2年ぶりに"秋の風物詩"が戻ってくる。 11月20日から第52回明治神宮野球大会が開催される。高校の部は今秋の地区大会…
2年ぶりに"秋の風物詩"が戻ってくる。
11月20日から第52回明治神宮野球大会が開催される。高校の部は今秋の地区大会を勝ち上がった10校、大学の部は全国11連盟の代表11校が出場する。
寒風吹きすさぶ晩秋の神宮球場で高校生、大学生が熱戦を繰り広げる。開幕から4日間は第1、2試合が高校の部、第3試合以降が大学の部と、高校野球と大学野球を一度に楽しめる珍しい大会だ。昨年はコロナ禍の影響のため中止を余儀なくされ、今回は2年ぶりの開催になる。
高校の部、大学の部ともに来年以降のドラフトを賑わすであろう有望選手が出場する。それぞれに注目選手をピックアップしてみよう。

花巻東の1年生スラッガー・佐々木麟太郎
高校の部で目玉になりそうなのは、高校1年生にして通算47本塁打(10月21日時点)を放つ佐々木麟太郎(花巻東)である。
登録上のサイズは身長183センチ、体重117キロとまさに規格外。菊池雄星、大谷翔平を指導してきた佐々木洋監督の長男らしく、常識にとらわれないスラッガーへと成長していきそうな気配が漂う。
MLB通算762本塁打を放ったバリー・ボンズ(元ジャイアンツほか)を参考にしているという打撃は、馬力に頼るのではなく体幹部の伸縮やバットヘッドの運動も使ったスイングを見せる。ひとりだけ明らかに打球音が異なり、全方向に飛距離が伸ばせるのが特徴だ。
大会開幕戦となる11月20日の第1試合(國學院久我山戦)に登場するだけに、大きな注目を浴びるなかでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだ。
今大会にはほかにも佐倉俠史朗(さくら・きょうしろう/九州国際大付)、真鍋慧(広陵)というスケールの大きな1年生スラッガーが登場する。佐倉は182センチ、104キロ、真鍋は189センチ、88キロと体格からして迫力がある。ともに動きにキレが出てくれば、大化けする可能性を秘めている。
例年なら好投手が多く登場するのが高校の部の特徴だったが、今年は野手に有望選手が目白押しだ。優勝候補筆頭の大阪桐蔭は、強肩強打の捕手・松尾汐恩、強肩スラッガー・海老根優大が来年のドラフト候補になりそうだ。

九州国際大付の強肩捕手・野田海人
松尾は今夏の甲子園でも名門のレギュラー捕手を任され、近江戦ではバックスクリーンに本塁打を放り込んでいる。1年秋までは遊撃手としてプレーし、内野手としてもプロを狙えるだけの資質の持ち主だけにフットワークを使える点が魅力だ。
海老根は千葉・京葉ボーイズ時代から「怪物」と評判だった大器。182センチ、85キロの大きな体に、センターからのエネルギッシュなスローイングも魅力がある。打撃面は精度には課題を残すものの、ツボにはまった時の打球は一見の価値がある。
タレントの質なら九州国際大付も負けていない。とくに正捕手の野田海人の肩はプロスカウトも認める一芸。174センチ、75キロと体格的には際立つものはないものの、試合前のシートノックの時点で相手ベンチに盗塁をあきらめさせる「野田キャノン」は必見だ。
前述の佐倉は1年生離れしたパワーと、派手なアクションの打撃フォームで場内を沸かせる。さらに1番・センターの黒田義信は運動能力の高さと高い打撃センスが光り、九州大会では3三塁打、1本塁打など大暴れ。わずか4試合での数字ではあるが、OPSは驚異の2.008を記録した。
ほかにも広陵の主砲で中国大会決勝戦でも本塁打を放った内海優太、明秀学園日立の強力打線の核である石川ケニー、広大な守備範囲と高い出塁率を誇る國學院久我山のリードオフマン・齋藤誠賢にも注目したい。
投手では、今秋の急成長で株を上げた森山陽一朗(広陵)が話題になりそうだ。真上から投げ下ろす角度が魅力で、最速143キロのストレートはまだまだ速くなりそう。中国大会では4試合の登板で防御率0.65と安定感を見せた。
中学時代に侍ジャパンU-15代表で活躍した上加世田頼希(うえかせだ・らいき/敦賀気比)も楽しみな右腕。馬力を生かした打撃も見どころ十分で、投打に目立つ存在になるだろう。

最速151キロを誇る九州産業大の渡辺翔太
高校の部で最後に紹介したいのは、大阪桐蔭の1年生左腕・前田悠伍。チーム内には別所孝亮、川原嗣貴、川井泰志といった2年生の有望株がいるが、現時点でチームの実質的なエースは前田だ。
現段階で球速は140キロ前後と際立つものはないものの、指にかかった好球質で打者の手元で伸びてくる。変化球の精度、コントロール、マウンド度胸と投手に必要な要素をすべて兼ね備える。こんな実戦派左腕が順調に成長したら、大阪桐蔭に太刀打ちできるチームなど存在しないのでは......思ってしまうほどの逸材だ。
大学の部は最上級生にとって最後の晴れ舞台。スタンドには「大学野球の卒業式」といったムードが漂う。
今大会の出場校のなかには、今秋のドラフト会議で指名された選手もいる。その顔ぶれをおさらいしておこう。
正木智也(慶應義塾大→ソフトバンク2位)
福永奨(國學院大→オリックス3位)
渡部遼人(慶應義塾大→オリックス4位)
梶原昂希(神奈川大→DeNA6位)
川村友斗(仙台大→ソフトバンク育成2位)
川村啓真(國學院大→西武育成4位)
坂田怜(中部学院大→広島育成4位)
来年以降のドラフト候補という観点では、飛び抜けて目立つ存在は見当たらない。それでも、増居翔太(慶應義塾大3年)、渡辺翔太(九州産業大3年)、木村光(佛教大3年)といった実戦派投手が出場する。
増居は彦根東時代に甲子園で活躍した左腕。171センチ、68キロと小柄ながらホームベース付近でも球威が落ちず、打者にフルスイングをさせない。今秋まで東京六大学リーグ通算7勝1敗をマークし、和田毅(ソフトバンク)を彷彿とさせる投球スタイルだ。
渡辺は好素材揃いの九州産業大投手陣でも頭一つ抜けた大エース。最速151キロの快速球にカットボールなど精度の高い変化球を扱う。今秋は福岡六大学リーグで4勝0敗、防御率1.21と安定していた。
木村は173センチ、71キロと上背はないものの、力感のない腕の振りから加速感のあるストレートが魅力。今春の大学選手権では東京ドームで最速148キロをマークし、130キロ台のスプリットとのコンビネーションが光った。

巧みなバットコントロールで安打を量産する慶應義塾大の下山悠介
ほかにも1年生ながら今秋リーグ戦で5勝0敗と大活躍し、将来性の高い坂口翔颯(さかぐち・かすが/國學院大)。勢いのあるストレートとキレのあるスライダーで勝負する神野竜速(かみの・りゅうどう/神奈川大3年)。打者に背中を見せてから快速球を投げ込む変則サイドの伊藤茉央(東農大北海道3年)も楽しみ右投手だ。
打者では強打の慶應義塾大に下山悠介(3年)、廣瀬隆太(2年)と持ち味の異なる好打者がいる。
下山は巧みなバットコントロールを武器として、3年秋までに東京六大学リーグ通算57安打、打率.298をマークする。インパクトに迫力が出てくれば、茂木栄五郎(楽天)タイプの好打者としてスカウト陣の評価も高まってきそうだ。
廣瀬は今秋リーグ戦で3本塁打、通算6本塁打を放っている右の長距離砲。世田谷西シニア、慶應義塾高、慶應義塾大と2学年上の正木と同じルートを歩む。高いコンタクト能力も併せ持ち、残り2年間の大学生活でどこまで成長できるか。
ほかにも強肩捕手の石伊雄太(近大工学部3年)、巧さにパワーが加わってきた外野手の中村貴浩(九州産業大3年)も猛アピールに期待したい。
大学の部の第4試合にもなると空気は冷え込み、体の芯から冷えてくる。この寒さもまた明治神宮大会の醍醐味だが、選手も観戦者もくれぐれも風邪を引かないよう注意していただきたい。