世界ラリー選手権(WRC)第12(最終)戦モンツァラリーが21日、イタリアのモンツァで最終日を迎え、トヨタのセバスチャン・オジエ(フランス)が今季5勝目を挙げるとともに、2年連続、通算8度目のシリーズチャンピオンに輝いた。トヨタも3年ぶり…

 世界ラリー選手権(WRC)第12(最終)戦モンツァラリーが21日、イタリアのモンツァで最終日を迎え、トヨタのセバスチャン・オジエ(フランス)が今季5勝目を挙げるとともに、2年連続、通算8度目のシリーズチャンピオンに輝いた。トヨタも3年ぶり、5度目のマニュファクチャラーズ(製造者)タイトルを獲得。トヨタ・ヤリスWRCで参戦する勝田貴元も7位でゴールし、自己ベストのシリーズランキング7位で今季を終えた。

最終戦モンツァラリーを走るセバスチャン・オジエのトヨタ・ヤリスWRC(トヨタ自動車提供)

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 この大会は節目の一戦となった。1997年からトップカテゴリーは市販車をベースとするWRC競技専用車両「ワールドラリーカー(WRカー)」で戦われたが、来季からハイブリッドエンジン搭載の次世代車両「ラリー1カー」に移行する。つまりWRカーによるラストランだった。

 新カテゴリーの車両には現行のWRカーに搭載される1・6リットル4気筒直噴ターボエンジンが継続で使われることになったが、付随するハイブリッドシステムについては独コンパクトダイナミクス社がワンメークで供給する。ハイブリッドエンジンはF1や仏ルマン24時間レースが組み込まれる世界耐久選手権のハイパーカーにも採用されており、ようやくWRCでも導入されることになった。

 車体についてはWRカーのような量産車ベースのボディーのほか、日本のスーパーGTや米NASCARのようにパイプフレームの骨格も選ぶことができる。これは新規のマニュファクチャラーを呼び込む目的もある。パイプフレームの場合はオリジナルのイメージを残したままシルエットの形状を変更することが可能で、ラリーカーのベース車がないメーカーでも自社の車種を自由に名乗れるようになっているのだ。

 ただし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で来季は残念ながら新規参戦がなく、ラリー1カーでの参戦はトヨタ、ヒュンダイ、フォード(Mスポーツ)の3社でいずれもパイプフレームを採用する方針。トヨタはヤリス、ヒュンダイはi20とWRカーと同じ車種を踏襲するが、フォードはフィエスタからプーマにスイッチ。空力パーツも簡素化され、リアのディフュザーは禁止される。

 車両の大幅な改造が禁止されたのは1987年。その年にトップカテゴリーの車両が改造範囲が広いグループBから量産車をベースとするグループAに切り替わり、ベース車両に備わるそもそもの性能の高さがとても重要なカテゴリーとなった。WRカーのトヨタ・ヤリスWRCもいかめしいボディーをしているが、ベースはコンパクトカーのヤリス(旧ヴィッツ)だ。

走行テストが続けられているラリー1カー仕様のトヨタ・ヤリス((c)WRC.com)


 これまでのラリーファンはスバル・インプレッサや三菱ランサー、トヨタ・セリカなどベース車両の性能の高さに魅了され、その結果、車両の購買につながった一面があった。が、ここ数年は欧州を中心に電気自動車(EV)導入の波が押し寄せ、WRCも内燃機関のエンジンだけに頼るわけにはいかなくなってきた。これも時代の流れといえる。

 WRCはオフの期間が2カ月ほどしかなく、1月のモンテカルロラリー(モナコ、フランス)で新シーズンの開幕を迎える。そのため、各チームともラリー1カーの開発や走行テストの真っただ中。もちろん、戦闘能力も未知数でどのような戦いの構図になるのか、実戦を走ってみなければ分からないところだ。

 トヨタWRCチームのチームオーナーを務める豊田章男トヨタ自動車社長も「来年からは新たなレギュレーションのクルマに変わります。その開発も佳境を迎えているとのこと」とコメントし、さらには「来シーズンもファンの皆さまにエキサイティングな気持ちになってくれるようなクルマを準備していきましょう! 一戦一戦を走りきってもっともっと強いヤリスをみんなでつくっていきましょう!」。新カテゴリー元年のダブルタイトル獲得に強い意欲を示した。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)



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