ボール支配率の高いサッカーと低いサッカー。「好きなのはどっち?」と聞かれて、「低いサッカー」と答える人は、相当あまのじ…
ボール支配率の高いサッカーと低いサッカー。「好きなのはどっち?」と聞かれて、「低いサッカー」と答える人は、相当あまのじゃくというか、少数派に属するはずだ。結果はどうあれ、応援するチームのマイボールの時間が長いと、ひと安心する。相手に対し漫然と格上感を抱きながら、ゆとりをもって観戦することができる。日本代表で言えば、ボール保持率が低い試合は、特に同格あるいは格下との対戦が大半を占めるアジア予選では、できればあまり拝みたくない。
カタールW杯アジア最終予選の森保ジャパンの過去4戦を振り返れば、その平均のボール支配率は54%となる。オマーン(60%)と中国(65%)には高い支配率を示したが、サウジアラビア(45%)とオーストラリア(46%)には劣勢を示した。個人的には、オマーンに敗れたことより、サウジアラビアに敗れたことのほうにショックを受けている。オマーン戦は「まさかの敗戦」で片づけられるが、サウジアラビア戦のように、ボール支配率で劣ったうえに敗戦を喫したとなると、完敗度は増す。

日本代表はオーストラリアに勝利したものの、ボール支配率では46%にとどまった
以下は「Football LAB」による森保ジャパン、及び過去2回のW杯アジア最終予選の日本代表のボール支配率だ。
カタールW杯アジア最終予選(平均54.1)
日本×オマーン(0-1)60.4-39.6
中国×日本(0-1)35-65
サウジアラビア×日本(1-0)54.7-45.3
日本×オーストラリア(2-1)45.6-54.4
ロシアW杯アジア最終予選(平均48.3)
日本×UAE(1-2)60.1-39.9
タイ×日本 (0-2)38.7-61.3
日本×イラク(2-1)57.5-42.5
オーストラリア×日本(1-1) 66-34
日本×サウジアラビア(2-1)44.5-55.5
UAE ×日本(0-2) 55.9-44.1
日本×タイ(4-0)56.6-43.4
イラク×日本(1-1)59.3-40.7
日本×オーストラリア(2-0)38.6-61.4
サウジアラビア×日本(1-0)54.2-45.8
ブラジルW杯アジア最終予選(平均58.1)
日本×オマーン(3-0)58.8-41.2
日本×ヨルダン(6-0)63.2-36.8
オーストラリア×日本(1-1)46.8-53.2
日本×イラク(1-0)64.2-35.8
オマーン×日本(1-2)37.8-62.2
ヨルダン×日本(2-1)42.3-57.7
日本×オーストラリア(1-1)58-42
イラク×日本(0-1)52.4-47.6
森保ジャパンは2019年1月に開催されたアジアカップでも、サウジアラビアに対し支配率で劣った。それも目を覆うばかりの一方的な展開で、である。支配率29%対71%。それでいながら、試合には1-0で勝利した。辛勝もいいところだった。これ以上、押された試合は簡単に思い出せない。
データが残っていないのでなんとも言えないが、このような劣勢は、2001年にフランス(0-5)、スペイン(0-1)に敗れた時、以来ではないか。そうした意味では、45%対55%の関係だった先日のサウジアラビア戦は、2年10カ月前に行なわれたアジアカップの時より、まだましだったと言うべきか。
支配率が上昇しやすいか、下降しやすいかは、サッカーが攻撃的か否かと関わりがある。自軍ゴール前に多く人を割けば、相手ボールを奪うまでに時間がかかる。奪う位置が低ければ、目指す相手ゴールは遠くなる。攻めきる前に奪われる可能性がある。高い位置でボールを奪おうとするプレッシングサッカーのほうが、後ろで守るサッカーより支配率が上がりやすいことは理屈的にも明白だ。
それに加えて攻撃のルートが関係する。サイドを突くか、真ん中を突くかで、大きく変わる。四方からプレッシャーを浴びる真ん中より、片側からしか浴びないサイドのほうが、ボールは奪われにくい。
高い位置でボールを奪い、サイドを突く。それに選手個人の技量が加わる。相手に奪われにくいボール操作能力ということになるが、それは順番的にはプレッシング、サイド攻撃に劣る。つまりボール支配率は、ボール操作術に特段、優れていなくても、戦い方次第で上昇させることができる。監督の色が出るポイントと言える。
森保一監督は前戦のオーストラリア戦を、それまでの4-2-3-1ではなく4-3-3で戦っている。より攻撃的な布陣で戦ったわけだ。しかし、それでもオーストラリアに支配率で劣った。色を出すことができなかった。「プレッシング」「サイド攻撃」「各個人のボール操作能力」のなかで挙げるならば、問題点はサイド攻撃になる。
特に両ウイングと両サイドバック(SB)とのコンビネーションだ。それは森保監督が、代表監督就任前から、もっぱらサイドアタッカー各1人の3-4-2-1を採用してきたことと関係する。サイド攻撃といえば、ウイングバックが単独で仕掛ける攻撃をメインにした。これまで両サイド各2人の攻撃を追求してこなかったツケが、この局面で表れていると考える。5戦目以降、日本のボール支配率はどのように推移していくか。それと日本の成績は密接に関係すると見る。
前回、ロシアW杯を目指したハリルジャパンは、アジア最終予選で、森保ジャパン以上に低いボール支配率を示した。その10試合の平均値は48%。50%を割り込む結果となった。オーストラリアには、アウェーで66%対34%、ホームで39%対61%の関係を、サウジアラビアに対してもホームで44.5%対55.5%、アウェーで54%対46%の関係を、それぞれ強いられている。
サイドアタック、プレッシングを追求しなかったからというより、これは縦方向への早い攻撃を追求した結果になる。パスワークを重視する日本サッカーの流れから外れたサッカーをした結果と言える。そのサッカーは、ともするとマイボールを簡単に放棄する雑なサッカーに見えた。ロシアW杯本大会を目前に控えた土壇場で、解任の憂き目に遭った理由のひとつと考えられる。
縦への早さに加え、ハリルホジッチは「デュエル」にもこだわった。1対1の競り合いの強さ、激しさを、それまで以上に求めた。この流れは、森保ジャパンにも少なからず息づいている。それがボール支配率を上げる要素か、下げる要素かといえば、後者になる。要はバランスの問題になるのだが、その点を強調すればするほど、プレーは荒くなる。
一方、2014年ブラジルW杯を目指したザッケローニは、高いボール支配率を示すサッカーを展開した。森保ジャパン、ハリルジャパンが劣ったオーストラリアに対しても、結果はホーム戦、アウェー戦とも引き分けながら、支配率ではホーム戦58%対42%、アウェー戦47%対53%という、相手を上回る数字を残している。
最終予選8試合の平均値は58%。森保ジャパン(54%)、ハリルジャパン(48%)を大きく上回る数字であることは言うまでもない。ひと言でいうならソフト。右肩上がりにあった日本人選手の長所が反映されやすいサッカーだった。本大会(南アフリカW杯)こそベスト16という成績を残したが、ストレスがたまる試合を繰り広げたその前の岡田ジャパンとは一転、目に優しい、日本人の心をくすぐる満足度の高いサッカーを展開した。ブラジルW杯本大会でのグループリーグ敗退という不成績は、チームを早く作り上げてしまったこと。4年間の使い方を誤った結果と言える。
筆者の好みは、ブラジルW杯後、ザッケローニの後任として代表監督に就任したアギーレのサッカーになる。
采配を振った試合はわずか10試合なので、提示できるデータは少ないが、4試合戦った2015年アジアカップのデータをあえて持ち出せば、そのボール支配率の平均は61%になる。個人的にとりわけ好きな試合は、グループリーグ第2戦のイラク戦(支配率60%対40%)で、その1-0というスコアは、数ある1-0の中でも最上級に値する内容だった。
2015年アジアカップ4試合のボール支配率(平均61.1)
日本×パレスチナ(4-0)57.6-42.4
日本×イラク(1-0)59.6-40.4
日本×ヨルダン(2-0)61.6-38.4
日本×UAE(1-1)65.4-34.6
準々決勝でUAEに1-1の末にPK戦で敗れたため、高い評価を得ることはできなかったが、そのUAE戦(支配率65%対35%)にしても、個人的にはPK 負けを許したくなる内容だった。アギーレは、サラゴサ監督時代にかけられた八百長疑惑のために、アジアカップ後に契約解除となったが、まさに惜しまれる退任劇だった。
ボール支配率を最大の拠りどころにするわけではないが、それが低いより、高いサッカーを見たい。代表監督には、勝利とともにこの理想を、クルマの両輪のように、可能な限り追求してほしいものである。