今季のJ1は川崎フロンターレが連覇したが、新たな変化の胎動がある。屈指の人気を誇る浦和レッズである。 人気のみならず、…
今季のJ1は川崎フロンターレが連覇したが、新たな変化の胎動がある。屈指の人気を誇る浦和レッズである。
人気のみならず、実力ある選手もそろっている。さらに、新たな流れを持ち込みそうなリカルド・ロドリゲス監督もやってきた。
浦和に、川崎の3連覇を阻む「器」はあるのか。サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。
■マルチロールの起用でもたらされた戦術の幅
今シーズンから浦和の指揮を執っているリカルド・ロドリゲス監督。徳島ヴォルティス時代は可変システムを駆使して、サイドバックの攻撃参加などを武器としたチームを作り上げてJ1昇格を果たした指揮官だった。
浦和でも、右サイドバックの西大伍や酒井宏樹、左サイドバックの山中亮輔などが様々な形で攻撃に絡むサッカーを見せている。また、時にはキャスパー・ユンカーと江坂任のツートップのコンビネーションが輝いた試合もあるし、MFの伊藤敦樹や小泉佳穂といったマルチな仕事ができる選手が活躍。選手起用も試合毎に変化に富んでいる。
横浜FM戦では、トップに関根貴大と江坂というトップ下タイプもしくはサイドアタッカータイプを使ったし、後半には酒井を右サイドハーフの位置で起用してサイドからの攻撃を担わせた。そして、ゲームの終盤ではサイドバックだった西と酒井のポジションを入れ替えて、酒井の高さのある守備力を生かして横浜FMの攻撃を跳ね返す役割を与えた。
試合の中でも、リカルド・ロドリゲス監督の采配は変化に富んでいるし(川崎フロンターレ戦では、ゲームの終盤に槙野智明をトップで起用して結果につなげた)。
そして、試合によっても人数をかけて攻撃をすることもあれば、「堅守速攻」に徹して割り切って戦うこともある。
そうした変幻自在のサッカーをするリカルド・ロドリゲス監督なのだが、果たして彼がこれから浦和で作り上げて行くのはどのようなタイプのチームなのだろうか? 「攻撃型」こそが彼の目指すべきスタイルなのか? それとも、実は「堅守速攻型」を目指しているのか?
■浦和が誇る伝統のスタイル
浦和レッズの前身である三菱重工はかつて堅守速攻のカウンター・サッカーで戦っていた。
1965年に始まった日本サッカーリーグ(JSL)では、初年度から4シーズン連続で東洋工業(後のマツダ。サンフレッチェ広島の前身)が優勝した。その東洋に挑戦したのが二宮寛監督が率いる三菱であり、不世出のストライカー釜本邦茂を擁する大阪のヤンマーディーゼル(セレッソ大阪の前身)だった。
そして、西ドイツ(当時)の名将、ヘネス・バイスバイラーに師事した二宮監督は堅守からスピードのあるカウンターを繰り出す独特のサッカーで三菱をJSL優勝に導いたのである。
そんな伝統もある浦和レッズ。2006年代にJ1リーグを制し、翌年にはACLでタイトルを獲得してクラブ・ワールドカップに出場した頃が黄金時代だったが、当時は前線にワシントンとポンテという2人のブラジル人選手を配し、しっかりと守ってこの2人の個の力で得点をするのがそのスタイルだった。
■失われたアイデンティティー
その後、2012年に超攻撃サッカーの信奉者であるミハイル・ペトロヴィッチ監督が就任すると、スタイルは大きく変わった。スリーバックの形から左右の両センターバックが攻撃に加わり、攻撃に人数を割く攻撃型サッカーを追及することになる。結局、ミシャ監督はリーグのタイトルとは無縁だったが、2016年にはチャンピオンシップで鹿島にタイトルを奪われたものの、年間勝点では1位を記録している。
リーグ優勝こそならなかったが、この当時の浦和にははっきりとしたスタイルがあり、それがクラブのアイデンティティーとなっていたのだ。
その後、2017年にペトロヴィッチ監督が解任されてからは、浦和ははっきりしたスタイルを確立できず、成績もJ1中位に留まっていた。そして、今、リカルド・ロドリゲス監督の下で新しいサイクルが始まったところなのである。