世界最高峰リーグともいわれるスーパーラグビーで3回の優勝を誇るブルズ(南アフリカ)を、この舞台に参戦2年目のサンウルブズ(日本)が倒した。昨年4月にジャガーズ(アルゼンチン)から初勝利を挙げたサンウルブズだが、それを上回る金星だ。 今季も…

 世界最高峰リーグともいわれるスーパーラグビーで3回の優勝を誇るブルズ(南アフリカ)を、この舞台に参戦2年目のサンウルブズ(日本)が倒した。昨年4月にジャガーズ(アルゼンチン)から初勝利を挙げたサンウルブズだが、それを上回る金星だ。

 今季も開幕から5連敗と苦しんだ。しかし、4週間におよんだ海外遠征でチームはたくましさを増し、休みをはさんで、日本代表クラスの実力者たちも怪我などから復帰。4月8日、東京・秩父宮ラグビー場へ足を運んだ1万2940人の観客だけでなく、多くのファンが今季初勝利を期待した。結果、21-20。ファイナルホイッスルが鳴るまで激闘となり、秩父宮は歓喜に包まれた。

 ゲームキャプテンを務めたティモシー・ラファエレは試合後のインタビューで開口一番、ファンに感謝した。
「ホームで勝利することができて本当に嬉しい。サンウルブズのサポーターは世界一だと思っている」

 サンウルブズは前半6分、SOヘイデン・クリップスがディフェンス裏へ放ったチップキックをCTBラファエレが確保して敵陣22メートルライン内に入り、すばやく左へ回して、この試合でデビューとなったNO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコがゴール左へ力走し先制した。10分にPGで追加点。

 一方のブルズは今季1勝4敗と不調ながら、プレーオフ進出へ向けて格下相手に星を落とすわけにはいかず、12分、ラインアウトからの攻撃でCTBバーガー・オーデンダールが抜けてゴールに持ち込み、点差を詰めた。

 サンウルブズは23分、HO庭井祐輔がブレイクダウンでからんでPGチャンスを得、SOクリップスが決めて流れを変えたものの、ブルズも2分後にショットで3点を加え、11-10、サンウルブズの1点リードで前半を終えた。

 後半、先にブルズにPGで得点され、逆転を許したサンウルブズだが、ディフェンスでプレッシャーをかけ続け、元王者相手に互角の戦いを演じた。
 しかし、ブルズは63分(後半23分)、逆にディフェンスでターンオーバーして右を攻め、WTBトラヴィス・イスマイエルがタックラーを振り切ってゴールに持ち込んだ。コンバージョンも決まり、サンウルブズは9点ビハインドとなる。

 しかし、勇ましい狼軍団は屈しなかった。
 フレッシュレッグズを次々と投入してギアを上げると、68分、この試合でサンウルブズデビューとなったFB松島幸太朗がビッグゲインでゴールに迫り、ブルズは止めたものの、CTBヤン・サーフォンテインが故意の反則を犯してイエローカード、10分間の退出となる。

 数的有利となったサンウルブズはスクラムで再開後、縦横に揺さぶり、後半から出場のSO田村優からロングパスをもらったWTB中鶴隆彰が右を抜けてトライを挙げた。ゴールキック成功で18-20。
 そして74分にもブルズの反則があり、PGで21-20と逆転した。

 その数分後、今度はサンウルブズの反則でブルズがPGチャンスとなったが、ポストほぼ正面のショットを途中出場のSOフランソワ・ブランマーが外し、スコアボードは変わらなかった。
 それでも、ブルズは死力を尽くして敵陣で攻めたが、耐えるサンウルブズは79分、今季初出場のPR稲垣啓太がブレイクダウンでボールを奪い返し、ピンチを脱出。
 最後まで相手にプレッシャーをかけ続けたサンウルブズは1点リードを守り切り、新たな歴史を刻むとともに、また大きな自信を得た。

 ゲームキャプテンのラファエレは「それぞれが役割を果たし、相手にプレッシャーをかけることができた。そして、ベンチから入った選手たちがたくさんのエナジーをもたらしてくれた。それが勝因になったと思う。これからのニュージーランド遠征へ向けて自信になった」と喜びを語った。

 サンウルブズはこのあと、ニュージーランドとアルゼンチンでアウェイ4連戦となり、次節(14日)は、最多8回目の優勝へ向けて今季6連勝中のクルセイダーズに挑む。

 一方、敗れたブルズのアドリアーン・ストラウス主将は「サンウルブズが終始すばらしかった。おめでとうと伝えたい。特に最初の15分、20分間、彼らは非常にクリエイティブなラグビーをした。我々は後半リズムをつかみかけたところがあったが、イエローカードが痛かった。やらなければいけないことが山積みになった」とコメントし、プレトリアに戻って立て直しを図る。