11月8日(現地時間:以下同)、全米野球記者協会(BBWAA)が選出する各賞の最終候補者が発表された。MVP候補として…
11月8日(現地時間:以下同)、全米野球記者協会(BBWAA)が選出する各賞の最終候補者が発表された。MVP候補として、ア・リーグでは大谷翔平(エンゼルス)、ブラディミール・ゲレーロJr.、マーカス・セミエン(いずれもブルージェイズ)が、ナ・リーグではブライス・ハーパー(フィリーズ)、フアン・ソト(ナショナルズ)、フェルナンド・タティスJr.(パドレス)がそれぞれ選出された。

ア・リーグMVPの行方が注目される大谷
いずれもポストシーズンに進出していないチームからの選出はメジャー史上初だが、現地では「ほぼ予想通りのメンバーが揃った」と評価されている。なお、最終候補者はみな、同11日に発表されたシルバースラッガー賞を受賞している。
あとは11月18日の最終発表を残すところだが、その前にあらためて現地の予想を見てみよう。
ナ・リーグの場合、『CBSスポーツ』(10月5日)や『MLB.com』(11月8日)は、ソトのMVP獲得を予想。各記事には「今季後半からソトの打撃が好調だったため」と書かれている。
しかし、『スポーツ・イラストレイテッド』(11月9日)の記事によれば、同メディアが運営するオッズサイトでは、ハーパーが1番人気だった。また、『NBCスポーツ・ボストン』(同11日)もハーパーを支持。「僅差ではあるが、リーグ首位の長打率をはじめ、ハーパーはほとんどの打撃成績でリーグトップであり続けた」というのがその理由だ。また、ナ・リーグのハンク・アーロン賞(その年に打撃で著しい成績を残した選手に送られる賞)にも選ばれていることから、ハーパーに軍配が上がりそうだ。
一方、ア・リーグでは大谷の獲得が確実視されており、それは先ほどのオッズサイトにも表れている。大谷の数字は「-5000」(日本でいう1.02倍)で、2位のゲレーロJr.は「+1500」(同16倍)、3位のセミエンは「+20000」(201倍)だった。この数字だけでも差は歴然である。
さらに、『CBSスポーツ』が、同メディアの記者5名によるMVPの模擬投票を実施したところ、全員一致で大谷を1位に選んだ。模擬投票は『FOXスポーツ』(9月29日)でも行なわれたが、結果は同じ。そして彼らは、「実際のMVP投票でも同じような結果になるだろう」と予想する。
こういった現地の予想の背景について、あらためてア・リーグMVP候補者の今季の成績を振り返りながら理由を明かしていこう。
まずは大谷の成績だ。打者としては155試合に出場して打率.257、46本塁打、100打点、26盗塁、.965OPS(出塁率と長打率を足した数字)を残し、投手としては23試合に先発して130回と1/3を投げ、9勝2敗、防御率3.18、156奪三振を記録している。
続いてゲレーロJr.は161試合に出場し、打率.311、48本塁打(ロイヤルズのペレスとタイ記録)、111打点、1.002OPSを記録。史上最年少(22歳)での本塁打王を獲得し、ア・リーグのハンク・アーロン賞にも選ばれている。
最後のセミエンは全162試合に出場し、45本塁打と102打点、.837OPSを記録している。本塁打数と打点は、自身キャリアハイ。特に本塁打は、二塁手としてはメジャー歴代最高記録だ。
打撃成績だけだとゲレーロJr.が一歩リードしているが、現地では「大谷には遠く及ばない」といわれている。その理由は、大谷のWAR(打撃・走塁・守備・投球を総合的に評価した選手の貢献度を表す指標)にある。
近年のMVP投票においては、このWARが重視されている。打者や投手を問わず、客観的にその選手を評価できるからだ。『ファングラフス』と『ベースボール・レファレンス』というデータ分析サイトが、それぞれの数値を提供している。『ファングラフス』のfWAR(「f」はファングラフスの頭文字)が指標として使われることが多く、「選手のfWARが6.0以上であればMVP級」とも言われている。
ナ・リーグのMVP予想がハーパーとソトで割れているのも、両者のfWARが6.6だからだ。指標が同数の場合、打者ならばOPSや長打率などで評価されるため、前述のように打撃成績が優れているハーパーのほうが優位、という意見が多いのだ。
一方でア・リーグ3人の打撃fWARは、大谷が5.1、ゲレーロJr.が6.7、セミエンが6.6。ゲレーロJr.がトップだが、大谷には投手としてのfWAR、3.0が加えられる。
北米スポーツメディア『ザ・スコア』は、「議論なし。大谷がMVPである理由」(10月1日)という記事でこのことを取り上げ、「大谷のfWAR8.0(当時。最終的には8.1)は、MLB選手のなかでも断トツである」と指摘。さらに、「別の数値でも大谷は他を圧倒している」とも述べられていた。それはWPA(勝利貢献度)だ。
同記事が言及した各選手のWPAをみると、大谷は打者として5.35、投手として2.31であった。一方、ゲレーロJr.は3.36、セミエンは1.43(いずれも最終成績)。この数値に基づけば、大谷はひとりでチームに7.5勝をもたらしたことになり、貢献度は誰よりも高い。こういった数値の圧倒的な違いから、最後にこうも述べられている。
「数値の観点からも、大谷はフィールド上でもっとも価値を生み出しており、これこそMVPの『V(Valuable:価値がある)』である」(『ザ・スコア』)
大谷の価値を「打者と投手を合わせて考えるべきだ」という、独自性を論じるメディアは他にもある。たとえば、スポーツメディア『クラッチ・ポイント』(11月10日)には、次のように述べられていた。
「ゲレーロJr.とセミエンにとって、この状況が公平であるかは疑問だが、大谷は投打両方で信じられないほどの活躍を見せた。残念だが、彼らはその活躍をひとつ(打者)でしか達成していない。大谷はその両方を可能な限り最高の形で成し遂げており、MVPを与えるかどうか、もはや議論の余地はない」
"二刀流"大谷は、投打での成績だけでなく、客観的な数値にもその優秀さが表れていることから、「大谷のMVPは確実だ」という予想を展開している。そして今では、「大谷が満票でMVPを獲得するかどうか」に争点が移っている。
大谷は、コミッショナー特別表彰、選手間投票による年間最優秀選手、同ア・リーグ最優秀野手の賞を受けている。『ベースボールダイジェスト』、『ベースボールアメリカ』、『ザ・スポーティング・ニューズ』の老舗スポーツ誌からの「年間最優秀選手」もそれぞれ受賞。そして、冒頭でも述べたようにシルバースラッガー賞も獲得し、すでに7つもの栄誉に輝いている。
大谷がMVPに選ばれれば、2001年のイチロー(当時マリナーズ)以来、日本人としては2人目の快挙ではあるが、現地ではそれ以上に、今季の「これまで誰もやったことがない」という偉業がどう評価されるかに注目が集まっている。果たして大谷は、現地メディアの予想どおり、満票でのMVP獲得となるのか。18日の発表が楽しみだ。