井上拓真が和気慎吾に3-0完勝も…痛感した課題とは ボクシングのWBOアジアパシフィック・スーパーバンタム級(55.3キロ以下)王座決定戦12回戦が11日、東京・後楽園ホールで行われ、元WBC世界バンタム級暫定王者・井上拓真(大橋)が元東洋…

井上拓真が和気慎吾に3-0完勝も…痛感した課題とは

 ボクシングのWBOアジアパシフィック・スーパーバンタム級(55.3キロ以下)王座決定戦12回戦が11日、東京・後楽園ホールで行われ、元WBC世界バンタム級暫定王者・井上拓真(大橋)が元東洋太平洋&日本スーパーバンタム級王者・和気慎吾(FLARE山上)に3-0で判定勝ち(三者とも117-110)した。国内屈指の実力者に完勝。しかし、4回に奪ったダウンから仕留めきれず、兄・尚弥との差を痛感した。戦績は25歳の拓真が15勝(3KO)1敗、34歳の和気が27勝(19KO)7敗2分け。

 イメージ通りの一撃だった。4回。拓真のタイミングのいい右ストレートがモロにヒットした。和気は尻もちでダウン。リングサイドの兄からゲキが飛ぶ中、拓真は再開後も猛追した。左右の拳を振ったが、下がる相手に追撃の一発を当てられず。素早いフットワークとハンドスピードを武器に終始主導権を握って完勝したものの、心の中では納得していなかった。

「あそこ(4回のダウン後)で終わらせたいという気持ちもあったけど、冷静さがなくて詰めきれなかった。ナオ(尚弥)ならあそこで仕留める。差を痛感しました。ダウンした時の詰めの甘さがあると思う。狙い過ぎた。後半も相手を頑張らせたし、もっと一方通行で押していかないといけない」

 陣営の大橋秀行会長は「ダウンしたところで仕留めたら100%の評価。あそこで力んでしまった」と指摘したが、「試合全体では拓真の完封だった。見ていた人は足りないと思うかもしれないけど、個人的な評価は高い。兄と違う持ち味がある」と及第点。父・真吾トレーナーは「相手にダメージがあった時に(攻め方を)変える引き出しがほしい。いろいろ織り交ぜることが課題。それは本人もわかっている」とした。

周囲の「まだまだ」の目、拓真「それは百も承知」

 WBAスーパー&IBF世界バンタム級王者の兄・尚弥は、言わずと知れた世界最強ボクサー。拓真は「兄と比べられている以上、そこ(倒しきること)では兄にはまだまだだと痛感しています」と周囲の目と課題も理解している。KOを量産し、日本史上最高と称されるモンスターと比較されるのは酷かもしれない。だが、ずっと背中を追いかけながら「自分のスタイルを確立させたい」とモチベーションにしてきたのも確かだ。

 今回はこれまでより1階級上の試合。「相手が大きい分、スタミナを使うけど、最後までもった。パンチ力でも階級の差は感じなかった。前より力の乗ったパンチも打てている」とパワーアップを実感した。大橋会長によると、いい感覚を持ったまま主戦場をバンタム級に戻す方針。現在の世界ランクは同級でWBO6位、WBCとIBFで8位につけているが、兄が4団体統一を狙っている階級のため、拓真の世界挑戦はさらに先となりそうだ。

「今のビジョンは兄弟世界チャンピオンになること。周りの『まだまだ』という雰囲気は伝わってくる。それは百も承知なので頑張っていきたい」

 包み隠さず心境を語った25歳。一歩ずつ、自分の色を加えながら世界王者を目指す。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)