Jリーグクライマックス2021「申し訳ないな、と......」 ベガルタ仙台のMF関口訓充は目を腫らし、涙に咽(むせ)び…
Jリーグクライマックス2021
「申し訳ないな、と......」
ベガルタ仙台のMF関口訓充は目を腫らし、涙に咽(むせ)び、それだけ言うのにも、しばし時間を要した。
「去年はホームで勝てず、"今年こそは"とシーズンを戦いましたが、思う結果を出せず。この順位(19位)で降格した責任を感じています。最年長の選手として、自分の背中を見せられなかったから降格したんだと思うし、サポーターには勝てなくてつらい思いをさせて申し訳ない」
関口は途切れ途切れに言った。そのたびに、2試合を残してJ2に降格した事実を噛みしめているように見えた。昨シーズンも17位と降格圏の成績で(コロナ禍で降格はなし)、順位的には「下馬評を覆せなかった」という表現になるのだが......。
2010年からJ1の座を守ってきた仙台は、なぜ降格の憂き目を見たのか?

湘南ベルマーレに敗れ、ファンに頭を下げるベガルタ仙台の選手たち
11月20日、仙台。選手が乗り込んだバスは、遠巻きにサポーターに囲まれて立ち往生していた。残留を争う湘南ベルマーレとの直接対決、本拠地で0-2と敗れ、降格が決定した直後だけに、無理もない。無念さを伝えたかったのだろう。
「気持ち」
仙台のDF蜂須賀孝治は湘南戦後、何度もその言葉を使い、敗因を示した。
「リーグ終盤のこうした状況では、サッカーを理詰めで考えれなくなって、だからこそ、"勝ちたい"という気持ちがどれだけあるか、球際の一歩前、半歩前が大事で......。前半早くに失点して、受けに回ってしまい、気持ちの部分で戦う準備が足りなかった」
自責の念から出た反省の弁だが、はたして仙台の選手たちは気持ちが入っていなかったのか。
戦術的に整備されてきたチームは、自ずと"差"を生み出せる。個人の技術、体力で、さらに〝差"は増す。その車輪を、気持ちが回すのだ。言い換えれば、日々の正しい鍛錬という拠りどころがあってこそ大きな力が出るわけだが、その土台が感じられなかった。
仙台はつなぐことを目指していたようだが、ボールを受けようと顔を出す選手が少なく、むしろ受けることを怖がっていた。また、後ろからボールを運べるだけの技術判断がある選手が見当たらず、サイドの選手は攻め上がりのタイミングがめちゃくちゃ。選択肢が曖昧で、クロスや前につけるべきプレーの準備できていなかった。何度、無駄にボールを敵陣から下げたことか。
10分の湘南の先制点も、逃げるようにボールを自陣まで下げたところでGKが前に蹴り込むしかなくなり、波状攻撃から叩き込まれていた。
仙台は必然的に劣勢に立っていたと言える。前線の富樫敬真がポストに入り、どうにか攻撃を引っ張っていたが、他に攻撃の選択肢が乏しく、攻守に効率の悪さが見られた。たとえば攻めに回った時、選手がいっせいに前線に入るが、距離感がバラバラだった。気が逸(はや)るのはわかるが、各自の役割が明確ではなかった。
もっとも、後半は"気持ち"で動いた。湘南がいくらか受けて立ったのもあるだろう。左サイドから西村拓真のクロスを冨樫がヘディングで狙い、わずかに外れた場面を契機に、押し込んでいる。この勢いで同点にできたら、スタジアムの後押しで逆転を狙えたかもしれない。
しかし、そこでチームとしての練度の差が出た。後半29分、不用意な横パスを狙われ、インターセプトから湘南にミドルシュートを叩き込まれてしまった。これで万事休した。
「劣勢の中でも慌てず、落ち着いてプレーできた。練習でやってきたことを生かすことができ、90分間を通してパーフェクトなゲーム。必然的な勝利に持っていけた」
湘南の山口智監督が語ったように、仙台の敗北は偶然ではなかった。
単純な戦力で互角以上の湘南に、ホームで力負けしての降格。それは仙台のシーズンを象徴していた。強烈とは言えない湘南のプレスに狼狽。どのようにボールを運び、点を取るのか。そのデザインが見えなかった。そもそも守りの安定感がないことで、チーム全体が常にグラグラしており、それは惜しい試合でもリードを守りきれない正体だった。
「リーグ序盤、勝てない試合が続き、立て直しに時間がかかってしまった。いい兆しが見えたところで、勝ち点3のゲームが1、勝ち点1のゲームが0という残念な結果で......」
仙台の手倉森誠監督は、降格したシーズンをこう総括している。
「今日のように負ければ終わりの重要な試合では、ロースコアでの勝負をモノにすることを想定していた。ただ、立ち上がりに失点してしまい、ひっくり返せず、後半は決定機を作り出せていたが、2点目が痛かった。(練習で取り組んできた)つなぎがうまく機能せず、クオリティの問題もあったが、守備意識の高い湘南を崩せなかった」
敗因はこれから語られるだろう。たとえば、ケガ人が多かったことは事実だろう。フィジカル面のトレーニングが旧態依然だと言われるが、最新データにこだわりすぎて悪評を買った指導者もいる。また、それまで価値ある仕事をしていた渡邉晋監督を、2019年をもって切った理由も不明瞭だが、必ずしも続投=残留ではない。手倉森監督の采配を揶揄する声も出るだろうが、戦いに身を投じていた選手が何人いたか。
ひとつだけ確かなことは、今シーズンの戦いが残留には値しなかったということだ。
「苦しむ中で立ち直っていく、"東北のメンタルがここにある"とベガルタが確立するしかない」
手倉森監督は、震災後10年の復興となぞらえて、チームの再起を期した。だが、降格を突きつけられた指揮官が続投するのか。選手総入れ替えは非現実的だ。
「進退はまだ決めていない。クラブの判断次第」
手倉森監督は、そう言って会見を締め括った。残り2試合、仙台はJ1で何を示せるのか。