「尊重は知ることから作られる」

「スポーツという舞台では、自分が誰であれ、ただ勝つことを信じ、努力してきた道のりの長さを、そこにいる誰もが知っている。だからこそ、自然に尊敬が生まれ、フェアに戦い、互いの健闘を称えあえる。スポーツのみならず、どのフィールドでも同じように互いを尊重できる世の中へ。このような想いから、Respect Is Knowingは昨年のSocial Innovation Week(SIW)で生まれました」。

こう話すのは、このムービーの制作をプロデュースした松岡けい(DAZN Japan バイスプレジデント Communications & PR)氏だ。

ここ数年、ダイバーシティー(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)(以下DEI)という言葉が世間的に多方面で聞かれるようになった。
しかし、昨年アメリカで起き、世界各国で大きなムーブメントとなった”Black Lives Matter”により、スポーツ界でも企業のみならず、リーグ、選手、メディアもいかなる差別は容認しないという声があがるようになった。
また、人種差別のみならず、ジェンダーに関する議論もDEIのトピックのひとつとして昨今大きく取り上げられるようになり、今年2021年は東京オリンピックで過去最高の女性アスリート参加(48.8%)や国内初の女子プロサッカーリーグ、「WEリーグ」が開幕するなど、日本の女性アスリートにとっても重要な1年となった。
「しかしながら、DEI分野においてまだまだ様々な課題があり、その中でも男女格差は大きな課題です」(松岡)。

こうした想いから、昨年に引き続き、「Respect Is Knowing」(尊重は知ることから作られる)のムービーが制作されたのだが、「今年は特にスポーツで輝く様々な女性にスポットライトをあて、彼女たちの純粋にかっこいい姿を多くの方にみてもらいたいという想いから女性アスリートのみの構成といたしました」。

スポーツという勝負の世界において、時として試合相手やライバルを認め合う瞬間というものが訪れる。WEリーグ、ちふれASエルフェン埼玉に所属し、なでしこジャパンで世界と戦ってきた女子プロサッカー選手、荒川恵理子に話を聞いてみた。


「結果というものはスポーツにおいて、もちろん大事なものだとは思うのですが、私は試合、練習そのものを楽しむということが1番だと思っていて、夢中になったり、それに没頭している時こそが、何よりも強いと思っています。
本気で楽しめてこその、勝ち負けとかなのかと思っています。そういう意味で、同じ気持ちになれたり、助け合えたり、心が繋がったりした時に認め合う瞬間があります。男子がやるサッカー、女子がやるサッカー、もちろんスピードやパワーは違いますが、男子だから、女子だからと、違うものとしてらみられず、サッカーはサッカーというようになっていけたらいいなと思います」。

自分を表現するブレイキンという分野においてパリ五輪を目指すB-Girl AYANEもこれに同調する。


「同じ目標に向かって戦っているときに、認め合う瞬間が芽生えます。バトルでは本気で戦い、ぶつかり合うからこそ、互いを高め合える。そうした時に相手と真の関係を築けることがブレイキンのいいところですね」。

勝負の世界とはいえ、同じ目標に向かい、日々努力を重ねているからこそ、通じ合える部分もある。「勝つことが全て」の時代はもはや昔話であり、その中から生まれる尊重があってこそ、スポーツを観る側に与える意味も大きく変わってきたのではないだろうか。

 東京オリンピックに3×3で出場した馬瓜ステファニーは自身を取り巻くダイバーシティーついてこう語る。


 「ここ数年で色んな国にルーツを持つ選手が増えてきて、これが日本人という固定概念とか感覚が多様化してきました。でも、それを良くないと思う人もいるのも事実だけど、私はもはや国籍は問題じゃなくて、お互いの気持ちの問題だと思います。スポーツが世の中に与えなくてはならないメッセージは、人種や競技に関係なく、私達は一つになれるということ。観戦する側だとしても、一緒に応援するだけで仲良くなれる。私は選手として、人と人とを繋げることができたらいいと思っています」。

ストリートを舞台にパフォーマンスを繰り出すプロダブルダッチチーム「REGSTYLE 」のYUIはダブルダッチこそ、まさに多様性の競技だと話してくれた。


「ダブルダッチは男女一緒になって行うことや、コンテストとしてのダブルダッチからエンターテイメントとしてのダブルダッチまで幅広いプレイヤーが楽しんでいる。ダンスや体操に限らず、いろんなバックボーンを持った人が行うことで、新たな発想が生まれたり、それぞれの個性が出せる競技なんです。こうしたベースがあって、今もダブルダッチが進化し続けてるように感じますね」。

 東京オリンピックで大きく注目されたスケートボードやBMX では、試合結果にかかわらず、相手を称える姿がとても印象的だった。日本代表として出場したBMXライダー、大池水杜がその理由を語る。


「こうした競技は、それぞれのライダーに個性があって、ライディングスタイルもバラバラです。それがこの競技の面白いところでもあるのですが、個性がなければみんな同じ結果になってしまいますよね。周りの個性を認めながら、自分は自分の個性を大事にしています。BMXの世界では、レベル差があってもお互いを称えて、リスペクトし合って一緒に遊びながらレベルアップしてきました。相手を知らないとリスペクトも出来ないので、生きていく中で出会うたくさんの人々を知って、尊敬し合える世界がもっともっと広がればなと思います」。

フィールドは違っても、それぞれの作り上げてきた過程やルーツ、努力や思考。こうしたことを知ることで、自然と尊敬は生まれてくる。女性アスリートがスポーツで輝く瞬間を通し、人と人とが尊敬し、繋がり合える世界の一端をこのムービで体感していただきたい。

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