オーストラリアスポーツ界の国民的スター、車いすテニス選手のディラン・オルコット(オーストラリア)が、2022年の「全豪オ…

オーストラリアスポーツ界の国民的スター、車いすテニス選手のディラン・オルコット(オーストラリア)が、2022年の「全豪オープン」を最後に引退することを発表した。豪ニュースサイトnine.com.auなど複数メディアが伝えている。【動画】全豪オープン公式Twitterがオルコットの7連覇を振り返り

30歳のオルコットは、今年すべてのグランドスラム優勝に加えパラリンピックでも金メダルを獲得し、男子選手では史上初となる年間ゴールデンスラムを達成。これまでグランドスラムで23個のタイトルを手にしており、そのうち15個がシングルスだ。

パラリンピックでは、これまでに5つのメダルを獲得。3個は車いすテニス(2016年リオデジャネイロのクアードシングルスとダブルス、2021年東京クアードシングルスで金)で、2個は車いすバスケットボールで獲得したものである(2008年北京で金、2012年ロンドンで銀)。

今年はシングルスで1敗しかしておらず、まさにキャリア絶頂という1年を送ったオルコットだったが、この度重大な決断を下した。

「時が来たんだ。もう不必要な気がする。年を取ったなって感じるよ」とオルコットはコメントした。「ちょっと疲れてしまった。次の世代も来ているしね。これからは彼らの番だ。彼らは評価されるべきだし、ふさわしい実力を持っている」

オルコットは、テニスでの功績より、テニス以外の事柄からより多くの満足感を得ていることを明かした。「自分をとても誇らしく思っている。しかも、コートの外で成し遂げたことの方が誇りに思っているよ。強いテニス選手であることは、僕の人生の優先順位で32番目にくるんだ。本気だよ」

「善良な人間であることが第一だ。良き家族の一員であり、良き友、パートナーであり、そして僕のような人々の見られ方を変え、彼らがふさわしい人生を送るために、コミュニティのための代弁者であることがね。僕はとても幸運だよ」

メルボルン生まれのオルコットは、故郷で行われる「全豪オープン」をキャリア最終戦とすることに決めた。

「“全豪オープン”は僕にとって本当に特別な場所なんだ。数週間前の“全米オープン”でキャリアを終えるわけにはいかなかった。“全米オープン”は僕のホームじゃないから。ここが僕のホームだ。“全豪オープン”は僕の人生を変えてくれた。テニスが僕の人生を変えてくれた。恩を感じているし、僕の生まれ故郷で、大勢の観客の前で、こんな素晴らしい1年を送れたあとで、最後の試合をするのが一番だと思った。きっと素晴らしい大会になるよ」

「全豪オープン」で史上最多記録である7回連続優勝を誇るオルコットは、車いすスポーツの見方を変えることになった、大会ディレクターのクレイグ・タイリー氏との会話について明かした。

「僕が野外のコートでプレーをしていた時に、クレイグに話したことを忘れたことはないよ。収容人数より多くの人が試合を見たいと思ってる、と言ったんだ。僕は(センターコートである)ロッド・レーバー(アリーナ)で試合をさせてくれるように彼を言いくるめた。僕たちはロッド・レーバーでプレーして、テレビではライブ映像が流れた。一生忘れないよ。1万人の人が集まっていて、見上げると500人もの車いすの子どもたちがいたんだ」

「これまでの人生であんな光景を見たことがなかった。それが、僕がベッドから起き上がる理由なんだ」

オーストラリアのテニスレジェンド、トッド・ウッドブリッジ(オーストラリア)は、オルコットは偉大な選手として語り継がれることになると語った。「トップとして引退するなんて完璧だ。ディランは“全豪オープン”に出場して、彼にふさわしい称賛を受ける機会を持てることになる。ロジャー・フェデラー(スイス)が自分の時間やストレスをうまく管理しつつ、素晴らしい偉業を達成したのを見ているけど、ディランはそれをまた別の次元でやってのけている」

「彼はメルボルンですごく注目されている。それに対応しながら、集中力を途切れさせず、怒りも疲れもせずにいるということは、彼がどれだけ素晴らしい人間かを示しているね」

オルコットの功績はテニスを超えて、社会的に大きな影響を及ぼしたとウッドブリッジは語る。「彼は最も偉大なアスリートの一人だ。多くの人のために扉を開いた。すべてのアスリートに、彼らが成し遂げられることを証明して見せた。ディランのそばにいるだけで力をもらえる。彼は、本当に多くの人にとって最高のロールモデルであり続けてきたんだ」

車いすテニス普及に力を尽くしたデビッド・ホール(オーストラリア)やダニエラ・ディトロ(オーストラリア)と同様に、オルコットもまた車いすテニスの人気向上に大きく貢献した。

「ディランの人柄が、車いすテニスへの感心を世界的に高めたんだ」とウッドブリッジ。

「彼は、平等性を高め、賞金額とメディアへの露出向上に貢献した。去年の“全米オープン”では、車いすテニス部門は開催されない予定だったのに、彼の声明によって決断を覆すことができた。主催者らに、間違ったことだと気付かせたんだ」

「彼は、多くの人に車いすテニスでキャリアを築けるチャンスを与えた。彼の最も大きな貢献は、障害を持っているからといって我慢することはない、と社会に示したことだ」

オルコットは、グランドスラム4大会すべてのシングルスとダブルスで優勝を飾っている。

来年1月に行われる「全豪オープン」は観客を入れて開催される予定で、75万人以上のファンがオルコットに別れの挨拶をするチャンスを得られる。オルコットが優勝すれば、8年連続制覇となる。

「8連覇が出来たら素晴らしいことだね。彼は本当にふさわしい人物だよ」とウッドブリッジは語った。「5年後には、彼がオーストラリアのテニス殿堂、そして国際テニス殿堂入りすることは間違いない。テニスでは、一番栄誉なことだ」

(テニスデイリー編集部)

※写真は「全豪オープン」でのオルコット

(Photo by Morgan Hancock/Getty Images)