サッカーにおいて、ホームとアウェイの差が持つ意味は大きい。国内もそうだが、国境を越えれば、さらなるギャップがアウェイの…

 サッカーにおいて、ホームとアウェイの差が持つ意味は大きい。国内もそうだが、国境を越えれば、さらなるギャップがアウェイの地に足を踏み入れた選手たちを苦しめる。蹴球放浪家・後藤健生も、例外ではない。南半球のライバル国、オーストラリアでアウェイの洗礼は待っていた。

■10万人収容の豪州最大のスタジアム

 2000年のシドニー・オリンピックで日本がブラジルと対戦した時に、ブリスベンのクリケット・グラウンドで係員の目を盗んで2階席に忍び込んだ話は前にも書きましたが(『蹴球放浪記』第68回を参照)、まあ、とにかくクリケット場でサッカーを見るのは、ちょっと辛いという話です。

 先日、オーストラリアがサウジアラビアと戦ったウェスタン・シドニーのフットボール専用スタジアムはコンパクトで見やすそうなスタジアムでしたが、3月のオーストラリア戦はどこで開催されるのでしょうか……。

 オーストラリア最大のスタジアムはメルボルン・クリケット・グラウンド(MCG=収容力10万0024人)ですが、ここもクリケット・グラウンドですからサッカー向きではありません。

 クリケットの試合の時も1階席がいちばん安い席として設定されていますから、やはり2階以上の席で見るに限ると思います。

■アジアカップ会場の隣でクリケット観戦

 その、MCGでクリケットを観戦したのは2015年1月。オーストラリアでAFCアジアカップが開催された時です。ハビエル・アギーレ監督の日本代表はメンバーを固定して戦ったため疲労を蓄積してしまい、準々決勝でUAEと1対1の引き分けに終わり、PK戦で敗退してしまいました。

 アジアカップで使われたのは球技専用のレクタンギュラー・スタジアムでしたが、すぐ隣にMCGがあったので、「一度、クリケットという競技を見ておこう」と思って観戦に行ったことがあります。メルボルン・スターズ対パース・スコーチャーズという国内リーグの試合でした。

 クリケットは思ったよりもスリリングなスポーツだったのですが、この試合で僕の最大の思い出は1羽のカモメです。

■カモメ isn't dead!

 メルボルンというのは海辺の町です(「ドックランド・スタジアム」というのも、かつて船の建造や修理に使うドックがあった場所に建設されたスタジアムだからです)。ですから、どこに行ってもカモメがたくさん飛んでいます。もちろん、クリケット場にもいっぱいカモメがいました。

 そして、あるバッツマン(打者)が放った強烈なライナーがフィールド上で虫か何かをついばんでいたカモメを直撃したのです。クリケットのボールというのは野球と同じような硬いものです。カモメはパタリと倒れてしまいました。相手チームのフィールダー(野手)がそのカモメを抱えて、ピッチ外まで運んでいきましたが、カモメは芝生の上でピクリとも動きません。

 死んでしまったのでしょうか? スタジアム中が気まずい雰囲気に包まれました。

 しかし、試合は続行されました。でも、やっぱり観客はカモメのことが気になって仕方ありません……。

 その次か、次の次のバッツマンが出てきた頃ですから、“事件”が起きてから10分近くが経過した頃だったでしょうか。そのカモメが突然、ハッと目を覚まして立ち上がったのです。しばらく、辺りを歩いた後、カモメは羽ばたいて元気にスタンド上空を飛んだのです。スタジアムが感動の拍手に包まれたのは言うまでもありません。

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