

 加えて、シャフリヤールは春当時に課題とされた馬体にも成長が見られる。

 ダービー時の馬体重は444kg。その華奢な体型が、将来を見据えた際にはひとつの懸念材料とされていた。

 それが、ひと夏の休養を経てふっくらとし、神戸新聞杯の時にはダービーからプラス8kgの452kg。同時に精神面での成長も見られ、これには厩舎関係者も「春はまだ中・高校生という感じだったけど、夏を越して(心身ともに)やっと大学生くらいになった」と、大いに喜んだという。

 さらに、強調したいのが距離適性。シャフリヤールはスピードタイプながら、適距離は2400mくらいか、さらに長い距離にあるという。先述の専門紙記者が語る。

「(シャフリヤールは)時々テンにもたついて、スタートしてスッといい位置をとれない。でもその分、終(しま)いは確実にいい脚を使う。これは、2000m前後より、2400mくらいの距離に適性があることを示しています。

 また、体は小さいのですが、フットワークは実にゆったりしていて、ストライドが非常に大きい。ということは、走りに無駄がないので、長い距離を走っても消耗が少ない。そうした点を踏まえても、ジャパンCの距離は大歓迎だと思います」

「強い3歳世代」屈指の能力を秘め、ひと夏越して成長。しかも、距離もぴったり。「問題は天気だけでしょう」(専門紙記者)。

 過去の歴史からして、3歳馬がジャパンCで頂点に立つのは決して簡単なことではない。それでも、シャフリヤールにはそれを成し遂げるだけのポテンシャンルが備わっている。

 はたして、古馬一線級を相手にしてどんな走りを見せるのか。良馬場での開催となれば、シャフリヤールが日本の競馬シーンの新たな"主役"に躍り出るかもしれない。